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 鈍器お姉さん

「えー!? ルイスさん、あのストーンゴーレムを倒したんですか!?!?」

俺は、依頼を終えたので冒険者ギルドに戻り、森で採取してきた薬草と先ほど狩ったストーンゴーレムの素材をステーシーの目の前に出していた。

「ストーンゴーレムで修行をしようと思ったんだが、目の前に俺と同じ貴族の女が居てな。仕方なく倒したんだよ。全く、アイツらのせいで折角の特訓が台無しだ。ほんとについてないな」

俺は「やれやれ」と首を振る。

「いえそれよりも、おかしいですよ!」

「何がだ?」

「いや、『何がだ?』じゃないですよ! どこのFランク冒険者がAランク級の魔物であるストーンゴーレムを倒すんですか!!」

「普通に居ると思うんだが?」

ステーシーはあり得ないといった顔で頭を抱えている。

何かおかしなことを言っただろうか。

「ハァ、とにかくルイスさんが無事で何よりです」

「それはどうも」

「私はこの件をギルド長と話をしてきますので、少し待っててください」

ステーシーはそう言うと席を外した。


──数分後


「どうも、私はこのギルドのギルド長を勤めている【アイルミ・ボロニーニ】じゃ」

「ルイス・フェイト・バハリエリだ。よろしく」

俺はギルド長と握手を交わす。

「この度、ルイスさんがFランクでありながらもAランク級の魔物であるストーンゴーレムを倒したで良いんだな? ステーシー君」

「はい、先ほどお伝えした内容の通りです」

「ふむ……」

ギルド長は少し考える素振りを見せた後に俺に向かってこう言ってきた。

「今回は特例で、ルイスさんのランクをFランクからCランクに昇格。そして、ストーンゴーレムを倒した特別手当てとして、金貨100ゴールドでどうじゃろうか?」


ちなみに、この世界の通貨価値は──

銅貨1000枚→銀貨1枚

銀貨100枚→金貨1枚

となっている。


日本円換算にすると──

銅貨1000枚=銀貨1枚=1000円

銀貨100枚=金貨1枚=1000×100→10万円

となる。


「あぁ、それで構わない」


ギルド長は「そのように頼むな。ステーシー君」っとそれだけ言い残し、帰って行った。

「それではルイスさんには、薬草採取の依頼の報酬の銅貨100枚と──」

ドサリッ! っと机の上に金貨が詰まった袋が置かれる。

「こちらがストーンゴーレムを倒した特別手当ての金貨100枚です」

俺は机に乗せられた金貨の袋を手に取る。

「では、また来る。リナ行くぞ」

「はい、ルイス様!」

俺はステーシーに背を向けて歩き出し、ギルドを後にするのだった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「お、おい! や、止めろー!!」

「うふふっ、えいっ!」

「ギィヤアアアアアア!!」

「あらあら、いい断末魔ね」

体に刺さったナタを引き抜きながら微笑む美女がいた。

その姿は、ホワイトミルクティーベージュの長い髪に、亜麻色を基調としたナイトキャップとドレスを着ている。しかし、ドレスに関しては返り血で赤く染まっていた。

「こっちも片付いたわ〜」

「こっちもよ〜」

「あら、もう終わったのね。案外、呆気あっけなかったわね」

三人いるうちの一人の美女が頬にかかった返り血を指でそっと舐める。

「ふふっ、いい味だわ……♡」

彼女は空に浮かぶ青白く光る月をゆっくりと見上げる。

「今日も良い夜ね」

その闇夜を照らす月明かりは、まるで彼女たちがやっている行いは正しいと肯定しているかのように美しく輝いていた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「みんなー! 仕事を始めるよー!」

幼き少女が自分と歳が同じくらいの少女たちに元気一杯に声をかける。

「は〜い!」

それに応えるように周りにいる少女たちも返事をする。

幼き少女たちは、黒色のキャップを被り、水色のスモックを身にまとっていた。

その床の全体には血が広がっていた。

特に今、幼き少女たちをまとめている少女の帽子には【Deus vultデウス・ウルト】と書かれてあった。

「う゛ー゛ん゛!! う゛ー゛ん゛!!」

「はいはい、分かってるよ! 今からお兄さんにやるのは単なる《《救済》》です。それは神が望まれていることなのです。だから、怖がる必要なんてないんだよ!」

少女は、口に猿轡さるぐつわを噛ませ、拘束しておびえ泣いている様子の男を「よしよし」っと撫でながら、満面の笑みで話しかける。

「神のめいによって裁かれるあなたは、身も──心も──あまつさえ魂も、救済されることでしょう! それは、とてもとても素晴らしいことなんです」

少女は両手をめーいっぱい広げて、目を見開き、信じて疑わない様子で狂ったように言った。

「さて、前置きが長くなっちゃったけど、始めます……ね」

その言葉を最後に少女たちの顔は笑顔から、狂気の笑顔へと変わった。

「アハハッ! お兄さん、私たちを楽しませてね!」

「う゛ー゛ん゛! う゛ー゛ん゛! う゛ー゛ー゛ー゛ー゛ん゛!!」

後日、男の遺体は原形をとどめていない状態で王都の広場で発見されるのだった。












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