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 パパァッ!!

「──ッ!!」

俺は先程までは無かった気配を感じ取ったので、ルビーとエメラに手で静止する合図を出して歩みを止める。

「マスター、どうかしたか?」

「何で急に止まるのよ」

「……気配がする。二人とも気を付けろ」

俺は二人に警戒するように言って歩を進める。

これは、中々にヤバいことになったな。誰かは分からないが、俺が今までに出会ったことが無いほどの気を放っているのだ。俺でもこの気配の持ち主に勝てるか怪しいな……。

そんなことを心の中で呟いていると、その気を放っている持ち主を発見する。

……子供……か? 

そこには、華奢(きゃしゃ)で可愛いらしく、澄んだ瞳の青髪ショートの幼い少女が地面に横たわって眠っていた。

間違いないな、気はこの子供から出ている。

俺は、警戒しながら子供に近付いた。

ふにっ

うわっ、何だ、このほっぺちゃんの柔らかさは!? 指で触るとまるで、マシュマロのように柔らかくて、とてもぷにぷにじゃないかッ?! そして、ハリがあって滑らかなこの肌触り──控えめに言って最高だ。

ふにふに、ぷにぷに

こ、これは堪らないな。何時間でも触っていられる──。

ぷにぷに、ふにふに

「……う〜ん」

ほっぺたを触られて嫌がっている姿は「ヤ〜だっ! めっ、めっ!」としているみたいだった。

ハァーッッ!! 可愛い、ヤバい、マジで可愛すぎだろこの子供。天使か? 天使かよ!? いや、もはや神だ! 女神だ!

「……あの、マスター?」

「なに自分の世界に入ってるのよ」

「ハッ!」

二人に声をかけられてようやく気付いた。

「マスター、顔がめちゃくちゃニヤけてましたよ?」

「この顔のどこがニヤけているんだ?」

俺は顔がニヤけないようにし、いつもの顔で話す。

「もしかしてマスターは幼い少女が好きなの?」

「何を言っているんだ? 俺はこんな幼い子供なんかに別に興味はない」

「あっ、そう──なら、私が触る」

エメラは、そう言うと俺の隣に来て少女のほっぺたを触り始めた。

「なっ!?」

ぷにっぷにっ

「本当に柔らかいわね。姉さんも触ってみる?」

「もちろん!」

ルビーはエメラと反対の少女のほっぺたを触り始めた。

「お、お前ら……誰の許可があってほっぺたを触っているんだ?」

「あら、マスターも触りたいの? 良いわよ、触っても──だけど、マスターはこの子に興味がないんじゃなかったかしら?」

エメラは、悪魔的な笑顔で俺に煽ってくる。

「もしかして、さっき言ったことは嘘なのかしらね? マスターともあろう、お・か・た・が」

コイツ、よくもまあ堂々と俺の前でそんな生意気なことが言えるな。決めたぞ、エメラは一週間ロールケーキの刑に処す。

「うん……ん……ん?」

すると、少女は目を覚ました。

おい、起きたらもうほっぺたに触れられないじゃないか!

「んっー! ふぁ〜」

目を覚ました少女は背伸びをして、ルビーとエメラを一瞥してから二人の後ろにいる俺をじっと見つめてきた。

「ん? 何だ?」

その後少女から予想外の言葉を発せられた。



「──パパ?」



「「「えっ? パパ?」」」



「パパ──パパァァァァーーッッ!!」



少女は満面の笑みで「パパ」と言いながら、俺の胸に勢い良く飛び込んできた。



「「「パパァァァアアアッッーー!?!?」」」

俺たちは少女の言葉に驚愕して開いた口が塞がらなかった。

「マスターが何故びっくりしてんですか!?」

「いや、何でマスターも驚いているのよ」

「それは本人の俺が一番聞きたいな」

「パパァァッ!!」

俺たち三人が困惑する中、少女は俺に頬をスリスリと擦り寄せてくる。

「お前、名前は何て言うんだ?」

「パパ、お前じゃない。【ミオン】だよ! ミオンって名前はパパが付けてくれたんだよ!」

「……これ、どうすれば良いんだ?」

俺は少女をどうすれば良いか分からず、二人に案を貰うことにした。

「マスターがそのまま育てたら良いんじゃないか?」

「姉さん、そうするにしてもこの子の気持ちを聞いてからの方が良いんじゃない?」

「それもそうだな。ねぇ、パパと一緒に居たい?」

ルビーはしゃがんで少女の目線に合わせて聞く。

「ミオン、パパと……一緒に居たい……」

「そうだな、パパと居たいよな」

「おい、俺はまだこの子と暮らすと決めたわけじゃないぞ!」

「パパ、ミオンのこと嫌いなの……グスっ、グスン、グスン。うぇーん、うぇーんっ!」

俺の服の裾を掴みながらミオンは泣き出した。

「お、おい、泣くなよ」

「うゎー、マスター小さい子泣かしたー」

「マスター、流石にこの子が可愛そうだ」

「うーん、分かった、分かったから!」

俺はミオンの視線に合わせてしゃがむ。

「パパはミオンのことを嫌いじゃないぞ」

「なら、ミオンのこと好き?」

「あぁ、大好きだ」

「ミオンもパパのことだーいすきっ!!」

その言葉を聞いた瞬間、ミオンはひまわりが咲いたような笑顔で俺の胸元に抱き着く。俺はミオンを優しく包み込むようにして、抱き締める。

「マスターはもう父親だな!」

「えぇ、ホント、姉さんの言う通りね」

ルビーとエメラは俺とミオンのやり取りを微笑みながら見ていた。

「お前ら、後でお仕置きだからな覚悟しとけ」

「「えぇー!!」」

「『えぇー!!』じゃない。俺をはずかしめた罰だ」

「パパ、ミオンもやるー!」

ミオンは腕を高く振り上げる。

「ミオンもやるのか? だが、キツイぞ」

「それでもやるの!」

「分かった。だけど、無理はするなよ」

「うん!」

「よし、じゃあみんなで家に帰るぞ」

俺はミオンと手を繋ぎ家に向けて歩き出した。

ルビーとエメラは俺たちの少し後ろで笑いながら、後を追うのだった。




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