24 ――というか? 世の多くの人は、昨日の昼ご飯に何を食べたかなんて、あんまり覚えてないんじゃないの?
そんな幹事な――、否、そんな感じな話をしながらも、綾羅木定祐が、
「――てか? よくよく考えたら、……いや、よくよく考えるまでもなくさ、そもそも怨恨による犯行って、けっこうオーソドックスじゃん? まあ、こんだけガイシャがいるから、猟奇犯か異常人格の可能性も無きにしもあらずだが……、少なくとも、わざわざ裏社会がどうとか考える必要って、あんまし無かったんじゃね?」
と、今さらながら振り返った。
「そうね、シンプル・イズ・ベスト、的な――」
賽賀忍も、同意の相槌をする。
その流れで、碇賀元が話す。
「じゃあ、さ? オーソドックスに、仮に、怨恨による犯行説に絞って考えるとすれば、このフード姿の奴さんってのは、20人以上いるガイシャの中のうちのいずれかの人間かグループによって、動画撮影やSNSで動画拡散される被害を受けたか……、あるいは、身内や近しい人が被害にあったか――、って考えるのが、自然っちゃ、自然かねい?」
「ああ? いわゆる、“被害者の被害者”的なヤツね」
と、話を受けて、綾羅木定祐が言うと、
「――う、ん?」
「あっ――、」
と、碇賀元と賽賀忍のふたりが声を出すなり、ピタッ――と、フリーズした。
「ん?」
ポカンとする上市理可と、
「あ”ん? どした?」
と、綾羅木定祐が怪訝な顔をしていると、
「――てかさ? そういえば、先日さ? VR室で、何かそんな話、しなかってけ? 円ちゃんと、」
「あ、あ……? そういえば、そうだったよね」
と、碇賀元と賽賀忍のふたりが、先日VR室で話したことを思い出した。
なお、円ちゃんとは、零泉円子のことであるが。
「それでさ――? だいたい、いま話したことと、同じ感じな話をしたっけ?」
「うん。たぶん、元が言ってた。犯人ってのは、ガイシャたちによる迷惑系動画の被害にあった者か、もしくは、その関係者の可能性がある――、って。もし、犯人が、直接の“ガイシャの被害者”じゃない場合、身内とか、恋人だったりするんじゃないか――? って、」
「ん? そ、だっけ?」
「うん。たぶん、してた」
などと、碇賀元と賽賀忍のふたりは、曖昧になった記憶を思い出そうとする。
そこへ、
「は――? おいおい、ふざけてんじゃねぇぞ、てめぇら? 昨日の昼飯を思い出せない人間かよ」
と、綾羅木定祐が、苛立ち気味につっこんできた。
「い、いやぁ……、まあ、」
「――というか? 世の多くの人は、昨日の昼ご飯に何を食べたかなんて、あんまり覚えてないんじゃないの?」
「何だよ? お前たちの調査は、昨日の昼飯レベルかよ」
「あら? 昼食は、重要じゃない?」
と、綾羅木定祐が嫌味を交えてつっこみを続けるも、賽賀忍がそれをうまくかわす。
「まあまあ、そんなにカリカリしなくてもいいじゃない、綾羅木氏」
「はぁ、そうは言っても、二度手間にならんか? 同じような話を先にしているなら、その方針で調査を進めていればよかっただろう。そもそも、我々に調査を頼む必要もあったんか? ――って、話」
上市理可が宥めるも、綾羅木定祐が機嫌悪そうに答える。
「ま、まあまあっ……! いうて、綾羅木さんたちが調べてくれたから、フード姿の、犯人の男に、少し近づいてきたわけですから、」
「いや、フード姿の、男――、くらいまでしか分かってないだろうに」
と、ヨイショしようとしてくる碇賀元に、綾羅木定祐が面白くなさそうな顔していると、
「でも、まあ、進展してるほうじゃない? うちの、VR室で調べても、そこまで調べれなかったし……、――そうね? その、ガイシャの記憶から、フード姿の男まで“犯人の像”が浮かんだんなら、妖狐の――、キツネさんの力で、何か調べれないの?」
と、話に入って来た賽賀忍が、妖狐のことを思い出して聞いてきた。
※過去作宣伝
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……
ーーー 作中引用 ーーー
「ああ? それで、人類は進歩して、ついに人類は電脳という“殻”を手に入れ、人体という“制約”から解放される。ゴースト・イン・〇・シェル――、“甲殻”機動隊の夢ね」
「何だい? その、ロブスターとか、蟹とか出てきそうな」
「甲殻アレルギーには、気をつけて――」
と、パク・ソユンがピシッ……と指をキメて、謎トークは終わる。
そうして、
「まあ、とりあえず、なんだい? バカラするなら、しようよ」
「ええ。確率仕掛けの世界を創造した神に、人間の力を見せるわよ」
と、二人はバカラへと向かう。
その後、めちゃめちゃに負けた――




