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 超人でも人間

「ザーゴ──そこにお座り」

「は、はいぃぃいいい!!」

私はザーゴを民衆が通る面前の道端で地面に正座させていた。

「私が何に怒ってるか言ってみなさい、ザーゴ?」

私は鬼の形相で騎士団長であるザーゴに怒りが込み上げていた。

「わ、私がこっそりソフィア殿の寝室に侵入し、パンツを盗んだことでしょうか?」

「ハァッ!?」

「ナッ!?」

「それとも、アリエル様が大事にしていたクマサンおパンティを間違えて斬り刻んでしまったことでしょうか?」

「無くしたかと思ってたけど、犯人アンタだったのね……よくも、私が大切にしていたクマサンを……」

「それとも、それとも、今ここに居る彼女らのベッドに寝っ転がり私の臭いをマーキングしたことですか?」

「だ、団長!?」

「だから、あの時ベッドにザーゴ様の匂いが……その残ってた匂いで少し致してしまったことは秘密ですが……」

「それはもう言ってる時点でシークレットでも何でも無いだろ」

「ハァ、ザーゴにはまだまだ余罪がありそうね。ってそうじゃなくてっ! 私は王族なのに、あの貴族ごときのアイツが私に対して敬意を払わないで馬鹿にして、逃げたことに怒ってるのよ!!」

「しかし、あの怪我で逃げれるはずありません。今からでも探せば近くに居るはずです!」

「なら、ザーゴ、あのお調子貴族を私の前に連れてきたら、私の大事なクマサンおパンツとソフィアとそこにいる騎士二人の件については見なかったことにするわ」

「正気ですか、アリエル様」

「えぇ、正気よ。でもねザーゴ、もし連れて来れなかったら──その時は、私を含めた四人がアナタを気が済むまでボコボコにするから、覚悟しとくことね♡」

私はにこやかに指をバキバキ鳴らして告げる。

「私はいつでもスタンバっておりますので、アリエル様のご指示があればすぐにでも──」

ソフィアも私と同じように指を鳴らす。

「ははあっ! このザーゴ、何としてでもアヤツをここに連れて参ります!!」

「「アハハハ、アハハハ、アハハハッ!!」」

「アリエル様とソフィア様のお顔が笑っているのに──」

「御二方とも目が笑っていませんね」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


俺は、お転婆アリエルが雑魚と話している隙にとある人物に助けられて、おんぶされていた。

「大丈夫でございますか、ルイス様?」

「あぁ、大丈夫だ。かすり傷だから何ともな──アイタタ」

「やはり、大丈夫ではないようですね。頭からの出血がヒドいです」

「なら、聞くな」

「ふふふっ」

「何、笑ってんだよ!」

「いえ、すみません。普段のルイス様とのギャップがスゴクて」

ベルファストは怪我を負っている主を満面の笑みで笑っている。おんぶされている俺はとーっても不機嫌だ。そうだ、不機嫌極まりない。許さんぞ、ベルファスト。

「普段のルイス様はどんな奴にも負けないスーパー生意気な貴族お坊ちゃまですが、今のルイス様を見るとちゃんと人間なんだなと、とても実感します」

「どういうことだよそれは。まるで、俺が人じゃないみたいな言い方だな。あとお坊ちゃまは余計だ」

「え? 違うのですか?」

「誰がロボットだ! 俺は人間だ。少し、強いだけの──ただの人間だ」

俺はそう言って雲一つない透き通った蒼い空を見つめる。

「それよりこんなとこになぜ居るんだ?」

「ルイス様に準備するお食事の買出しに来ておりました」

「なるほどな。そこに傷だらけ俺がたまたま居たから助けたと──よくバレなかったな」

「はい、実は私の体には誰にも感知されないアンドロイド専用のステルス機能が備わっております。この機能は、魔力がある者に対しても効果を発揮する優れものです。これが無ければ危うくルイス様は牢屋送りだったでしょう」

ベルファストには感謝しないといけねぇな。

「──ベルファスト」

「はい、何でしょう?」

「俺を助けてくれて……ありがとなっ!」

「──ッ!!」

あっ、なんか、ちょっと……眠くなってきた。

「ルイスさ──」

「……すぅ……すぅ……」

(お眠りなりましたか)

「ルイス様、おやすみなさい。お屋敷に着くまでの間、ゆっくりとこのベルファストの背中を楽しんでくださいね」



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