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 負けたから何だ?

「お前は、諦めて逃げるのか?」

突然、そんな声が聞こえた。

私とエメラは即座に後ろを振り返ると、建物の角から少年とメイドが現れた。

「もう一度問う。お前は、諦めて逃げるただの臆病者おくびょうものか?」

「それは、違う」

「何が違うのか、なら今ここで、この状況を説明してみろ!」

「…………」

「──ほらな」

「姉さんは、臆病者なんかじゃない! 誇り高き戦士だ!」

エメラは、私に対して少年が放った言葉に対して言い返す。

「なら、その誇り高き戦士様が相手に負けた程度で、安々と要求をんじまってるのか。その説明をしてもらいたいな?」

少年は私に何故だと聞いてくる。

「それは……負けたからだ……それ以外に理由が必要か!」

私は、少年に声を荒げて言う。

「負けたから相手に従うか……それがお前の答えなのか……」

少年は少し考える素振りをしてから、口を開いた。

「確かに、それも一つの手段だな」

「なら──」

「それは、実に滑稽こっけいだ!」

突然、少年は私に向かって大きな声で笑いながら言う。

「姉さんのどこが滑稽なんだ!」

「あぁ、滑稽だとも。そんな雑魚相手に負けて、頭を下げて、自分たちが強いと思い上がって、挙句の果てに『どうか、妹にだけは〜』とかほざいている奴のどこが滑稽じゃないか教えてもらいたいもんだな」

少年がそう言うと、奥にいる男たちの殺気が

「貴様アァァァァ!!」

「エメラ、止めろ!」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「お前は、諦めて逃げるのか?」

俺は、男たちに無惨むざんにも負けてしまった赤髪の少女に問う。

「もう一度問う。お前は、諦めて逃げるただの臆病者おくびょうものか?」

赤髪の少女が何も言わないので、再度問う。

「…………」

赤髪の少女は沈黙した。

「──ほらな、やっぱり臆──」

「姉さんは、臆病者なんかじゃない! 誇り高き戦士だ!」

緑髪の少女が俺の言葉を遮る。

確か、赤髪の少女にエメラと呼ばれていたな。

「なら、その誇り高き戦士様が相手に負けた程度で、安々と要求をんじまってるのか。その説明をしてもらいたいな?」

「それは……負けたからだ……それ以外に理由が必要か!」

赤髪の少女は、声を振り絞り声を荒げて言う。

「負けたから相手に従うか……それがお前の答えなのか……」

俺は、考える素振りをして声を発する。

「確かに、それも一つの手段だな」

「なら──」

「それは、実に滑稽こっけいだ!」

赤髪の少女に俺は笑って言ってやった。

よっしゃあぁぁぁぁ!! 言ってやったぞおぉぉぉぉ!!

相手に言ってやりたいセリフがまさかこんなところで言えるなんて、これは感謝しないとな。

「姉さんのどこが滑稽なんだ!」

俺の気分が最高潮に達しているときにエメラが口を挟んできた。

「姉さんのどこが滑稽なんだ!」

「あぁ、滑稽だとも。そんな雑魚相手に負けて、頭を下げて、自分たちが強いと思い上がって、挙句の果てに『どうか、妹にだけは〜』とかほざいている奴のどこが滑稽じゃないか、教えてもらいたいもんだな」

俺は、鼻で笑ってやった。

おかしいな、何で奥の男たちは殺気にすらならない殺気を俺に飛ばしているんだ?


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆


「姉さんに対して言ったことを謝れー!」

私ことエメラは、姉さんを侮辱ぶしょくした少年を殺すため、壁などを使って距離を詰める。

「ハアァァァーー!!」

私は、少年の首元目がけてナイフを振り被る。

しかし、少年に届くことは無かった。

ガキンッ!

「────っ?!」

振り被ったナイフの刃先が何かにはばまれたのだ。

「ルイス様には、指一本触れさせません」

少年の側にいたメイドが両腕で私の攻撃を受け止めたのだ。

「チッ!」

私は、舌打ちをし、後方に向かって二回体をひねりながら宙返りをして距離を取る。

「さっきの感触は……。お前、ただのメイドではないな」

「私は、ルイス様のアンドロイドメイドで御座います」

「道理で堅いわけだ」

私は、強気なことを言って相手に悟られないようにしてるが、流石にマズいなこれは。

この弱体化の雨の中、奥にはアイツら、こっちにはアンドロイドメイド。全く、最悪の状況だよ。

命を投げ出して、こっちを片付けたとしても奥にいる奴らが疲弊ひへいしきっているところを狙わないはずがない。

「ベルファスト、アイツらを片付けろ」

「ルイス様のおおせのままに」

ベルファストと呼ばれたメイドは、こちらに、物凄いスピードで向かってきていた。

私は、反射的に目を閉じてしまった。

(──や、やられる!!)

私は死の覚悟を決めた──のだが、一向にメイドからの攻撃がこないことに、困惑した。

「ギャアアアアア!」

私は目を開き、声が聞こえた方へと視線を向ける。

すると、メイドが男たちを蹂躙じゅうりんしていた。

「や、やめろオォォォォ!!」

男たちは、あのメイドに手も足も出ないのだ。

これは、もはや戦いというより一方的な暴力だ。

だけど、今が好機だ。

今なら、あのルイスとかいう奴の首を取れる。

私は、メイドの注意が男たちに向いている隙に、ルイスとの距離を詰める。

そして、ルイスの背後に回り、今ある残りの全ての魔力を使いルイスの首に向けて、ナイフの一撃を入れる。

「死ねえぇぇぇぇ!!」


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