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 ハツミズ・ムツキ

「おっ、そろそろだな」

遠くにいた人影が見えてきたのでリナに指示する。

「リナ、先にあそこまで走っていけ。俺が引き付ける」

「分かりました」

リナは俺の指示に間髪入れずに答える。

流石俺の手駒1号!!

「ほ〜ら、ほ〜ら! こっちだよ、デカブツ! おし〜りぺんぺん!! ペペンのペン!!」

俺の挑発を受けてゴーレムは激怒し咆哮を上げる。

ふっ、計算通り──

「さ、流石です! ルイス様!!」

リナは後ろを向きながら目をキラキラ輝かせる。

「世辞はよせ」

リナの世辞に答えながら俺はゴーレムを場所まで誘導するのだった。


◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「お前たちは邪魔だ! 今すぐ、ここから立ち去れ!」

ゴーレムの誘導地点まで来た私は、声を張り上げて、馬車の近くにいる老いぼれ騎士とメイドと貴族らしき少女に言う。

「それは無理でございます。私はこの怪我、そして、あのゴーレムのスピードだと御二方を逃がす時間が無いでしょう。ですから、私がゴーレムを抑えて時間を稼がなくてはいけませんから」

「チッ、仕方ありませんね」


私は動けない三人の前に仕方なく、本当に仕方なく立ち、ルイス様が来られた時、すぐにゴーレムに対応出来るように準備をする。

ゴーレムを連れてルイス様が走ってこられる。

3、2、1……今!!

「いけ、リナ!」

「はっ!」

私はルイス様の声と共にゴーレムに向かって跳躍し、腰に差しているレイピアに手を掛ける。

そして、目をつぶり意識を集中させる。そして魔力を流し込んでいく。

この時、私は時が遅くなったように感じた。

それはまるで、水滴が水に落ちてゆっくりと、ゆっくりと徐々に広がっていく波紋のように。

流れる時間がとてもゆっくりに感じた。

そして、私はその名を口にする──


「ルイス様直伝、和風月冥わふうげつめい一刀流奥義──壱ノ型《《ハツミズ・ムツキ》》!!」


私は声と共にレイピアをさやから引き抜き、ゴーレムを一突きする。

魔力を流し込んで強化されたレイピアはゴーレムの体を貫通すると同時に、体にあった《《核》》も破壊されゴーレムはものすごい音を立てながら地面へと倒れた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「ふん、この短期間でよくもまあ壱ノ型をものにしたな」

俺はそんな感心めいたことを口にしていた。

成長スピードが早くて、俺はいつか抜かれるんじゃないか凄く心配だが……まあ、そんなことは無いとは言え、努力はおこたらないようにしないとな。

そうだ、せっかく頑張った手駒にはご褒美をやらんとな。

そう思い、ゴーレムを倒し終えてレイピアを鞘に収めるリナの元に歩み寄る。

「リナ、お疲れ様」

「ありがとうございます。ルイス様」

リナは俺に呼ばれてすぐに駆け寄って頭を垂れる。

手駒としてちゃんと心得ているおるのう。ガーハッハ。

「リナにはゴーレムを倒した褒美をあげないといけないからな。何が欲しい?」

そんなことを聞かれリナは「いえ、ルイス様から褒美を貰うなど恐れ多いです」と言ってきたので、俺が命令だと言うとすんなり受け入れた。

「え〜っと〜、それでは──」

顔を赤くして、もじもじと恥ずかしがりながら褒美を口にする。

「ルイス様に頭をなでなでして貰いたいです!」

「そんなことで良いのか?」

あまりにも要求が普通過ぎて、つい聞いてしまった。

「はい! 私にとってはこの上ないご褒美です!!」

「リナがそれでいいなら良いが……」

「はい! では早速お願い致します!!」

リナは俺に頭を撫でて貰うために早く早くと頭を突き出し急かしてきた。

「そんなに慌てなくても俺は逃げないぞ」

俺はそう言いながら、金髪でさらさらしているリナの頭をこれでもかと撫でてやった。

「うへ〜、やっぱりルイス様に撫でられるのは、この上ないご褒美です〜♪」

「本音が駄々漏れだぞ。リナ」

「これは仕方ないのです! エルフの本能でございますから」

「おい、タメ口と敬語が混ざってるぞ」

「わ、私としたことが、も、申し訳──」

「今は、特別に許してやる。だから跪くな」

「ル、ルイスさま〜。あ、ありがとうございます!!」

跪こうとしたリナは体勢を戻し、俺はしばらくの間リナのさらさらな髪を撫でるのだった。


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