薄情な人間
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
何時もこうです。
五月蝿いから黙ってと言われました。だから黙りました。そうしたら薄情な人間だと思われました。この世界の塩梅は、私にとって、とても難しい事でした。
本日の事、何時も良くしてくれる先輩が休んだ。何でも夏風邪の様で、数日間は休みを貰うとの事だった。直接聞いた訳では無い。ただ、上司からそう言われた。
「お隣が居なくて寂しい?」
上司は少し揶揄う様な口調でそう言った。それは隣人の心配とは別のところにある、私の反応が、ただ見たいだけの様の様だった。私はそれに、無表情な淡々とした声を乗せて、当たり前な一言を返した。
「寂しいです」
「え、意外……」
後々帰り際、その一言に心を抉られて居ることに気が付いた。
そんなに私は薄情な人間に写っていたのだろうか? ただ何時もの様に会社に来て、無言かつ無表情で仕事を熟し、定時に帰宅しているだけなのに。もっと何か……在り来りな話でもした方が良かったのだろうか?
そうして数年が過ぎて、この場所を去ることになった。会社は何時も通りの時を刻み、私との別れを気に止める者は居なかった。来る者拒まず、去るもの追わず。それを地で行く最終回だった。
「どうしたの? そんな泣きそうな言葉を吐いて」
前を見ると梅香の君が私の事を見下ろしているところだった。見上げると、一筋の涙が零れ落ちた。
「五月蝿いと……言われたから黙ったんです……。だから挨拶と了承と報告だけをして、あの場所に居ました。私からの雑談は全て雑音だろうと思っていたから……。そうしたら、薄情な人間と思われて、誰も何も言いませんでした。腫れ物に触る様に扱われて、私はそこを出ました」
五月蝿いと言われたから黙ったのだ。必要最低限の会話だけをして生きてきたのだ。五月蝿いと言われたから。でもそうしたら最終的に皆よそよそしくなって消滅した。
私は何か間違った事をしたのだろうか? 何か正解を選べば、薄情な人間だと思われずに済んだだろうか?
「誰かが心配してくれたら、君も心配すれば良かったんだよ。話すことに臆病になってはいけない。君は少し……殻に篭もり過ぎた。世界は一つの失敗を許せない程、残酷じゃない」
梅香の君は、私よりも多くの事を知っていて、私よりもずっと上手く言葉が繋げられる方だった。だから……きっと私よりも上手くあの世界に居れたのだと思う。
「苦しいです」
「うん」
「何時も何時も、不正解ばかりで」
「間違ってないよ。ただ少し不器用なだけ」
それから黒衣にしがみついて、ちょっと泣いた。涙が乾くことはなかった。
以下、何でも許せる方向け。
話す事が上手い人は、生きるのも上手。
話す事が下手な人は、生きるのも下手。
その境目は主に自己肯定感の高低に関わって来ます。
自己肯定感の低い人って、
私は何をやっても駄目だから、何かしても誰も喜ばない。
という思考回路になるんですよ。
こうなると行動する事はおろか、話す事も出来なくなります。
何も出来ないなら出来ないなりに、何にも成れないなら成れないなりに、行き着いた先がこれでした。