生き延びる。ただそれだけで、、、
とある小さな村。
そこにケダモノが出現した。ケダモノは瞬く間に人を喰らい、村と住民は一晩にして消えた。そう、俺を残して。ケダモノは嗅覚がいい。俺が生身のまま突っ立っていたら間違いなく殺されていただろう。
だが、人が喰われていく最中俺は何も考えれなかった。
ただ無意識の内にケダモノの食べかすの間に挟まり己の匂いさえ消して生きるのに徹した。
感じたことがなかった。生きるのがこんなにも難しいことだとは。
危険からは大人が守ってくれた。野生動物が出ても村一番の猟銃使いが直ぐに殺してくれた。
空腹で飢餓に陥ることも無かった。殺した動物の肉を喰らっていたからだ。小さな村だったがうまい事野菜もやり繰りしていた。
「あ、アァァ。」
村が消えてから4〜5時間経った頃にやっと感情が追いついた。
まだ齢10の子供にしてはそれなりに速く状況理解できただろう。
「う、うわ、ぁ、ぁ、。。。おっとう、おっかぁ、。」
沢山泣いた。あれ程泣いた夜も叫んだ夜、絶望した夜も、人生の中でもう二度と訪れることはないだろう。
そして、三日三晩泣いた。
泣き終わった後、煤が付きボロボロになった少年は一つ、たった一つだけとある、覚悟をした。
「殺す、殺してやる、絶対に。あいつだけは。」
それは少年の手には大きすぎる野望であった。
だが、少年は知っていた。ケダモノを殺すためには村一番の猟銃使いよりも強くならなければいけないと。世界に誇れる位強い漢にならなければいけないと。だから少年は漢になった。いや、ならざるおえなかった。漢になった少年はとある誓を立てた。もう泣かない、叫ばない、絶望しないと。そう誓った漢は一人歩き出す。ケダモノを殺す為だけの人生を。
宛もなく歩く。まるで親を喪った赤子の様に。
腹が減った。ノミが湧いた。足を怪我した。
だが、漢は泣かなかった。これからの将来に絶望しなかった。誓を守る為。
そんな少年を見かけたのか、ある男が声を掛けてきた。
「おいおい、坊や一人かよ。どうしたんだ?お父ちゃんは?
おかあちゃんは?」
その男はノミが湧いているのにも関わらず頭をガシガシと撫でてきた。
いや、男にも分かっていたのだろう。なにか事情があると。死んでも死にきれない恨みがあると。
「あ、ぁ一人。俺一人だけだ、、、。」
漢は数日振りに人と話した。
見知らぬ人から醜い。汚い。近寄るな!。と言われる事はあっても、話しかけてくる者など一人もいなかったからだ。
だが、男は何も聞かず。それを理解した様に優しく声を掛けてくる。
「おいおい、大丈夫かぁ?取り敢えず俺ん家まで来るか?」
男は何処までも優しかった。底なしに優しかった。
だが、漢は知っていた。優しさは、亡くしたときに凶器となって己を貫いてくると。だから最初は断った。亡くしたときが怖いから。そのせいで己の誓を破ってしまうのでないかと。
だが男はそんなのお構いなしだった、諦めなかった。ここで見逃せば死んでしまうと思ったからだ。だが、漢は断った。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も断った。
「流石にその状態で放置は俺の気分が悪いしよぉ。な!俺を助けると思って助けられてくれ。!」
この言葉は、本音半分嘘半分だった。
確かに男目線死なれたら気分の優れるものではなかった。
だが、特段気分の悪くなるということはなかった。
ただ男は見てみたかったのだ。恨みを持つものは何処まで化けるかを豹変するかを。
「わかっ、った。俺の根負けだ。お言葉に甘えよう。」
とうとう漢は根負けした。いや、ここでコイツに着いていかなければ、己が死ぬと何処かで悟っていたからだ。
そして、漢は心の中で考えを入れ替えた。
亡くなる時が来るのを恐れるよりも、亡くなってしまいそうな時、自分が守ってやればいいのだと。その為、コイツについていき猟銃の使い方をどうにかして、誰かから教わろう。と。
「お、やっとその気になったか。ならついてこい俺ん家はこの先だ!。」
男はそう言うと漢を背負った、汚いや醜いなど考えもせずに。その時漢は泣きそうになった。今の今まで少年だったのだ。たとえ、己の誓いがあったとしても長い間迫害に耐えれるはずがなかった。
「ふむぅ〜謎だな。なんでお前は孤児なのにそんな流暢に喋れるんだ?。」
その男の何気ない一言は、漢の地雷を踏みかける。
だが、漢は黙って考えた。このまま起こった事を話すと己の仇が誰かに取られてしまうのではないかと。
この男は優しい。だからこそ誰かに話して討伐してもらおうとしてしまうのでは、と。だが、そこで漢は考えるのを辞めた。久々にきた睡魔に従い眠りに落ちた。
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