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 前奏曲(プレリュード)

「ほれほれ、どうしたどうした! 逃げてばかりじゃ、つまらんじゃろっ!」

 軽やかな指使いで弦をはじき、曲を演奏するセル。

「くっ……!」

 間一髪というところで急所を躱してはいるが、ハープの音色から繰り出される予測困難な技の数々が私の体を着実に傷つけていく。


(ならばっ……!)


「はっ!」


 ──直後、煙が発生しセルの攻撃が空を切った。


「ほぅっ」

 煙によって視界が悪くなったところを私は狙う。

「はああああああっ!!」

 セルの背後に回り込み一撃を叩き込む──が……。

「──ッ!!」

 嫌な影を瞬時に確認した私は持ち前の身軽さで、煙の中から放たれた攻撃を木枝から木枝へと飛び移り避けた。

「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

「なるほどな、お主は蜘蛛型の魔物じゃったのか。おかげで不意をつかれてしまったわい」

 煙が晴れるとセルの側には2匹の緑色の瞳を持った白い蛇がいた。

「不意をつかれたって言うわりには、随分と余裕そうに見える」

「そんなことはないぞ。お主の不意打ちは実に見事じゃった。普通の敵であれば今のは避けられまい。じゃが、相手はわしじゃ。わしの前ではそんな姑息な技は通用せんということじゃの」

(1回落ち着こう。まず始めにやることは相手の分析、次にその分析を元に打開策を考えること。今こそ、ルイス様から教わったことを実践するとき)

「さてお話はここまでじゃ──そろそろ続きを始めようかのう」

 そしてセルは再びハープの弦に手を添えた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


精霊の舞(セナドゥウス)

 セルはそう言うと、力強い指使いで走るように弦をはじいていく。

「「シャーッ!!」」

 激しい演奏の開始と同時に2匹の白蛇も勢いよく動き出した。

「賑やかだけど嬉しくはない。──ここからは全力で行くッ!」

「「シャーッ!」」

 2匹の白蛇はお互いに意思疎通し、二手に別れた。

 一方の白蛇が私に噛みつこうとする。

女王鋼鉄糸スチールスレッド・モコ

 私は蜘蛛糸で擬似的にバリアを生成し、噛みつき攻撃をブロックする。

「予想通り厚い皮膚。私の蜘蛛糸で貫けないなんて、一体どんな堅さしてるんだか──」

「シャーッ!」

「よっと!」

 もう一方の白蛇が邪魔してきたので私はそれを躱す。

 2匹の白蛇は枝に掴まっている私を見つけ、飛びついてきた。

 木に巻き付けた蜘蛛糸で枝から枝へと素早く移動し距離を取る。

(仕方ない。ルイス様に差し上げようと思いましたが、やむを得ない!)

 私は持っていた荷物を追い掛けてくる白蛇に向って放り投げた。


 そして──


「炎よ爆ぜろっ!」


 私から放たれた火属性魔法は荷物を炎で包んだ。その瞬間、大爆発を引き起こした。


「すぅ~〜〜〜はぁ~〜〜〜〜っ」

 セルは一度深呼吸を挟み、呼吸を整える。

(おそらく、あの爆発はこの森でしか手に入らない木の実によるものじゃの。アヤツ、知識がそれなりにあるようじゃ)

「これからが良いところじゃったのに……。爆発とはタイミングが悪いの〜。……じゃが、サビ前の静寂はこの時を以て──」

 大きく目を見開きセルは呟いた。


「──()()()()()となるのじゃよ」


 先程とは比べ物にならないほどの速度で弦を弾き始める。ハープ演奏はさらに激しさを増していく。それに伴い、白蛇の動きにも拍車がかかりキレが増した。

「シャーッ!」

 目の前に背後で追ってきていた白蛇が突如として現れた。

(さっきよりも──速いッ!?)

「なっ……! ガハッ!」

 私は白蛇の尻尾で思い切り地面に叩き付けられた。

「くっ……そっ……!」

 激しさを増していた演奏がだんだんと、ゆっくりになっていく。

 当然、蛇の動きも遅くなる。2匹の白蛇は地面に倒れた私にゆっくりと近付いてきた。

 



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