22 脳に接続して直接信号をやり取りすることで、視力を復活させる技術とか
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「――う~む……。そういう、わけか……」
と、Aの記憶を“見ていた”綾羅木定祐は、唸った。
場面は、病室のほうへと戻る。
なお、綾羅木定祐のゴーグルを通して見える映像を、上市理可も妖具によって一緒に見ていた。
ちっちゃいアンテナ型の魔界植物から伸びた蔓が、スマホの端子に接続されており、その画面に映し出されるという形で。
「はぁ……、まあ、単独なのか協力者がいるのか謎だけど、フードの男――? が、犯人だと思うのだ」
「見てのとおりだろが。前田のクラッカー並みに、当たり前のこと言ってんじゃねぇぞ、このハ〇太郎野郎」
と、いいかげんハ〇太郎が抜けない上市理可に、綾羅木定祐がつっこむ。
そのようにやり取りしながらも、
「さて、とりあえず、情報は得たことだし。帰ろっか? 綾羅木氏」
「そうだ、な……」
と、ふたりはボチボチ帰りたくなってきた。
確かに、これ以上の情報は、Aから得ることは無いように見える。
そうして、
「じゃあな……。情報をくれたことは、感謝する」
と、綾羅木定祐が言って、事件前の面影の残ってない、横たわっているAに背を向けようとした。
その、去り際、
「う、う……」
と、何か、声にしようとする音が聞こえた。
「……」
上市理可と、
「う、ん……?」
と、半ば背を向けかけていた綾羅木定祐が、振り向いた。
そこには、すでに声を発することのできなくなって久しいAが、何とか言葉を発しようと、呻こうとしていた。
「……」
綾羅木定祐が、ジッ……と、見た。
読唇術すら難しいほど口の周りが焼けただれているが、骨格や筋の動きから、何とか云わんとせんことを読みとる。
「――助けてくれ、か……」
と、綾羅木定祐は、引き留めてきたAのSOSを言葉にした。
「ん? そう、言ってるの?」
「ああ」
と、上市理可に頷きながらも、綾羅木定祐はAに再び近づく。
そして、言った。
「あん? 知らねぇよ――」
綾羅木定祐が発した、冷たい言葉に、
「――!」
と、Aがショックを受けたように、ビクッ――! と、なった。
「まあ、運が悪かったんだろうけど……、少なくとも、いつか恨まれかねないことをしていたんだろ? 仕方がないじゃないか」
追い打ちをかけるように、綾羅木定祐は言って背を向け、そのまま病室を出て行く。
「……」
と、上市理可も惨めなAをチラッ……と一瞥しながら、綾羅木定祐のあとを追うようにして背を向け、病室を出て行ってしまった――
そうして、二人は病院そのものを後にする道中で、
「――とは言え、はぁ……、情報を得させてもらったわけだから、いくらクズとはいえ、礼くらいはしないといけないな」
と、綾羅木定祐がため息しながらも、いちおう気にかけていたのか、Aについて話す。
「ん――? 何? 視力でも、回復させてあげるの?」
上市理可が聞く。
「そうだな……? 清水子のツテで、何か紹介してやろうかな」
「それって、脳に接続して直接信号をやり取りすることで、視力を復活させる技術とか?」
「うん。だいたい、そんな幹事。あと、ワンチャン、目の再生技術とか、そのうち出てきそう。いや、むしろ、もうあるかも」
と、綾羅木定祐が、“幹事”イントネーションを交えつつ答える。
「VR室とかあるぐらいだしね」
上市理可が、松本清水子たちのところにある、近未来的なVR室を思い出した。
「――ていうか? クズとか言いながらも、いちおう助けてあげるのね? 綾羅木氏」
「まあ、人間なんて、仏陀クラスからしたら、皆だいたいクズだしね。世の中ってのは、性悪説的に考えるべき」
「そうねぇ……? 冤罪動画を撮って稼ごうとする彼らも悪いけど、そんな動画とわかっても面白がって視聴して、他の人にも拡散する我々一般ピープルも十分クズだという土壌があるからこそ、成立するわけだしね」
「うん。だからこそ、目・口・耳って穴を開けられた混沌は、死んじゃったんだろね」
「混沌くんは、ピュアなのだ――!」
良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)
※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……




