表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【混沌事件調査】  作者: 石田ヨネ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/39

34 申し訳程度に足を置くスペースしかない、大穴の空いたスケルトンのような貨物台車

 そんな、直接見てはいないものの、仲間が肉塊へ――、いや、肉片になって散ったのが容易に想像できる光景。

 当然のことながら、

「あ”、あ”、あ”っ……」

 と、残された仲間の男は言葉を失い、恐怖におののく。

 それは、脳が委縮するほどの、自我が崩壊してしまいそうになるほどだった。

 ただ、コトは“それだけ”で終わるはずもなかった。


「――さあ? 次は、君の番だよ?」


「ひぎッ――!?」

 と、背後から、フード姿の者がニタァ……と、邪悪な笑みを浮かべながら告げた。

 それこそ、某ウシジマくんの、肉蝮に近い異様な気配とともに。

「い”ッ!! い”や、嫌だぁぁ”ぁ”!!!! 助けてぇぇ!!!!」 

 男が、なりふり構わず、児童のように泣き叫ぶ。

「早くしよう。列車が……、通り過ぎちゃうじゃないか?」

「ぎ、ぎぇッ――!?」

 と、児童にでも無理強いするように言いながら、フード姿の犯人は男の首根っこをつかんだ。

 もう、貨物列車は、半分ほど通過しただろう。

 もたもたしていると、そのままホームを通過し終えてしまうところである。

 もちろん、“チャレンジ”を――、跳ぶのを拒否すれば、待っているのは目つぶしからの撲殺である。

 結局、死ぬことには変わりない。

 そんなふうにしていると、

「――仕方がない。私も、いっしょに跳んでやるから」

 と、しびれを切らしたように、フード姿の者が告げるや否や、

「へっ――? へ? ――うぐぅッ!?」

 と、半グレの男がキョトンとしていると、突然、強く首根っこを引っ張られる。


 ――シュ、バッ――!!


 と、次の瞬間には、男の身体からだは宙に浮いていた。

「うッ!? うわぁぁ”ぁ”あ”あ”!!!!!」

 男は大絶叫する。

 眼下には、申し訳程度に足を置くスペースしかない、大穴の空いたスケルトンのような貨物台車が数十キロの速さで動くのが見える。

 まあ、数十キロと言っても、それが原付ほどのスピードであっても、人間をミンチにするには十分すぎるのだが。

 そうして、男は着地するも、

「あ、がッ――!?」

 と、痛みに叫ぶ。

 それなりの速さで動いている床であり、よほどの運動神経があるか、何か訓練を積んでいなければ、上手く着地はできないだろう。

 男は足を挫き、大きくバランスを崩して転倒する。

 凶悪な穴あきの床が男を待つ。

「お、落ちるッ――!! た、助けてくれぇぇ!!!」

 男は叫ぶも、穴に落ちるかける。

 その光景を、こちらは上手く着地したのか、

「……」

 と、フード姿の犯人が、企画撮影でも見守るかのように眺めていた。

 そのまま、男は落ちてしまい、巨大な質量と運動エネルギーを持つ貨物列車と地面によって引き裂かれる運命と見えた。

 まさに、その寸前、


 ――ガバァッ――!!


 と、何者かの影が突然、視界に突然現れる。

「――!?」

 フード姿の犯人がおどろく中、


 ――シュババッ――!!


 と、まるで忍者のような早業で、影の者は落ちそうになっていた男を抱きかかえ、一瞬、視界から消える。

「――!?」

 視線を追って、犯人の者は再度驚く。

 影の者は男を抱きかかえたまま、再び跳躍し、高架から飛び降りて脱出していた。

 その時、


「――あとは任せたッ!! 綾羅木氏!!」


 と、高架の外から声がすると同時、

「あッ――!? おおいッ!! クソ理可氏ッ!!」

 と、まる掃除当番を逃げるのを呼び咎めるように、男の毒舌の声がした。

 すなわち――、そこにあったのは、綾羅木定祐の姿だった。

 男が列車とバラスト地面の間に落ちてしまう寸前、綾羅木定祐と上市理可のふたりが駆けつけ、男を救出したのである。

 なお、一瞬で解除してやったのか、目つぶし仕掛けのゴーグルがヒュッ――と宙に舞っていた。

 それは、そのまま後方に流れていく地面に落ち、何かジュワッ――と煙らしきものが上がるのが見えたが。

 しかし、“これ”で終わりとは、そうは問屋が卸さない。

 次の刹那――、


「――邪魔すんなボケぇぇッ!!!」


「ちィィッ――!?」

 と、鞭のごとく、もしくは雷撃のごとく振り下ろされる鉄筋棒を、綾羅木定祐は寸前のところで回避した。

 同時に、


 ――ボ、ゴォン――!!


 と、強烈な音が響き、背にしていた貨物コンテナに穴が開く。

 続けざま、

「ウラァッ――!!」

 と、綾羅木定祐はブレイキングのように体をひねりつつ、超アクロバットな回し蹴りで反撃にかかる。


 ――シュバッ――!!


 と、超速で空を切る足。

 しかし、犯人はそれをかわしたのだろう、フードが掠った感覚だけがした。

「ちっ、」

 綾羅木定祐は舌打ちする。

 ただ、眼前の犯人の者も、攻撃をかわすのは余裕ではなかったのだろう。

 また、貨物列車の上という、服の端が何かに引っかかることが命とりなってしまう戦場――


 ――ブワッ……!!


 と、犯人の者は、フードを投げ捨てる形で脱いだ。

 その時、


「むぅ――!?」


 と、綾羅木定祐が驚いた。

 露わになった、犯人の者の姿――

“それ”は、“男のそれ”ではなかった。

 高身長で麗しく、スポーティーな、やや露出のある姿。

 アニメなどのコスプレも似合いながら、凛とした美しい顔の女……

 それを見て、


「やはり……、おまいだったか――! 湯浅たんッ――!」


 と、綾羅木定祐がキリッ――! として言った。

 そうである――

 そこにあったのは、失踪したはずのグラドル兼コスプレイヤーのインフルエンサー女性。

 越後湯沢出身こと、いちご湯浅の姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ