姉妹の強さ
だけど、今が好機だ。
今なら、あのルイスとかいう奴の首を取れる。
私は、メイドの注意が男たちに向いている隙に、ルイスとの距離を詰める。
そして、ルイスの背後に回り、今ある残りの全ての魔力を使いルイスの首に向けて、ナイフの一撃を入れる。
「死ねえぇぇぇぇ!!」
ガキンッ!
「……えっ?」
そんな素っ頓狂な声を出してしまう。
だって、だって私の……全力の一撃は──
「……あり……えない……」
私は、そう呟かずにはいられなかった。
「刃が、通ら……ない……」
ルイスの首を切り裂くはずのナイフの刃がまったくもって通らなかったのだ。
「爪楊枝さえ切れないとは──この程度か?」
なんと首を切り裂かれる瞬間にナイフの先端に爪楊枝を挟んで、防いでいたのだ。
「チッ!」
私は即座にジャンプし体を反りながら宙返りをして距離を取る。
「愚かだなあ〜」
「えっ──」
声が聞こえたかと思うと何故か私の背後に奴がいた。
「ハアアァァァッァ!!」
私は瞬時に回し蹴りを繰り出した。
「──弱いな」
私の回し蹴りを片手で止めていた。
「嘘ッ!?」
私の得意技の回し蹴りを受けて耐えてる奴なんて──
「今度はこっちの番だな」
「えっ──。ガハッ!!」
私は裏拳を腹に叩き込まれた。
「いい鳴き声だ。だが、足りん」
私は反撃の隙をあたえてもらえず、攻撃をもろに受け続ける。
「ハァ、ハァ、ハァ」
「これで終わりだ」
「────ッ!!」
瞬きする間もなく奴に距離を詰められた。
そしてその腕が私のみぞおちに到達する──
カキンッ!!
「よくもまあ、私の妹をイジメてくれたな〜!!」
「姉さん!」
奴の放った腕を姉さんがギリギリのところで止めていた。
「ほう、中々やるなぁ」
奴は感心した様子で言う。
「だから、やめろと言ったんだよ。本当にバカな妹だ」
姉さんはそう笑って──
「ハアァァァッ!!」
奴の腕を力で押し返す。
「よっと!」
そして奴は初めて後ろに下がった。
「エメラ、二人で力を合わせて奴を倒すよ」
「で、でも姉さん。アイツは強さが規格外だよ?!」
「なーに、白けた面してんだよ」
姉さんは笑っていた。でも、全身が震えていた。
「私たちは、何度も絶望的状況を乗り越えて来ただろ!」
「──ッ!!」
そうだ、そうだった。
「姉さん、ありがと。おかげで活が入ったよ」
「ふんっ」
「これが姉妹の絆ってやつか?」
「あぁ、そうだよ」
数秒の沈黙が流れ、奴は口を開く。
「なら、この絶望的状況から抗ってみろ!」
「「見せてやるよ! 私たちの闘い方ってやつをよ!!」」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺と姉妹たちとの間に沈黙が流れた。
「ハァァァァッ!!」
雨が降る中、エメラは先に沈黙を破って動いた。
エメラは姿勢を低くして、俺の間合いに入り込む。
「真正面からの勝負か、面白い!」
俺は、胸の鼓動が高鳴ってワクワクしていた。
しかし、それは思いもよらぬ形である意味、裏切られるのだった。
「くらえっ!」
「何っ!?」
エメラが俺の付近に出来た水溜りの水を足で蹴り飛ばしかけてきたのだ。
俺は少しばかり驚いてしまい、目を瞑ってしまった。
「オラアァァァッ!!」
エメラが作った俺の隙を見逃さずにエメラの姉は手に持ったナイフで、連続攻撃を繰り出す。
なるほどな。エメラは元から俺と真正面からやりあうつもりはなく、これを狙っていたのか。




