第30話 ノーシーボ効果withムーちゃん
あれからどれだけ時間が経ったかな──椅子に縛り付けられ目隠しをされてから、時間の感覚が分からなくなった。
「やぁやぁ、気分はどうだ?」
声の主は聞いただけで分かった。
「なんですか?」
すると、何かが私の肌に当たった。
「知りたい? 今、君がどうなっているかを──」
その言葉の直後、耳元でポタリポタリと何かが垂れる音が聞こえてきた。
「な、なんの音?!」
「知ってるかい、人間は血液の3分の1を失うと死んじゃうってことを──」
私は弱気な態度を隠して強気のフリをする。
「それがどうしたんですか」
「分からないかい? 君はたった今、俺にナイフで切られたんだよ。腕をね」
私の表情はだんだん青ざめていくのを感じた。目隠しで視界が塞がれ何も見えないが、どうやら奴が言っていることは本当みたい──。イヤ、嫌だ嫌だ。死にたくない。
「じゃあ、俺は頃合いを見てお前の出血量が3分の1になったのを告げに戻ってくるわ」
「ま、待って!!」
「何だ?」
「い、行かないで──ください……」
「おぉ、もしかして自分が死ぬところを現在進行形で聞きたいのか!」
「ち、ちが──」
そんなの聞かされて死ぬなんて私たちですら人にやったことないのに。
「分かった。ではまず、どの様な過程を経て死に至るのか説明してから、教えるとしよう」
奴は私の言葉を遮り、話し出した。
狂ってる──コイツは何もかもが狂ってる。
その間も私の耳には自らの血が溢れる音が聞こえ続けた。
奴は定期的に何分経ったか、出血はどのくらいか、致死量から見て何%か随時私に報告してきた。
私はいつ死ぬかという恐怖で体が蝕まれていく。
そして──
「致死量に──到達」
奴が出血が致死量に到達したことを伝えた途端、私は息を引き取った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「やぁやぁ、気分はどうだ?」
俺はムーに対して話しかける。
「なんですか?」
俺はとある実験をしようとムーに近付き、感覚が麻痺した腕に薄い鉄板を当てる。
「知りたい? 今、君がどうなっているかを──」
俺はニタニタと笑みを浮かべ、耳元で呟きながら水滴をムーの近くで聞こえるようにして落とす。
もちろん、バケツにいっぱいある水の上に。
「な、なんの音?!」
「知ってるかい、人間は血液の3分の1を失うと死んじゃうってことを──」
俺はムーに伝える。
「それがどうしたんですか」
あらやだ、この子ったらお馬鹿さんなのかしら?オホホホホ。
「分からないかい? 君はたった今、俺にナイフで切られたんだよ。腕をね」
この意味が分かるかとムーに尋ねる。そうすると、ムーは分かりやすくだんだんと顔を青ざめていった。そして体をビクビクさせて怯える。
案外、可愛いなお前。
「じゃあ、俺は頃合いを見てお前の出血量が3分の1になったのを告げに戻ってくるわ」
よーし、ソテーリアのみんなと遊ぶかー。
「ま、待って!!」
今、スッゴクお前のこと可愛いと思ったのに……お前の評価は現在だだ下がりな。
「何だ?」
「い、行かないで──ください」
ムーは俺に懇願してきた。おー、これは理想のシチュエーションでは!?
「おぉ、もしかして自分が死ぬところを現在進行形で聞きたいのか!」
俺はわざとらしくムーに告げる。
「ち、ちが──」
あー、お前の意見は聞いてないから。
「分かった。ではまず、どの様な過程を経て死に至るのか説明してから、教えるとしよう」
俺は説明を終えた後、何分経ったか、出血はどのくらいか、致死量から見て何%か、事細かにムーにちゃんと伝えてあげた。俺ってなんて優しいんだ! ハハハハハハハハッ!!!!
「致死量に──到達」
俺はムーに向けて言い放つ。まあ、この程度でコイツが死ぬわけ……。あれれ、嘘でしょ? 本当に死んじゃったよ! ニタァ。おっと、いけない頬がつい緩んでしまった。これは良い結果が出たぞ〜クックックッ。
思い込みで人が死ぬという恐ろしい結果が──これがノーシーボ効果か。




