25 中国の蘇州かどっかでしか使え無さそうな電子決済みたいなの
この碇賀元と賽賀忍の二人も、妖狐の神楽坂文とは面識があり、その妖力のことも知っていた。
ゆえに、その流れで話が進むと思っていたところ、
「おい。違うぞ――」
と、綾羅木定祐から、予想をしていない言葉が出てきた。
「ん、あ――?」
少し間のぬけた顔できょとんとする碇賀元と、
「違う――、って?」
と、賽賀忍が、どういうことだと聞く。
「うん……」
上市理可が、何か考えるような顔で溜めを入れながら
「――ちゅがう」
と、言う。
たぶん、「――違う」と言おうとして、嚙んだのだ。
「「何だよ、『ちゅがう』って……。てか、そんな短い単語で噛むの――? 溜めたあとのあとで」」
碇賀元と賽賀忍のふたりはつっこんだ。
締まりは悪いが、話を戻して、
「違うぞ、お前ら。キツネじゃなくて、タヌキなタヌキ。ポンコツくそダヌキ」
「ああ、そのネタね。ほんと、どんだけ嫌いなの」
と、妖狐のことをタヌキ呼ばわりする綾羅木定祐に、賽賀忍がサラッと程度につっこみ、
「てか、まあ、タヌキでもキツネでもどっちでもいいんだけどねい。耳と尻尾くらしか、キツネ要素ないし」
と、碇賀元も同様だった。
「おい? 何で、キツネじゃないんだって、反論しないんだ? お前ら」
「何、反論してほしかったの?」
「うん、少し」
とは、上市理可が答え、
「時間のムダじゃない、そのやりとり」
「ちっ――、つまらん、つまらん。まったく、つまらなさすぎて反吐が出るぜ、てめぇら」
「うん。いいから、早く話を進めよ?」
と、綾羅木定祐が謎に機嫌を損ねるも、賽賀忍はペースを崩さず、進行を促す。
その横で、
「ほら? 元も、ちゃっかりタバコ吸いに行こうとしない」
「ちっ……、一本くらい、いいじゃん」
と、碇賀元がタバコを吸いに行ってサボろうとするのを、見逃すことなく。
そのようにしつつ、気を取り直して、
「――それで、今回、何かいい妖具とか、あるのかい? “葛葉”みたいな?」
と、碇賀元が聞いた。
“葛葉”とは、情報蒐集に特化した妖術・妖力のひとつである。
その名のとおり、日本画の岩絵の具のような美しい緑色をした“葛”の蔓葉と、絡み合うように、高度な電子回路のような金糸という姿で具現化される。
それで、その能力はというと、あらゆる情報網に侵入したりハッキングしたりして情報を得ることができるシロモノで、フルパワーの出力では、米中ロの情報機関やGAFAなどの扱う膨大な情報量を遥かに凌駕するなど、わりとチートクラスの力を持つ。
まあ、その代わりに、ただでさえ枯れかけの妖狐の妖力をガブガブと、鬼畜クラスに消耗するのだが。
もちろん、その妖力を、妖狐に使っていいかと聞くことなく、勝ってに使うのであるが……
「“葛葉”ねぇ……? まあ、“葛葉”よりは、何ていうのか? あくまで、情報“蒐集術”だしな……、今回の件くらいなら、清水子のとこの、VR室で間に合うだろうし、」
「まあ、いいじゃん。どうせ、あいつの妖力だし」
「うん。まあ、そうなんだが」
「「いや、そうなんだがって……、人の妖力でしょが、アンタたち……」」
と、どうせ他人の金感覚で話す綾羅木定祐と上市理可に、碇賀元と賽賀忍のふたりが軽く引く。
それはさておき、少し巻き戻して、
「いや、まあ、そうなんだが……、情報を集めるよりも、な? 何だろう? その、集めた情報に対して、ピン――! と来るような、妖力か妖具が、無いかなって」
「ああ? アニメの、サイ〇パス的な?」
と、思い浮かべながら話す綾羅木定祐に、賽賀忍が言いつつ、
「うん。何か、そんな幹事。サ〇コパス、観たことないけど」
「「観たことないん、かい」」
と、碇賀元と賽賀忍のふたりがつっこむ。
そこへ間髪入れず、
「西湖、パス……」
「おい、うるせぇぞ。何だよ? その、中国の蘇州かどっかでしか使え無さそうな電子決済みたいなのは」
と、呟いた上市理可に、綾羅木定祐がつっこんだ。
良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)
※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……
ーーー 作中引用 ーーー
その、ワインボトルにグラスを手にしてパク・ソユンが言う。
「は、ジュースよ? ジュースは、ブドウ味が美味しいのよ」
「いやいや、それ、ワインじゃないか? まだ飲むの?」
「だから、ジュースだって言ってんじゃん? お酒は絶対やめたんだって」
言いながら、パク・ソユンが早速、グラス一杯のワインを飲む。
酔い覚まし……とされるラムレーズンのアイスと、赤ワインと――
いわばこれは、下剤と下痢止めを同時に飲むようなものである。
まあ、だいたいの確率で、下剤のほうが勝つとのことだが……




