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ドキドキ!恋のキューピット作戦! 、作戦会議 その2

「わ、私の考えてきたプランはだな…」


 小鳥遊が語り始める。俺の案は却下ということだろうか。


「ま、まず出る競技は別にどれでもいい」


 競技を限定しないってのか?


「おいおい、体育祭なのに競技がどれでもいいってことはないんじゃないのか?」


「ふっ、わ、和田よ、わからんのなら、だ、黙って聞いてろ」


 なんだコイツ、ムカつくぞ。しかし俺の脳ではわからんので仕方ない、黙って聞いてやろう。


「も、もちろん競技は重要、でもそれよりもっと大切なことがある」


「大切なこと?それって?」


「そ、それはムードだ、ムード」

「ま、まずはクラスで優勝を勝ち取る、そのために、じ、地味でもいいから勝ちに貢献出来る競技を選ぶ」


 そう、うちの体育祭では競技の順位に応じてポイントがもらえ、最終的に最もポイントを稼いだクラスがその学年で一位、つまりは優勝というルールが存在する。


 つまり小鳥遊が言いたいことっていうのは…


「クラス全体で良い雰囲気を作って、それを利用して告白に繋げるってことか?」


「わ、和田にしては鋭いな」


「そりゃどうも」


「そ、そうやって良いムードにした後、楠木を呼び出す、そ、そこで興奮冷めやらぬ間に、あ、愛を伝える」

「そ、そうすればある程度雰囲気に当てられて、せ、成功率が上がるかもしれない」


 …まあ、優勝の雰囲気ってのに当てられるってのは有り得そうだな、だけど色々と粗が目立つ案な気がする。というか作戦ではないな。


「小鳥遊さん、質問いいかな?」


 湊が口を開く。


「う、うん、だ、大丈夫、ど、どうした?」


「確かに雰囲気は大事だけどそれだけじゃ僕に惚れることにはならないんじゃないかな?」


「うっ、そ、それはそう…」


「それに、そもそもうちのクラスは優勝出来るのかすら分からない」


「そ、その通り…」


 そう、でかい問題としてはその二つだ。

 ムードが大事とはいってもあくまでムードはムード、恋愛はそんなに軽いものでは無い…はず。

 それにうちの学年には七クラス存在する、その中で一位をとるのは確実性に欠けるだろう。


「それにさ小鳥遊、もし仮にだぞ?優勝した後に俺がお前に告ったって絶対に惚れないだろ?」


「そ、それはそうだ、絶対にない」


「つまりはそういうことじゃないか、小鳥遊の話はあくまで環境作りであってメインの作戦じゃない」


「た、確かに…」


 ここまで俺と小鳥遊の案を発表した訳だが、どちらもとても成功させられるほどのものでは無かった。


お互い恋愛系のラノベなんて数多く読んできているはずなのに、いざ現実となると何も出てこない。恋愛偏差値ゼロが集まったって同程度の妄想しか出来ないのだ。ここまでポンコツであったとは我ながら情けない。


「少し思ったんだけど、二人の案のいい所を繋ぎ合わせれば良い感じになるんじゃないかな?」


 勝手に自己嫌悪に陥っていると湊から提案が出た。


 俺の案と小鳥遊の案の良いところだけを組み合わせる… 確かにお互いまともなところは存在する訳だし、なかなか悪くない感じになりそうだ。


 湊ができる限り得意な競技を選んでいいところを見せつつ、クラスでポイントを取る。どちらも出来ればギャップも見せられるし仮に優勝出来ればムードも最高になる。


 あとは告白するタイミングと場所を選ぶ、これが最良のプランだな。 至って普通の作戦になってしまうが良いだろう、王道は王道だから良いのだ。


 俺は注文したオニオンスープを飲みながら続ける。


「それなら後は告白するタイミングと場所だな、よくあるのは校舎裏とか、帰り道とかだけど…」


「そ、それなら、ぶ、部室に呼び出すのはどうだ?」


 小鳥遊が提案する。部室か、ありだな。体育祭後なら間違っても部室に人が来ることは無いだろうし、部室でなら落ち着いて話が出来るはずだ。


 残る問題はどうやって呼び出すかなんだが…


「それなら部活の皆でお疲れ様会をするとかで呼び出すのはどうだろうか、それなら自然に呼べると思うのだが」


「呼び出す理由としては有りだ、けど…」


「け、けど?」


 その場合部室を使うってことを部長に話しておかないといけない、そうなると今回の作戦についても説明せねば…

 しかし、三宅先輩は人の恋愛に首突っ込むのが趣味とか言ってたし…


「あっ」


「ど、どうしたんだ?」


 そこまで思考を凝らしてあることに気づく。


「恋愛相談なら三宅先輩に頼めばよかったのでは?あの人の趣味って…」


「言われてみれば、三宅先輩は人の恋愛に首突っ込むのが趣味とか言っていたな」


「で、でも、三宅先輩に話したら、め、めちゃくちゃにされないか?」


 小鳥遊の疑問はごもっともだ、普段のノリを見ていると茶化してきそうだし、色々と厄介なことになりそうだ。


 けど、時々見せる達観した姿を俺は知っている。

恐らくだけれどあの人は根は真面目なんだと思う。でなければ俺にあんなことを問いかけては来ないだろう、ふざけているように見えて俺たちなんかよりもずっと大人に近いと思っている。


「多分だけど大丈夫だ、ふざけちゃいけないところでふざけるような人ではないと思う」

「それに部室を使うならどのみち許可を取らないとだろ」

 

そこまで会話を続けると、隣に座っている小鳥遊がいきなりむせ始めた。


「っっ! ゴホッゴホッ!」


「大丈夫か?」


 声をかけながら机の上を見る。恐らくさっき頼んだステーキを一気に食ったせいでむせたのだろう。

コイツ前も思ったけど食に関しては意外と肉食系なんだな…なんて考えている場合では無い。

とりあえず小鳥遊には水を持たせて俺は背中を叩いてやる。


「とりま水を飲みな、そしたら少しはマシになるぞ」


 なんかこうしていると昔を思い出すな。

弟の夏樹も焦って飯を食べるタイプであったので、こうしてよく背中を叩いてやったもんだ。

そうしていると小鳥遊は手に取った水をごきゅっごきゅっと飲み干した。


「どうだ?落ち着いたか?」


「う、うん、大丈夫、あ、ありがと…」


 素直に礼を言うなんて珍しいな、それだけ辛かったのだろう。いつもこれなら可愛げがあって良いのだが…


 すると湊がこちらを見て話し始める。


「少し前から思ってるんだけど、君ら二人はまるで兄妹のようだな」


 俺たちが兄妹? まぁたしかにコイツは同級生と言うより年下の子を世話している感覚になるな。

さっきも夏樹にしてやったのと同じ感じだし。


「まあ妹みたいなもんかもしれないな」

「小鳥遊、俺を兄貴と呼ぶことを許してやるぞ、どうだ?」


「バ、バカなのか?お、おまえみたいなのが兄貴なら縁を切る」


 そこまでいうか?


「そ、それに百歩譲ってだ、け、血縁関係にあるなら私が姉で和田が弟だろ」


「はっ、飯にがっついてむせてる奴が姉であって欲しくないけどな」


「な、なんだと!」


 俺と小鳥遊であーだこーだ言い合っていると湊が手を叩く。

 その音で俺は我に帰った。


「仲がいいのは分かったから僕の話を聞いてくれ」


「すまん、ちょっとヒートアップしちまったわ」


 そう、今日は仲良くおしゃべりしに来たのでは無い、れっきとした作戦会議なのだ。そのことをついつい忘れそうになっていた。


 ? でもこの話題を振ったのは湊では?


 と、疑問を口にする間もなく湊は話し始める。


「とりあえず作戦の概要はさっきのでいいと思う、こんな休みの日に時間を使ってくれてありがとう」

「それで部長に関してだが、ここは僕から話をつけに行くよ。そこまで世話になる訳には行かないからね」

「それに競技は人が足りなそうなところに入るよ、そうすれば円滑に進むだろうし決まったところで頑張るよ」

「そのうえで作戦通りに言ったら儲けものってことで」


「仮に良い所を見せられなかったり、優勝出来なくても告白するのか?」


 俺は疑問に思ったことを問いかける。


 イベントで結果を出せば普段よりも良い所を伝えやすいもんだが、結果が振るわなかったら告白を先延ばしにしたっていいはずだ。それこそ夏休みとか、文化祭とか告白に適しているタイミングなんていくらでもある。


 体育祭に関していえば湊が運動が苦手な以上、成功率は高くないだろう。


「それでも僕は気持ちを伝えるつもりだ、ここで先延ばしにした結果が中学時代の僕だからね」

「それに協力して貰っているし、必ず今回で告白するよ」


 そこまで言い切るのであれば外野がとやかく言えるものでは無い。

 俺の心配していた振られた時のことも考えてあるのだろう、であれば成功するように祈る他ない。


 話がある程度まとまったところで外を見ると、雲ひとつない青空が広がっていた。

 まだ春を感じさせる風景が並ぶ中で俺は五月の景色を思い浮かべる。今日よりもいくらか暖かくなる中、恋が成就するか破れるかが決まるのだ。それは俺がどうこうできるものではない。

 しかし、注文したペペロンチーノを喰らいながらこう考えてしまうのだ。

 願わくば、今日のような晴れやかな結果となりますようにと。

ようやく私の中でこの物語の空気感が決まってきました。

果たして湊は成功するのでしょうか、そして悠と藍はずっとあんな感じなんでしょうか。続きはまったり更新していくのでどうぞ彼らの未来を見守ってください。

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