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【混沌事件調査】  作者: 石田ヨネ


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30 はたまた、デジタル化された大衆の正義中毒やゴシップの消費を原動力として作る、相互監視社会


 少しの間をおいて、本題に入ろうとしていると、

「――この動画を撮影していたグループも、目を抜かれて、殺されていたんですよね? 刑事さん?」

 と、こちらから聞こうとするより先に、同僚の男のほうから聞いてきた。

「え、ええ……」

 群麻が、少し気おくれしたように返事する。

 まあ仮にも、数人が猟奇的な形で殺される事件であるから、報道やネットニュースなどでも知るところなのだろう。

 そこへ、


「それで――、刑事さんたちは、Bについて……、我々から、何を聞きたいのですか?」


 と、同僚の女がそろそろ、核心となる質問をしてきた。

「ええ……、ちょっと、犯人を――、動画撮影者やインフルエンサーを殺害していると思われる犯人を、調べてましてね」

 群麻が答えながら、

「何か、B氏の人間関係について、知っていることはないですか?」

 と、その流れで無二屋が、単刀直入にふたりに聞いた。

「人間関係――、ですか……?」

 男のほうが、少し怪訝な顔して聞き返す。

「ええ……」

 とだけ、群麻が答えた。


 …………


 少しの間、沈黙が漂う。

「……」

 無言の男と、

「……」

 と、同じく女も無言で、お互いに見合う。

 そんな、阿吽の呼吸というか――、“かくかくしかじかと察するナニカ”はあったようで、

「ん、ん……? そうねぇ……?」

 と、女が、天井を仰ぎながら思い出しつつ、

「ああ……? ちょっと、噂があったんだけど、」

 と、男のほうも、“とあること”を思い出した。

「「“噂”――?」」

 群麻と無二屋が声を合わせて、その単語に反応する。

「まあ、噂というか、」

「Bは、ある女性と交際していて……、“その女性”って言うのが――」

 同僚ふたりは、恐る恐ると話しだす。

 その内容は、


「「――!?」」


 と、群麻と無二屋を驚愕させるものだった。



          ***



 場面は変わって――

 少し薄汚れた街の路地裏を、歩く男の姿があった。

 出無精風な服装に、剃ってない無精ひげの男は、

「ああ、めんどくせぇ……」

 と、言いながら、タバコを買いに出かけていた。

 路地裏の、建物の稜線からは、はるかに高いタワーマンションが聳えるのが見える。 

「はぁ……、俺も、あんなところに住みてぇなぁ……」

 男は、面白くなさそうな顔で呟く。

 いわゆるタワマンの不便さくらい知っているのだが、あまり部屋から出ない自分にとっては、そんなに問題はない。

「タバコも、ついでに配達してくんねぇかよぅ? ウーバー、イーツ……」

 男は、独りごとを言う。

 そんな男は特に働いておらず――、いや、働いていないと言えば語弊がある。

 いわゆる、アフィリエイトであったり、SNSからの収入、はたまた怪しい謎の収入で生きている、一応はライターを生業としている男であった。

 ふた桁万程度のフォロワーを抱えており、中堅クラスというところか。


 ――カチッ……


 男は、最後一本残っていたタバコに火をつける。

「俺も、ガレソみたいになんねぇかなぁ……」

 男は、あるSNSインフルエンサーの名を出して呟やく。

 自身よりも、ひと回りもふた回りも影響力のあるSNSライター。

 それくらい行けば、タワマンに住むのも余裕だろう。

「……」 

 男は、スマホを取り出す。

 タバコの煙を揺らしながらの――、いわゆる、歩きタバコに歩きスマホという、とても推奨されないウォーキングの中、男は思う。


(やれやれ、まったく……。世の人間は、“こんなもの”のどこが面白いのだろうか?)


 そう思いながら、眺めるのはSNSのポストの数々――

『おはようと!』などと言いながら、おっぱいでも出しときゃインプレッションを稼げる的な、水着姿のお色気ポスト。

 それに続いて、米子の坂でレンガを投げる女やら、小学校のグラウンドで転倒させられた高齢女性が当時の小学生に賠償を求めた一件に端を発した高齢化社会に関する議論、それから、恐らくパクツイかと思われるショート動画のポストなど、など――

 まったく……、SNSというのは、ゴミの掃きだめみたいなものだ。

 真偽や、善悪の所在など、どうだっていい。

 タバコ休憩や、カウチポテト、はたまたオ〇ニーのオカズをあさる片手間と――、われわれ貧乏人庶民の可処分時間の少なくなる中、SNSとはもっとも労力を要せずに消費できる娯楽のひとつだ。


 せいぜい180文字からなる文章と、添えつけの動画。

 ほんそれ――! とか真に受けるクセして、1、2週間くらいしたら忘れる程度のSNS記事。

 そういうのに群がりながら、ときに炎上したり、炎上させたりを愉しむ。

“そういうのが、現代の人間のしょうに合っているのだろう。

 さしずめ、“時間の貧民”たる現代人のための、公開処刑という娯楽。

 はたまた、デジタル化された大衆の正義中毒やゴシップの消費を原動力として作る、相互監視社会とでもいうべきか――? 

 それらが、自由な資本主義の、情報化社会の発展からもたらされる。

 冷戦時代の、旧共産圏の監視社会もびっくりだ。


「――さて? どれどれ……?」

 と、ちょうどタバコを切らしたとき、男は立ち止まる。

 同時に、無意識にスマホの画面の――、流れてくる投稿の数々を見る。

 SNSには、わざわざ身に起きたトラブルを投稿したり、それも動画をつけて発信してくれるという、ネタとなる投稿が尽きることはない。

 それは、こんな、ちょっとした瞬間に見つかることも少なくなかった。

「ふーん……」

 男はポストを眺めつつ、商売となるネタを探したい気持ちと、早くタバコを買いたい気持ちを葛藤させる。 

 そうしていると、



「――う、ん?」


 と、人気ひとけの少ない路地裏に、男は何者かの気配があるのに気がついた。

 前のめりの、スマホ・ネックから目線を上げようとした――、まさに、その瞬間、


 ――スボッ……!!


「ぐッ!? ぐぇぇぇッー!!!」


 と突然、抜き手のように“目に刺さった何か”に、男は大絶叫をあげた。

 片方の視力の無くなった男の目の前には、フード姿の背の高い男が、住宅の外構工事にでもありそうな鉄筋棒を手にした姿があった。

「ひッ!? ひぃぃッ!!」

 男は、その姿に怯む。

 例の、目を潰された連続殺人のことが頭に過ぎりかけた、その時、


「ぎッ!? ぎゃぁ”ぁ”ぁッー!!!!」


 と再び、男が路地裏に絶叫するとともに、フード姿の者が、

 ――ガッ――! ガッ、ガッ――!

 と、執拗に、男の目を鉄筋棒で突き刺し、ゴリゴリ――! と抉った。

「う、うぐぅぅ!!」

 すでに無くなった目を押さえながら、のたうち回る男。

 それを見ることなく、


「……」


 と、フード姿の者は、ただ、血の付いた鉄筋棒を見ていた。

良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)



※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)



『トランス島奇譚』:


洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……



ーーー 作中引用 ーーー



「ああ? それで、人類は進歩して、ついに人類は電脳という“殻”を手に入れ、人体という“制約”から解放される。ゴースト・イン・〇・シェル――、“甲殻”機動隊の夢ね」

「何だい? その、ロブスターとか、蟹とか出てきそうな」

「甲殻アレルギーには、気をつけて――」

 と、パク・ソユンがピシッ……と指をキメて、謎トークは終わる。

 そうして、

「まあ、とりあえず、なんだい? バカラするなら、しようよ」

「ええ。確率仕掛けの世界を創造した神に、人間の力を見せるわよ」

 と、二人はバカラへと向かう。

 その後、めちゃめちゃに負けた――


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