32 SNSの『いいね!』のようでありながら、『ファック!』の中指をピィィンッ――! と立てたアイコン
そうしながらも、
『――まあ、……とは言え、“そこまで”は調べているのか」
と、間を空けながら、妖狐が一応評価するように言った。
綾羅木定祐と上市理可たちが見ているのと同じデータを、妖術の“葛葉”の蔓を用いて見ていたからだ。
まあ、実際に調べたのは、碇賀元や群麻たちなのだが。
続けて、
『そうだな……? 三つくらいまでなら、目ぼしい人物を絞れるかもな』
妖狐が言う。
「三つだと? ショボくないか? この、ドラえもん野郎」
『まあ、そう文句を言うな』
文句を垂れる綾羅木定祐に、妖狐は答えつつ、
――シュ、シュ、シュシュッ……!
と、何か煙のようなオーラを、二人の机の上に発動させる。
それを、
「……」
「……」
と、綾羅木定祐と上市理可のふたりは、ジトッ……とした目で眺める。
たぶん、見慣れているのだろう。
そうして、「また、“アレ”か……」とでも言いたげな表情で見ていると、
――シュ、シュ、シュッ……! シュ、ピピーンッ――!!
と、二人が使用しているパソコンのモニタの前に、“何やら手と思しきアイコン”が具現化される。
そう――、SNSの『いいね!』のようでありながら、『ファック!』の中指をピィィンッ――! と立てたアイコン。
怪しい対象にフラグを立てるという、推理もへったくれもないチート的な妖術の、『あやしいね!』であった。
「ああ……? また、その『あやしいね!』なのね、ドラえもん」
上市理可が、「また」と言ったように、よく使用する妖術、妖具なのだろう。
「ワンパターンじゃないか、この、クソポンコツダヌキ」
綾羅木定祐が、顔をしかめて言う。
少なくとも妖術・妖具を使ってもらっているわけであり、人様に何かをしてもらった時の態度ではない。
まあ、毎度のごとく、人ではないのだが……
『とりあえず、先ほど言ったとおり――、目ぼしい人を三人まで絞れているはずだ。もう一度、データを見てみるのだ、ゴミ芥ども』
「誰がゴミ芥だ、このクソポンコツクソダヌキ」
綾羅木定祐がイラつく。
自分は散々クソだの、ポンコツダヌキだの言っておきながら、ゴミ芥呼ばわりされたくらいで“これ”である。
「とりま? これで、また、明日にでも調べとけばいいよね? ドラえもん?」
先延ばししようと聞く上市理可と、
「ああ。そういうわけだからな、お前、ウザいし、もう切るからな。クソどら焼き野郎」
と、綾羅木定祐が便乗して、電話を切ろうとする。
相変わらずのこと、電話をして頼みごとをしたのは自分たちであり、何様かという話であるが。
それはさておき、綾羅木定祐が、そのまま電話を切ろうとしたところ、
『ふむ――? ちょっと……、待つのだ』
「――あ、ん?」
と、呼び止めてきた妖狐に、綾羅木定祐がピタリ……と手をとめた。
続けて、
『……明日でなく、いま調べるのだ。このゴミ芥ども』
「はぃぃ?」
と、綾羅木定祐が、右京さんイントネーションで聞き返すと、
『私の予感だが、恐らく……、事件は、“また今晩”起こる――』
と、妖狐が、意味深な間を空けながら言った。
「……」
無言の上市理可と、
「何、だって――?」
と、綾羅木定祐が、また顔をしかめて驚いていた。




