28 「普段は、どの時代の装備を――?」
***
――場面は変わって。
都内は、秋葉原のオフィスビル。
群麻と無二屋の刑事コンビは、“ある聞き取り調査”のため、ここへ来ていた。
ガラス張りのカフェスペース。
そこからは、在来線の電車と、ゆっくりとトンネルを出たり入ったりする新幹線を見下ろすことができる。
そして、コーヒーの置かれたテーブルをはさんで、対面には、30代の会社員の男女の姿があった。
ただ……、その、ふたりの姿はというと、少し変わったものだった。
女のほうはフォーマルなメガネに、中世ヨーロッパくらいの金属製の鎧と、中には申し訳程度の水着姿。
男のほうも、ウェーブのかかった七三に、こちらは日本の戦国時代の甲冑姿という――、およそ、一般にイメージするオフィス・スタイルの会社員のそれとは大きく違うものだった。
群麻と無二屋は、“こんな”二人から――、否、この二人から“とある男”のことを――、自殺してすでに故人となってしまったB氏のことについて、聞き取りを行っていた。
「――Bは、私たちの同期でした……」
メガネの女が、重たい様子で口をひらく。
ただし、「普段は、どの時代の装備を――?」などと、中世の鎧の愛好家仲間とでも交わしてそうな格好に、
「……」
「……」
と、群麻と無二屋の二人は、シュールな顔で沈黙するより他なかったが。
まあ、しかし、そうしていても話は進まないので、
「あ、あのぉ……?」
「し、失礼ですが……、その、格好は?」
と、無二屋と群麻は、思い切って聞いてみる。
「ああ……? これは……、私どもの会社は、コスプレ、イベントなどのエンターテインメント事業にも関わってまして、」
と、戦国の七三男が答え、
「ごめんなさいね。先ほども、企画会議で着たまま、時間が無くて……、こんな格好で、来るしかなかったんです」
と、西洋アーマー・メガネの女が、それに続いた。
「は、はぁ、……」
「そ、それは……、仕方ないですね」
群麻と無二屋が、誤魔化すように相槌する。
それはさておき、本題に戻る。
「Bは……、冤罪ですよね? 刑事さん?」
話を再開して、まず開口一番に、七三の男が聞いた。
同僚だった男の身に起きた不幸に対して、やるせなさを抑えているように見える。
おそらく、同僚どうし、仲は良かったのだろう。
「個人的には……、恐らく、冤罪だと思いますよ……」
群麻も、本来はこうした個人的な見解を言うべきではないのだろうが、彼らに同調して答えた。
――ここで、少し振り返る。
「はぁ、――? この件の、“ガイシャの被害者”について、調べるんですか?」
と、ある資料を見ながら、群麻がスマホで聞いた。
『ああ……』
と、返ってきたのは、碇賀元の声だった。
すなわち、手元に表示されているのは、碇賀元から――、特別調査課から送られた資料である。
『綾羅木さんたちの、妖具――、だったか? “そいつ”と、ウチのVR室を使って分析してさ? 調べるべき“ガイシャの被害者”――、ってヤツ? ――を、絞ってねい』
「調べるべき、ガイシャの被害者――、ですか……?」
群麻が、少し怪訝そうに聞く。
『そっ、そっ。綾羅木さんたちにも調べてもらったところ、裏社会関係による犯行って線よりも、単純に、怨恨による犯行じゃないのか――? って、話になってさ? それで、ガイシャの被害者――、つまり、ガイシャによる迷惑動画や、それを拡散された被害者、もしくは被害者本人でなくとも近しい関係の人間ーーを調べれば、何か、犯人へとつながる糸口になるんじゃないか? ーーって、こと』
「はぁ、」
と、群麻が半信半疑そうな相槌をしながらも、資料を確認していく。
そこに映っている、30代と思しき真面目で誠実そうな人相の男の写真こそ、今回の聞き取りの対象である故人、B氏だった。
埼玉から都心の会社に通っていた会社員であったが、自殺する少し前、会社を退職に追い込まれていた。
その、退職に追い込まれたのが、痴漢の――、それも、恐らくは冤罪で逮捕されたことと、その際の動画がSNS上に出回ってしまったことであった。
良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)
※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……
ーーー 作中引用 ーーー
また同時に、
――ジョビ、ジョバー!!
っと、ドン・ヨンファの下半身のほうから、液体がドバーッ! と流れだした。
「ん? アンタ? 漏らした? ちょっと、離れてくれない?」
「いッ、いやいやいや!? それどころじゃないって!!! ソユン!!!」
「は? 大きい方、漏らしたわけ? ウンコを?」
「ち、ちち、違うって!! いや、あっちを見なよ!!」
と、汚いものを見る顔で、なおかつのほほんと話すパク・ソユンに、ドン・ヨンファが必死で訴えながら指をさした。




