騎士団長は興奮が止まりません
「やはり、もう居ませんか」
私は先程まで偽アリエルが居た場所まで来ていた。
「何か手掛かりは──」
私は何か残っていないかと辺りを探索する。
「ん? これは……」
そこには、一つの大砲が置いてあり、その付近にはガラスらしき破片が散乱していた。
「……暖かい」
大砲に触れると、まだ微妙に熱気が残っている。
「こんな大砲に私は足止めを食らったのですか……しかも、この距離から……。相当の腕の持ち主と判断とした方がいいかもしれないですね。…………何か癪ですね」
これはきっと大砲の砲撃を避けられなかった自身へのイラダチだ。だが、この気持ちを、心の奥底にある煮えたぎるこの思いを相手に押し付けるのは無作法というもの。
「上には上がいるということですか──しかし……。それが出来たところで──ダメージを負わなければどうということもない! ハッハッハッハッ!! アーハッハッハッ!!」
私は誰も居ないことを良いことに天に向けて高笑いする。
「そんなに高笑いしてどうしたの──ザーゴ?」
私の高笑いとは別の幼くも私への殺意に満ちた声が響いた。
「────ヒィ゛ッ!!!!」
私は知っている、この声の主を。
「私のお願いは、きちんと、チキンと果たしてくれたのよね?」
「そ、そそそ、それは勿論……」
私は後方へ一歩後退る。
「あら、ザーゴ? どうして逃げるの?」
アリエル様は後退る私に対して一歩と、また一歩と距離を詰め寄ってくる。
姫様の顔が笑っているのに、瞳が笑っておりませんんんん!!!!
よし、こうなれば──
「回れー、右ッ! 失礼しますっ!」
私は悪魔《アリエル様》の手から逃げようと全速力で走り出した。
ポヨンっ!
「んっ?」
走り出したかと思えば──何か柔らかくて、巨大で、良い匂いがして、少し汗ばんでいて、すぐにでも『触れ』と本能が訴え掛けてくる男のロマンが私の視界を遮った。
ガッチリッ!
突然、両肩を誰かに掴まれ身動きが取れなくなる。
「あらあら、これはザーゴ騎士団長。一体どこへ行こうというのですか?」
「えっ?」
ま、まさか、この美しき声はッ──!!!!
そして、目の前が暗闇になった訳を瞬時に理解した。理解せざるおえない。
「こ、これは、これは。ソ、ソフィア殿ォオオオオオオオオオオ!!!!」
プッシャーッ!
途端、私は鼻血を勢い良く吹き出す。
それもそのはず。頭で分かっていていても、興奮するのが人の性。
ソフィア殿の豊満な、お、おお、おぱ、おぱおぱ──おぱぱぱーーぃいいいいい!!
が私の顔全体を包み込むでいるのですから。
ピキンッ
「ふんっ!」
愛しきメイドからの強烈な愛のパンチを喰らい、宇宙の彼方まで吹き飛ぶ私であった。
あーー、幸せええええええ!!!!




