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三題噺もどき3

日曜昼

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくろく。

 


 リビングからの声で我に返る。


 ぼうっとしすぎていた。

 机に座り、最近になってようやく手にいれた自分専用のPCを開き、さてこれからのことをどうしようかと考えてみたものの。

 何も手につかず、ただ眺めるだけになってしまっていた。

「……」

 眺めると言うか、頭の中であれやこれやと考えていたら、いつの間にか時間が経っていたと言う感じだ。真っ暗なPC画面がその証拠だろう。ある程度の時間操作がなければ勝手にスリープ状態に入るようになっているから。おかげで放置できるPCゲームとかしていると勝手に落ちて居たりしている……どうにかならないものかね。

「……」

 それはさておき、考えだしていた思考をいったん止めよう。これからの事なんて、自分で決められるような気がしない。自分でしないといけないけど。

 こういうのって、何かに書き出してしまえばいいんだけど、生憎そこまで至る前に考え始めてしまったので気づいた時にはもう遅かった。

「……」

 しかし何で、呼ばれたんだろう。

 今のは母親の声だ。何か手伝うものでもできたんだろうか。母は仕事側持ち帰りのモノが多く、その手伝いをそれなりの年齢の頃からやっていた。そろそろ何かの行事ごとの時期だからせわしなさそうにはしているなとは思っていたが。

「……」

 そう思ったが、時計を見て理解した。そうかもう昼時なのか。そんな時間になっていたとは気づきもしなかった。

 ついでに日付と曜日をみて、今日が日曜日だったと気づく。

 土日は基本仕事で、平日に休みを取ることが多かったから、日曜日に家にいることが何だか違和感がある。なんというか……慣らされた生活習慣は早々変わらないと言う感じがして。私以外の家族は日曜日は家にいるのが当たり前なので、こういう感覚にはならないんだろうなぁ。

「……」

 なんとなく居心地の悪さを感じながら、猫背になっていた体を起こし、伸びをする。

 ずっと座りっぱなしというのもなかなかに疲れるものだ。

 綺麗に座っていればそうでもないのかもしれないが、姿勢が悪すぎてどうにも、無駄に疲れている気がしなくもない。

 椅子もそんなにいいものではない。痛むからといって、座布団を乗せてはいるが、大した効果はなかったりする。なんでこの椅子にしたんだろうな。

「……っ」

 つい数秒前なのにどんな姿勢でいたか記憶にないのだけど……やけに右手が痺れる。

 最近足とか手が痺れやすくて仕方ない。ちょっと数分体重を片方にかけて座っていただけで、足が痺れる。すぐに治まるし歩けないほどでもないんだけど、気にはなる。

 右手を重たい頭の支えにでもしてたかな。手足のしびれが何が原因なのかあまり知らないけど、ちょっと気にした方がいいんじゃないかと思うぐらいに頻度がある。

「……」

 まぁ、そんな自分の体のことは追い追い。

 ……そう言って体調不良を放置したことが何度あったか数知れないが。どれもどうにかなっているのでこれもどうにかなるかもしれない。病院に行ったりするのが苦手というのもあるが……我が家の人間はそういうのに無頓着が過ぎるので、放置が当たり前になっていたりするのかもしれない。

「……はーい」

 もう一度リビングから声がした。

 とりあえず、降りなくては……そのうち部屋に来そうな感じがする。

 今日の昼食は何だろう……妹は隣の部屋にはいないので、すでにリビングに居るのだろう。

「……」

 椅子から立ち上がり、回していた扇風機のスイッチを切る。

 部屋の扉を開けると、少し生ぬるい空気が廊下を満たしていた。すぐそこの階段に足をかけ、下へと降りていく。

 リビングは冷房がついているのか、だんだんと空気が冷たくなっていくのが分かる。

「……」

 机にはすでに私以外の四人、座って食べていた。

 テレビをつけてはいるが、誰も見ていない。両親は見ているのか。

 妹2人は携帯に夢中のようだ。やめろと言っているのに聞きやしない。

 冷房の音に混じって、別の低い音が聞こえる。我が家の全自動洗濯機が頑張っているようだ。そろそろあれも買いかえればいいのに。

「……」

 机の上には、五人分の取り皿と箸。飲み物もある。

 中央のあたりには、アルミのボウルが置かれている。

 その中には、一体何束ゆでたのか、大量の氷の浮いたそうめんが居座っている。

 まだ食べ始めたばかりなのかもしれないが、多すぎやしないか。

「……」

 正直言うと、そうめんが苦手なのだ。

 なんというか、なんとなくでしかないのだけど、苦手だ。どうしても飽きが来てしまう。食べられないわけではないけど、それなら冷麦の方が食べたい。もっと欲を言っていいならうどんがいい。蕎麦よりはうどん派。蕎麦屋に行ってうどんを食べるやつだ。

 ……この時期になると祖父母の家から送られてくるらしく、まだまだキッチンには残っているのだろう。食べ終わるまでは毎日そうめん生活だ。

「……」

 1人分の空いた席に座り、とりあえず水分を摂る。

 麺つゆは各自食べるときに取り皿に入れるので、瓶ごと机の上に置かれている。

 これに両親はワサビを入れる。辛いのは食べられないので、ワサビは却下。

「……いただきます」

 箸を手に取り、氷の浮いたそうめんに手を伸ばす。

 適当に取り皿に移していき、そうめんをすする。

 あーやっぱり苦手だぁ。なんというか……美味しいのは分かる。分かるんだが、一口で十分。これ以上は食べられそうにない。大量にある氷の浮いたそうめんを見ると、何だがうんざりしてしまう。作ってもらっておいてなんだが、食欲が失せてしまう。そうめんをゆでたりするのがいかに大変か、この時期にどれだけ、というのも分かっているけど、食べる気にはなれない。

「……」

 まぁ、そんなこと口が裂けても言えないので。

 さっさと、ほとんど無心で食べていく。

 テレビからは賑やかな声が聞こえる。

 それなりに会話をしながら食べ進めていくが、割と静かな食卓。

「……」

 突然。

 ピーという機械音が響いた。

 我が家の全自動洗濯機が終了の合図を告げたらしい。

 ついでに、食事も終わればいいのにな……。






 お題:氷の浮いたそうめん・全自動洗濯機・右手

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