19 これで一体どうやって戦えばいいんだと苦悶する五枚のカードをそろえたら何か召還できるカードゲーム
それは、水泳のゴーグルのような代物だった。
ただ、その目の部分はというと、まるで“エジプトの壁画にでも描かれてそうな金色の目”になっていた。
どこぞの、白い竜のカードや、“これで一体どうやって戦えばいいんだと苦悶する五枚のカードをそろえたら何か召還できるカードゲーム”でデュエルしてそうなマンガに出てきそうなアイテムを彷彿とさせる。
「何だ? この、遊〇王にでも出てきそうなアイテムの、パチモンっぽいゴーグルは?」
綾羅木定祐が、顔をしかめて言う。
「何か、白いロン毛のキャラが使ってた記憶があるよね、綾羅木氏」
「うん。何か、いたね。そんなキャラ」
「ただ、片目だけだったらカッコよさそうだけど、両目だとクッソださそ……!」
「うるせぇぞ、ハ〇太郎」
と、「わろち」と言わんばかりの顔する上市理可に、綾羅木定祐がつっこむ。
それはさておき、本題に戻る。
「――で? このクソダサいゴーグルは、どんな代物だ? ドラ〇もん野郎」
綾羅木定祐が、妖狐に聞く。
『ふむ。それはな、簡単にいうと、相手の心を――、いや、脳にある記憶というのをダイレクトに覗き見ることができるアイテムでな』
「ほう? それは視覚的に、映像として見るってことだよな? ポンコツダヌキ」
『ああ、そのとおりだ』
と、妖狐は問いに答える。
ドラ〇もん野郎だの、ポンコツダヌキだの散々言われるが、ここは気にしないのだろう。
「じゃあ、さ? 理可氏?」
「うん? 何? 綾羅木氏?」
綾羅木定祐が、上市理可のほうを向いて、
「うむ。そしたら、おまいが、今日のパンツを選ぶときの記憶を覗き見てもいいか?」
「おい。ブレインバスターして差し上げるぞ、綾羅木氏」
「うぇ!? ぎゅぅッ――!?」
と、聞いた刹那、綾羅木定祐は上市理可に瞬時にブレインバスターをかけられ、地面スレスレで逆さに寸止めされ奇声をあげた。
再び、話を戻して、
『まったく、いちいち話を脱線させおって、ゴミども』
「ああ”? うるせぇぞ、このドラ焼き野郎」
と、呆れてみせる妖狐に、綾羅木定祐がこんどはドラ焼き呼ばわりする。
またそこへ、
「あっ? そういえばさ、ドラえもん? 枇杷は、取ってきてくれるの?」
と、上市理可が昼の電話で、妖狐をパシらせようとしたことを思い出す。
『枇杷――? 何のことだ? 低級動物ども』
「ああ”? ふざけんなよ、このドラ〇もん野郎。いま、枇杷が美味いんだから、取って来いっていうの! 千葉のどっかに、誰も所有してないのがあんだろが? 舐めとんのか!」
『はぁ、何で、私がそんなことをしないといけないのだ? スーパーで、2千円くらい出せが買えるだろうに』
「は? 何、言ってんの? 泣かそっか?」
と、綾羅木定祐と上市理可は苛立つ。
そもそも妖具を使わせてもらうことも横柄に頼んだくせに、さらに理不尽な要求をしておいて、この態度、言い草である。
――と、ここまでが、振り返るところであった。
綾羅木定祐が、
「――そしたら、ちょっと、アンタから事件の記憶を、“見させて”もらうぞ」
と、ゴーグルを手にする。
「ぷっ……! 確かにッ! ほんとにダサいッ!」
「うるせぇぞ! 殺すぞ、このハム太郎野郎!」
吹き出す上市理可に、綾羅木定祐は切れつつも、ゴーグルを被る。
――キュイ、キュイィーンッ……!
と、視界が確変のように変わる。
その、見えるところの記憶は、こうである――
***
――ここで、またしても場面は変わる。
まあ、正確には、綾羅木定祐と上市理可の二人がいる病室なのだが、綾羅木定祐は男の脳にある記憶をダイレクトに見ており、半ば、視点はそちらのほうに中心が移る。
その、記憶の主――
被害者Aは、世直し系や私人逮捕を謳って動画投稿をする、いわゆるユーチ〇ーバーとして活動していたグループの、リーダー格の男だった。
ただ、世直しを謳っているものの、動画収入のために強引に動画を撮ったり、ある時は、弱みのある者を犯人役として用意するなどと、グレーから限りなくアウトに近い活動をしていた。
そんなAたちは、ある日の夜、メンバー四人で繁華街で活動をしていた。
彼らのターゲットに選ばれたのは、少し汚れたフードを被った、男と思しき人間。
少し離れているが、段になった場所があり、場合によってはスカートを盗撮されたりすることもあるだろう。
そんなところにいるものだから、
「ちょっと、アナタ」
「この子を、ジロジロ、見てましたよね?」
と、Aと他のメンバーたちが、男に詰めよる。
一見、爽やかで丁寧な紳士風にふるまうも、ノーとは言わせない強引な様子から、どこか半グレじみた雰囲気が出てしまっていた。
さらに、
「な、何か、盗撮されているような気がするんですけど」
と、被害者と思しき、ミニスカートの若い女が、フードの男を指さす。
Aたちは、それを聞いて、
「盗撮、ですか――?」
「ちょっと、カバンを見させてもらいます」
と、女の言葉で決めてかかり、フードの男を囲い、強引にカバンを奪って取り調べる。
ただ、このAのグループというのは、過去の動画で、“容疑者”を囲っている隙にカバンに小型カメラを忍ばせ、罪を捏造したりと、かなりあくどいことをしていたわけである。
なお、もちろん、被害者とされる女もグルである。
また、今回はというと、この薄汚れたフードを被った男だが、身長こそあるものの、ほとんど喋らず、抵抗もしようとしてこない。
もしかすると、衰弱するなどして頭がろくに回って無さそうな雰囲気もあった。
ゆえに、場合によっては、Aたちにとってねらい目の予感がした。
ちなみに、グルの女だが、そもそもフードの男がまったく近づいておらず、離れた位置にいたにもかかわらず、いきなり「盗撮されている」などと宣わったのである。
そんな始終を目撃している者があれば、「いや、それはないでしょう」と男を擁護してくれるかもしれないが、あいにく、この薄汚れたフードの男など、誰も気にしていなかった。
そのため、あとはAたちのやりたい放題であり、取れ高のある動画になるかは、フードの男がどのように振舞ってくるか次第だった。
良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)
※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……
ーーー 作中引用 ーーー
「ああ、他人から借りた金を突っ込んでみたくなる、バカラね」
「いや、他人から借りた金って、」
「何か、ゲン担ぎに、スリッパを持つのがいいみたい」
「何だよ、それは……」
つっこむも効かないパク・ソユンに、ドン・ヨンファは静まる。
とりあえずは、バカラがあるということは安心である。




