13 なお、SM女王でもある
それはさておき、
「ふぅ……。まあ、いい……、とりあえず場所を変えて、さっさと本題の話をしてもらおうか」
と、綾羅木定祐が本題を持ちかけようとした。
その時、
「――!?」
と、綾羅木定祐はまたしても、何かの気配を背後に気づく。
そして、刹那、
「うっ――!? あっ、ふんッ――!?」
と、綾羅木定祐は膝裏に何かを感じるとともに、二段階で気色の悪い奇声をあげつつ、脱力して崩れ落ちた。
先ほどの戦闘で崩れぬように耐えたのが、油断して、ここで無に帰したわけである。
そんな、綾羅木定祐を崩れ落とした、膝裏からの“ナニカ”――
すなわち、古典的なイタズラでもある、膝カックンだった。
「うぐぐ……」
脱力から、起き上がろうとする綾羅木定祐。
後ろから、
「――はい、私の勝ちー♪」
と、女の声がした。
「あ、ん?」
振り向いて見るに、餅月三平太と同じく協力者の、桜田みおんぬだった。
なお、SM女王でもある。
「油断してた? 綾羅木さん?」
「ああ……。まったく、変なことしてくんなっちゅうの、お前も」
桜田みおんぬに、綾羅木定祐が顔をしかめて答える。
また、そこへ、
「あれ? そう言えば、上市さんは?」
と、餅月三平太が気がついた。
「ああ……? たし、蟹――」
綾羅木定祐も蟹イントネーションで、先ほどの戦闘によって、すっかり忘れていたことに気がつく。
これが、相手が餅月たちだからよかったものの、もし本当の刺客に襲われていたらどうするという話だ。
そんなところへ、
――トッ、トコ……、トコ……
と、足音をさせながら、上市理可が戻ってきた。
その手には、某17の円柱状のアイスを持ちながら、ペロペロと舐めており、
「あっ、綾羅木氏。アイスが食べたくなったから、買ってきたのだ! 枇杷ヨーグルト味、美味しいのだ!」
「おい!! ふざけてんじゃねぇぞ!! てめ、このハ〇太郎!!」
「「〇ム太郎――!?」」
と、ハ〇太郎呼ばわりしてキレる綾羅木定祐に、餅月三平太と桜田みおんぬの二人は驚愕した。
***
――場所を移動して。
ポーカーのチップの、子気味のよい音のカシャカシャ聞こえる、ポーカー・バーのラウンジスペースにて。
「――というわけ、なのだ……、いや……、というわけです。はい」
と、ハ〇太郎もとい上市理可が、餅月三平太と桜田みおんぬの二人に、“混沌事件”とその調査のあらましについて説明した。
「いま、このくそハ〇太郎野郎の話した内容、お前たちも知っているよな?」
「おいコラ、綾羅木氏」
直ちにつっこみが入りながらも、スルーして綾羅木定祐が餅月たちに聞く。
「もちろん、あらかたは……、知ってますよ、旦那」
餅月三平太が、そう断りながら答える。
綾羅木定祐が、モスコミュールに口をつけつつ、
「そうか……。“お前たちの界隈”では、どうなんだ? この事件? “裏の人間”と、何か関係あるものなのか? 粛清とか、報復とかの類の――」
と、聞いた。
ここに来る前から気になっていた点であり、この餅月たちに聞きたいことの核心だった。
「ええ……、それなんですが……、まさに、我々も、気になってまして、――」
餅月三平太も、何かカクテルを飲みながら、
「確かに、ですね……、いわゆる仁義に外れたことをした連中を、粛清したり――、まあ、そこまでしなくても、ふざけた連中を絞めたりするくらいならあります」
と、答えた。
“粛清”だの、“絞めた”りだの、物騒な言葉が出つつ。
さらに、餅月三平太は続けて、
「今日も、痴漢をでっち上げて、動画を撮っていた連中を絞めてきましたし」
「あっ? それ、聞きたい」
と、ストロベリーに、翼の生えるエナジードリンクのカクテルを手にした上市理可が、興味を示した。




