ボクシング
「無理矢理にでも連れて行って見ろよ。ほらほら」
俺は周りの兵に向かって挑発する。
「ソイツを拘束しろ」
「はっ」
衛兵が後ろから俺の肩を掴んできた。
「ふんっ!」
「グハッ」
足腰の回転を使って体全体の重さを伝えて真っ直ぐなパンチであるストレートを衛兵に繰り出した。この俺に触れるなんて10年早いわ!
「お、おい! 大丈夫か!」
「鼻から血が出て気絶してるぞ!」
「ええい、多少ケガをさせても構わない。取り押さえろ!」
「「「「はっ!!」」」」
「さ〜てと、どうすっかな〜」
俺はボクシングの構えを取り、カウンターが出来る態勢を作る。
「はー!」
槍を持った衛兵の一人が俺に突っ込んでくる。
「フックっ!」
足腰の回転させた勢いで真横に衛兵を撃ち抜く。
「「「「「はあああああああ!!」」」」」
今度は五人が一斉に攻撃を仕掛けてきた。
だが、甘い!
「右ジャブ、左ジャブ、右ストレート! 左ジャブ、右ジャブ、左ストレート!」
「「ぐぁっ!」」
はい、ニ枚やりぃっ!
「左フック、右ジャブ、左ストレートっ!」
「「うああああああああ!!」」
はい、もうニ枚!
「右フック、左フック、右ストレート!」
最後は足腰を動かして真下から垂直に打ち上げる!
「アッパァアアアアアア!!!!」
「あ゛ーっ!!」
衛兵の顎をものすごいスピードで撃ち抜いた。
KO勝ちだオラァアアアアアアッ!
ふう、あまりにも簡単なゲームだなこりゃあ。
「お前、確か《《ザーコ》》だったか? これくらいじゃ話になんねぇよ」
「ザーコじゃない《《ザーゴ》》だ」
「この際ザーコだろうが、雑魚だろうが、稚魚だろうが関係ない。俺に噛みついてくる奴は、騎士や王族だとしても、全員捻じ伏せ踏み台にするまでだっ!!」
「王族にも反抗するとはこれは危険分子ですね。予定を変更して今、ここで排除してしまいますか。君たちはここで私の勇姿でも見ていて下さい」
ザーゴは側にいた女騎士二人にそう言った。
「聞き忘れていたが俺に話し掛けた用件って何だ?」
「そう言えば、言ってませんでしたね。……あなたに話し掛けたのは────単なる気分です」
ザーゴはニヤリと笑った。
「そうかよ、なら始めようぜ騎士様よ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「あなたのような子供には大人は負けませんから」
「それは試して見てからだな」
いくら不意打ちだったとしても敵に囲まれて不利な状況から脱することはそう簡単なことではない。
しかし、実際にこいつはそれをやってのけた。この子供はものすごいポテンシャルを体のうちに秘めている。
私は確信せずにはいられなかった。だが、所詮は子供だ。私の敵では──。
「ナッ!?」
いつの間にか目の前に奴が距離を詰めてきていた。
「オラ、何ボーッとしてやがるッ!! バトル中に考えてことなんて命取りだぞ」
「ふんっ!」
この子供、見かけによらず重い一撃を繰り出してくるとは……想像以上ですね。
「ほう、やるじゃねぇかっ!」
「これくらい止められなくては、王族の騎士なんてやってられませんからね」
「それは確かにそうだな」
「では、今度はこちらから行きます!」




