17 そしたら1人でその場所に行って木端みじんにしてくる人
「まあ、そうでしょうね……。だって、複数人のグループの人間たちを相手にしても、目をくり抜いたうえで殺害数する――、なかなかの戦闘力の人間ではないですかね? 旦那」
「確かにな……」
「そのうえで、我々、“界隈”の情報網にも引っかからないってのは、大したもんですよ」
綾羅木定祐に、餅月三平太が話していると、
「う~ん……、そうすると、困ったのだ! そもそも情報を得れるからと、この変な二人組に聞きに来たというのに、これでは意味がないのだ! ヘケッ!」
「「おい、てめえは、ハ〇太郎ひっこめとけってんだよ! この野郎!」」
と、突発的にハ〇太郎になる上市理可に、餅月三平太と桜田みおんぬがキレつっこみした。
「――てか、何だよ? 変な二人組って、失礼だな」
「そうよ。貴方の相方、あとで亀甲縛りでもしといていい」
「うん。どうぞー」
綾羅木定祐が二人に答える。
ただ、話はそこで行き詰ろうとしているわけで、
「しかし、だ――、そうすると、どうする? 何か、ないのか? おまいら」
「生きている“ガイシャ”は、“いる”んですよね? 綾羅木さん」
と、桜田みおんぬが聞き、
「ああ……。ただ、奴さんは、目をくり抜かれて舌も焼かれてるんだぞ? どうやって、証言を聞けばいいってんだよ」
「ん――? それなら、旦那たちと協力している、妖狐でしたっけ?」
「そう、狐さんに、聞けばいいんじゃない」
と、ここで餅月三平太と桜田みおんぬたちが、妖狐の神楽坂文のことを思い出した。
だが、ここで、
「おい、お前ら、違うぞ」
「「――へ?」」
と、いきなりの謎の否定に、餅月三平太と桜田みおんぬがポカンとすると、
「そうよ。キツネじゃなくて、タヌキだよ」
と、上市理可が言い、
「へ――? 逆、だよね? 妖狐――、キツネよね? 狐耳と尻尾ぐらいしか、妖狐要素ないけど」
「ううん、違うよ。タヌキだよ」
と、確認するように桜田みおんぬが聞くも、きっぱりと否定する。
「え? 冗談、ですよね? キツネですよね? 旦那」
「だから、違うぞ。キツネじゃなくて、タヌキだって」
餅月三平太が言うも、かたくなに綾羅木定祐も否定する。
「いや、意地でも、キツネとは言わないんですね……」
「どんだけ嫌いなのよ」
と、餅月たち二人は、そこで折れてやりつつ、
「とりあえず……、その、キツ――、神楽坂さんの妖力を使えば、意思疎通の困難なガイシャから、何かしらの情報を得れるんじゃないですかね? 旦那」
「まあ、そうだな……? ウザいけど、あのクソポンコツダヌキの妖力でも使ってやるか」
「そうね。仕方ないから、可哀そうだから、使ってあげたほうがいいよ。綾羅木氏」
「人様に頼みごとをする立場なのに、なんて上から目線……」
と、答える綾羅木定祐と上市理可の二人に、桜田みおんぬが引きつつ絶句する。
なお、人はないのだが……
それはさておき、
「そうですね……、ちょうど、我々がボコしたのと同じく、犯罪取り締まりや世直しを謳っていた動画撮影グループが惨殺された事件があったじゃないですか、旦那」
「ああ……? 何か、あったな、そんなの」
と、餅月三平太の言葉に、綾羅木定祐は“混沌事件”のうちのひとつを思い出す。
その事件のあらましは、こんな感じだった。
二週間ほどまえ、世直しを謳いつつも犯罪にあたるシノギをしている動画撮影グループが、例のごとく目をくり抜かれて殺害されていたのが発見された。
ただ、奇妙なことがあった。
四人いたグループのうち、二人は別の場所にて、ボコボコにされているのが発見されていたのだが……、調べてみると、何故か、この二人は近隣の外国人犯罪グループの“ヤサ”に襲撃をかけたようだった。
「――外国人グループに、襲撃を?」
綾羅木定祐が、怪訝な顔で言葉にした。
「みたいですね……。我々の情報筋で聞いてみても、その話は間違いなさそうですね」
「しかし、何で、また――?」
と、綾羅木定祐は聞くも、
「さあ? よく分からないですね……。何か、突然襲撃しに行ったみたいで……、外国人連中は二人をボコボコにして、そのまま捨てたみたいですが」
「はぁ、」
と、餅月三平太が答える限り、はっきりしたことは分からず、曖昧に相槌した。
また、餅月三平太が、
「それで、重要なのは――、そのボコされた一人は、“生きている”みたいじゃないですか」
「そうだな……。まあ、仕方ないか? そしたら、お前らの言うように、証言は、“生きているガイシャ”から得るか」
「そうね、綾羅木氏」
綾羅木定祐が言って、上市理可が同意した。
そこで、話はあらかた終わって、
「――で? 俺たちは、これでいいですよね……? 旦那?」
と、餅月三平太が、そろそろお暇したくなって聞いた。
「ああ。とっとと帰れってんだよ、この野郎」
「ひどッ……!? 旦那が呼んだんじゃないですか、」
「もう、そんなふうに言うと、今度から協力してあげないわよ」
と、餅月たちは憤りつつも、
「さあ? じゃあ、デートに行くわよ。いい調教ルームのあるホテル、知ってるから」
「ああ、愉しみだな。いっぱい、可愛がってくれよな」
と、完全に開放されたかのように、ウキウキしながら店を出て行った。
まあ、「いっぱい可愛がってくれよな」とは、今後の人生であまり聞くことのないセリフだろう。
残されたテーブルは、静まりかえって、
「……」
「……」
綾羅木定祐と上市理可の二人も、シュールな顔で沈黙する。
「ああ……? 何か、ムカつくな、あいつら。沢田のア〇キでも召喚して、ロケットランチャーぶっぱなしてもらってこよっかなぁ……?」
「あのッ!? そしたら1人でその場所に行って木端みじんにしてくる人ッ――!?」
良かったら、良くなかってもブクマとかお願いするのだ!(ずんだもん風ボイスで)
※過去作の宣伝(むしろこっちを読んでほしいのだ)
『トランス島奇譚』:
洋上の謎の島、Xパラダイスに招待されたパク・ソユンとドン・ヨンファの二人は奇妙でグロテスクな体験をすることに……
ーーー 作中引用 ーーー
その、ワインボトルにグラスを手にしてパク・ソユンが言う。
「は、ジュースよ? ジュースは、ブドウ味が美味しいのよ」
「いやいや、それ、ワインじゃないか? まだ飲むの?」
「だから、ジュースだって言ってんじゃん? お酒は絶対やめたんだって」
言いながら、パク・ソユンが早速、グラス一杯のワインを飲む。
酔い覚まし……とされるラムレーズンのアイスと、赤ワインと――
いわばこれは、下剤と下痢止めを同時に飲むようなものである。
まあ、だいたいの確率で、下剤のほうが勝つとのことだが……




