作戦会議の作戦会議
「…ってことがあったんだよ、どうすればいい?」
俺は帰って速攻夏樹に相談した。
「なんだ、兄貴の友達の話かー、いきなり恋愛相談に乗ってくれって言われた時にゃ、やっとその気になってくれたのかって思ったのに」
「そりゃ申し訳ない、俺には今んとこいい話は無いな」
確かに帰って一言目が「恋愛相談に乗ってくれ、お前にしか頼めない」とか俺の事だと思うよな。
今度から言い方に気をつけよう。
「それで、なんの相談に乗ればいいのさ」
「えっ?そりゃ恋愛相談だよ」
「恋愛相談って言っても色々あるでしょ、それに兄貴の話からじゃ楠木さんが湊さんのこと好きかすら分からないし」
「もし、片思いならそれなりのインパクトある告白とかロマンティックにとかあるし、もう少し詳しく聞かせてくれないとどうしようもないよ」
…それもそうだ、本屋での話しかしてないんじゃ相談もクソもないな。
「…多分だけど両思いなんだと思う」
「それはなんで?」
「楠木のやつ本とか全く読まないらしいんだ、それなのにいきなり小説部に入ろうなんて思わないんじゃないかって、心機一転ってこともあるのかもしれないけど」
「それにいつも湊と絡んでいるし…うーん」
いざ整理してみると、よく分からんな。と唸っていると…
「それなら本人に確認してきたらいいべ、兄貴なら上手く聞けるでしょ」
確かにそれが一番手っ取り早いだろう。第三者という立場を活かすなら楠木にさり気なく聞きに行くべきだ。
だけどそれはあまりしたくない。
「いや、あくまで協力するだけだし本人に聞くのはちょっとずるいかなって」
「…なんか兄貴って以外と純情だよな、乙女チックというかなんというか…」
「うるさいぞ、カンニングはしたくないってだけだ」
とは言いながらも我ながら夢見がちであるとは思う。恋はあくまで本人達が頑張るものだっていう、自分のくだらん考えのために確実な手段を捨ててしまうわけで。
ただ、自分は曲げたくないから仕方ない。
「それなら、一つだけアドバイスするよ」
「おっ、ぜひ頼む」
「女の子ってのはギャップに弱いものだよ、兄貴」
いわゆるギャップ萌えってやつか… そんなものは創作物の中だけの話だと思っていたが、夏樹が言うなら間違いないのだろう。
「湊さんが体育祭を選んだのにも理由があるはずだ、それがいつもと違う自分を見せるためなんじゃないかな」
確かに言われてみれば… 湊は別に運動が得意とかではなかったはず。ここで頑張るところを見せて心を鷲掴みにするつもりなのか。
ならどの種目に出るかも考えなくては、それに告白の時間帯も大事だ。 念入りにシュミレーションしなくては… 少しだがイメージも出来るようになったな、よし。
そうだ、お礼を言っておこう。なかなかこんな相談できる相手もいないし、経験豊富ってのも助かりすぎる。俺よりも経験豊富ってのは兄としては複雑だが…
「夏樹ありがとう、きっと成功させてみせるよ」
「兄貴、このくらいなら朝飯前だよ。それに成功させるのは湊さんだ」
「兄貴は湊さんが振られたあとのケアでも考えておきなよ。痛いほど気持ちが分かるはずだからね」
振られるか… 確かにあれは堪える。心にぽっかり穴が空いてしまったように感じるものだ。
「うん、考えておくよ」
「とにかく今日はありがとな。だいぶビジョンが見えてきたわ」
「それなら良かったよ」
マジで助かった。そう思いながら部屋を出ようとすると…
「俺からも聞きたいことがあるんだけど…」と、今度は夏樹の方がら問いかけてくる。
聞きたいこと?なんだ?
「兄貴の話の中に小鳥遊さんってでてきたでしょ、彼女とはどういう関係なの?」
「小鳥遊?あいつとはただの友達だよ」
なんだ、聞きたいのってそんなことか。
「残念だけど夏樹が考えてるような関係にはならんと思うぞ」
「そりゃなんで?」
「あいつ、俺にだけ当たりが強いんだよ。ことある事に煽ってきやがるし」
「それにさっきなんて転んでたのを起こしてやったら殴られたし」
「起こした? どうやってさ」
「そりゃ抱き起こすだろ、尻もち着いていたんだから」
そこまで言うと、夏樹は腕を組み出してこういった。
「…なるほど、兄貴は意外とたらしの才能があるね」
「何をどうやったらそうなるんだよ、大体気があるなら照れたりするもんだろ。あいつは感謝より前に暴力だぞ?ありえないだろ」
あらぬ誤解を産んでいそうなので反論する。
「うんうん、そうだねー(棒)」
おいおい、クソほど棒読みじゃあないか。
「おい、棒読み止めろ」
「ごめんごめん笑」と夏樹。
全く、兄をからかうのも大概にしろ、とは言わない。俺は夏樹とのこの距離感が結構心地よかったりする。
「…それじゃあさ、兄貴から見て小鳥遊さんはどんな人なの?」
俺から見た小鳥遊か…少し考えて言う。
「あいつは極度の人見知りでコミュ障、そのくせちょっと仲良くなるとズカズカと踏み込んできやがる。すぐ暴力振るうし、口も悪い」
「でも小説を書くのは上手いし、好きなもんについて語ってる時のあいつは輝いてるな」
「それに…」
そこで口を閉じる、それもガチンッと音が鳴るくらいで。
…あぶない、今なんて言おうとしてた?「笑っているところが太陽みたいで可愛い?」
これじゃあいつに気があるみたいじゃないか、そんな誤解をされては困る。
そんなことを考えながら夏樹を見ると、こちらを見ながら満面の笑みを浮かべていた。
「…おい、何笑ってるんだ?」
「いやいや、兄貴に春が来るのも近いかなーって」
「さっきも言ったがそんなんにはならんぞ、絶対」
そこまで言い切ると1階から、「ご飯できたよ〜、降りてきな〜?」と声が聞こえた。
「飯できたっぽいな、行くか」
「そうだね兄貴」
こうして作戦会議の作戦会議は終わった。




