王族にタメ口を使う男
「あなた、私の騎士になりなさい!」
リナの頭を撫で終わった俺は今、目の前にいるなんかよく分からない意味不明なことを言ってくるお嬢様に呆れていた。
「はっ?」
「『はっ?』とは何ですか?! 『はっ?』とは?!」
「いや、だって俺はお前みたいな奴の騎士なりたくないし……。それに俺はコイツらの稽古で忙しいんだ」
それにいつかは勇者や魔王とも戦ってみたいしな。
「そうでございます。あなたの様な裕福な家庭で育った常識を知らないお嬢様とは違い、ルイス様は日々努力を重ねてお強くなられております。加えて私たち二人の稽古相手にもなってくれております」
リナの頭に乗っている、もこはリナに同意するようにブンブン頭を振っている。
「なっ?! 私が常識を知らないお嬢様ですって?! ソフィア、このいけ好かない男たちに何か言ってやって!」
自分勝手な貴族の娘がそう言うと、側にいたソフィアというメイドが前に出て話し始めた。
「確かに、アリエル様は──朝起こしに行くと寝相が悪くベッドから転げ落ちていたり、色々と問題があり──」
グサグサッ!
うん? 何か今あのお転婆娘から効果音が聞こえたような……。メイドは続ける。
「突然突拍子もないことを言い出して、行動したりと私も本当に疲れます。今日もそれで危険な目に合いました」
グサグサッ!
あっ、やっぱり勘違いじゃないわ。あの娘から効果音が出てるわ。
「それに他にも──」
「ソフィア〜それ以上は止めて〜お願いだから〜」
涙で目を潤々させ、ソフィアの服に両膝を付きながら掴み止めてと訴え掛けていた。
「し、失礼しました。アリエル様。つい本音が」「ソ゛フ゛ィ゛ア゛〜゛〜゛!!」
あのメイド、主人に対して容赦ないなぁ〜。
何ともまあ、見るに堪えない光景だな……。
「リナ、帰るぞ。付き合ってられない」
「了解しました」
俺はリナに耳打ちをして、気付かれないように帰ろうとする。
「あの〜、アリエル様よろしいのですか?」
「何よ、ポール。少しは私を慰めてよ」
「あの少年を帰らせて良いのですか?」
「えっ?」
アリエルはポールの方を振り向くと、先ほどまでそこにいた少年が居なくなっていたことに気付いた。
「あ、あいつ、言うだけ言って帰るなんて──」
アリエルは拳にこれでもかと力を入れる。
「ア、アリエル様?」
ソフィアはアリエルに尋ねる。
「──ぜっーーたい、私の騎士にさせるんだから!! あと、まだお礼が言えていないんだから!」
アリエルは空に向かって高らかに叫ぶ。
「まず、お礼を言うのが先だったのでは? アリエル様」
「それは、ソフィアも同じじゃない!!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あなた、私の騎士になりなさい!」
あの小娘めぇ、身の程を弁えていなのかぁー?
いくらルイス様がお強いからといって、ルイス様に向かって『あなた、私の騎士になりなさい!』っとは何たる不敬。
普通はルイス様に懇願してお願いしますと土下座をするのが筋ってもんでしょうが!
これは、即刻この場で死刑、いや拷問が好ましいわ。
私は頭に血が上り、気づかないうちに拳いっぱいに力を入れていた。
しかし、今はルイス様がお話をしている最中。
ここはルイス様の騎士として怒りを抑えなければ。
「いや、だって俺はお前みたいな奴の騎士なりたくないし……。それに俺はコイツらの稽古で忙しいんだ」
ル、ルイス様が私たちのことを大事にしてくださってくれていることを再認識することが出来ました。
このカリーナこれ以上ない喜びでいっぱいですぅ。
私は心の中で感動して涙を流していた。
きっと、もこも喜んでいることでしょう。
なにせ、私の頭の上で頭をブンブン振っているのだから。
「そうでございます。あなたの様な裕福な家庭で育った常識を知らないお嬢様とは違い、ルイス様は日々努力を重ねてお強くなられております。加えて私たち二人の稽古相手にもなってくれており、忙しいのです」
私は、ルイス様に同意するようにあの貴族の小娘に言うと、納得がいかない様子で側にいたメイドに助けを求めた。
しかし──
「確かに、アリエル様は──朝起こしに行くと寝相が悪くベッドから転げ落ちていたり、色々と問題があり──」
グサグサッ!
あらあら、メイドもメイドでよく分かってるじゃない〜。
これでは、あの小娘が可哀想だわ〜。
まあ、私はそんなこと微塵も思ってないけど。
私は悪魔的笑みを浮かべながら、あの小娘がメイドに家での生活を暴露されて、へたる様子を見ていた。
最終的には、小娘が泣きじゃくる結果となり──
「リナ、帰るぞ。付き合ってられない」
ルイス様が呆れた様子で私に仰られた。
「了解しました」
そして私はそう返事を返しながら、ルイス様の少し後ろを歩くのだった。