一人だけ別ゲー・プレイスタイル
VRMMOではありません。
VRMOです。
しかも恋愛を主体にしたゲームとしては珍しい、対戦型。
無いわけじゃ無いんですよね。
実際に発売されたから。 売れなかったけど。
※容姿は都合により、特定キャラ以外はカットされております。
「よし、今回は…………っと」
ここはとある没入型VRゲームの中。
今時のゲームは大体がVR。
しかもフルダイブが主流。
その中でも基本となるのは大規模多人数同時参加型オンラインと省略されるタイプ。
「ゲームの世界に入り込めるのだから、第2の現実みたく沢山の人と同時に遊びたい」と思っているのか、探さずとも目につくのがこの形式。
だが俺は、少しひねくれものである。 何となくだが、MMOを避けたがる。
…………軽いコミュ障と言われても否定は出来ないが、あえて違うと否定しよう。
それで最近やっているのがコレ。
“学院に咲き乱れる恋の花達”とか言う名前のセンスを疑うゲーム。
ジャンルはMO式の中世風ファンタジー恋愛ゲームだ。
1~8人向け。
用意されたキャラか、創ったオリジナルキャラで学生になり、1年の間にだれかと恋仲になるのを目指す。
ゲームの範囲は、学院がある王都とその周辺。 草原、草原の中の花畑、遺跡、森、森の中の湖、海岸。 そんなのが外の狭い範囲にみっちり。
チーム分けとして、男女別に最大4人まで入れる。
なお男ばかり4人でプレイ開始とか、偏っても構わない。
プレイ途中にやむなく退室する場合は、退室者かルーム主がプレイヤーのいなくなったキャラクターを代わりに操るAIの行動指針を設定する。
プレイ人数が足らなくても、その分をAIが操作するキャラとして選んで補完しても良いし、そう言った機能を使わず対戦しない対戦ゲームとしてソロプレイも可能。
機械側が操作する攻略対象は、プレイ開始直前にランダムで男女それぞれ20人の中から選定されて、男女共に6人ずつ。
用意されたキャラが攻略対象でもあるので、プレイヤーキャラとして使用された場合には、選定からはずれる。
ちなみにランダム選定でなく、ルームを用意したプレイヤーが6人ずつ選ぶことも出来る。
午前・午後の授業で科目を選択してステータス値を伸ばし、昼休憩や放課後、休日は午前・午後・夕方で自由行動。
1年間と言っても時間圧縮技術によって、1プレイは実時間で2時間ほど。
授業フェイズは選択したら、すぐにステータス値変化処理を済ませて自由行動フェイズへ移るテンポ重視設計。
有電ながらも、新しい形のTRPGと言われる事も。
ステータスは行動判定での補正。
恋愛ゲームだがほぼ自由。
ハーレムを目指すもよし、一途もよし、同性を攻略したってOK。
攻略キャラと恋愛せず、友情だけ育んで親友エンドも可能。
取り合い・妨害・ぼくが先に好きだったのに・NTRも大歓迎とか言う、狂気っぷり。
だがしかし全年齢向けゲームなので、性表現関係は一切無し。
一応として上記で書かれた胸糞と呼ばれる行為をどこまでやってのいいか、マッチング後のプレイ開始前に相談して決めるよう、運営は強く推奨している。
一途なプレイで短期間攻略できたと安心できず、期日まで横から奪われないよう最後まで気を抜けない。
なんならプレイヤーが他のプレイヤー攻略を始めてもいい。
プレイヤー間で決まった日取りまでひたすらステータス値を高めて、ケンカして頂点を決める馬鹿な遊びも問題なし。
一部で有名なお馬鹿プレイの例としては、攻略対象を一人のみにして誰が最終的にそのキャラを攻略したか争うレース。
……これは同性キャラで友情ムーヴしていたプレイヤーが、異性からの醜いアピール合戦に疲れた攻略対象を、横から「同性も良いものよ」と横取りするプレイが最強と判明。
後に同条件でやった際はプレイヤーが女キャラばかりとなって、結局醜いアピール合戦となったが、そのプレイ内容はネットへ流れて百合ハーレム動画として今日も拝まれている。
他にも同性プレイヤーキャラ達ばかりで攻略対象の目の前にてワチャワチャ楽しみ、イケナイ思考へ堕とす腐りプレイ。
素行が悪い攻略対象に注意を続け、真面目な学生へ更正させる自主風紀委員長プレイ。
プレイヤーが恋愛するのではなく、攻略対象同士を恋人にする主人公の友達プレイ。
そこから派生して、プレイヤー全員で全攻略対象間の理想のカップルを作るべく、暗躍する秘密結社プレイとか。
逆にお互いの理想のカップル作りを妨害し合い、主張がぶつかるカップリングバトルが始まったり。
悪役令嬢キャラとヒロインっぽいキャラを創り、勝手に乙女ゲープレイ。
…………亜流として、女プレイヤーキャラ4人全員で悪役令嬢プレイ用のキャラを作ってしまい、目的を見失って同性攻略対象キャラ全員と友達になってお茶会ばかりしていたり。
ただただ他人を観察する出歯亀プレイなんてのも。
――――これらは大抵、マッチング済みのルームで話し合ってどんな感じで遊ぶかを決める。
文句が出ないようにルーム内全プレイヤーで話し合ってからプレイ開始するか、出たとこ勝負のガチ●コプレイか。
まあマッチング後即プレイ開始のせっかちさん設定だとガチ●コ以外無いのだが……。
そりゃあもう様々な遊び方が出来ると“極”一部で大好評な、このゲーム。
プレイヤーの行動に影響を受けて、全てのノンプレイヤーキャラクターが行動を変える、高度な人工知能も積んでいて飽きも遅い。
そこで俺がオンラインでマッチングして、今回遊ぶと決めたプレイスタイルは…………。
~~~~~~
「お? プレイヤーさん、今日は何が御入り用で?」
オリジナルキャラで商人プレイだ。
「お? ローズヒップとハイビスカスのブレンドハーブティーかい? ってー事は、狙いは【司書志望】の……っとと。 すみませんね」
プレイ方法は簡単。
みんなが目当ての攻略対象と顔見知りから友達へランクアップすべく簡単なおしゃべりで好感度をヒィコラ稼いでいる間に、俺もヒィコラ金を稼ぎ、ステータス成長補正アイテムや攻略対象が好むアイテムをメインに店から仕入れる。
「知ってますかい? あの【オレ様】攻略対象キャラを使っているプレイヤーさんも、あなたと同じ子を狙っているとか。 お得意さんのあなただから、コッソリ教えているんですよ?」
そしてこうやってライバルプレイヤーを教えて焚き付けて、混戦する模様を見て楽しむ!
うへへ、絡まれた【オレ様】君が、さっきのお客の襟首を掴み上げてる。
おーおー、殴り合い一歩手前の空気だ。 いいぞー、もっとやれー。
近くで話に置いていかれた【司書志望】の子が、暴力的な空気に思いっきり引いて……無いだと!? 平然としてるなんて信じられん!!
あれか? 「私のために争わないで」とか妄想しだして、ヒロイン気分なのか!? どチクショウっ!!
………………いやいや? よく見ると顔がすこし赤くなってる?
ってー事は男同士の絡みで、ヘンな妄想を爆発させてる?
よっしゃ良いぞ! 誤解の大暴走で攻略難度が上がった!!
へいプレイヤーども、苦しめ~もっと苦しむんだ~(悪い顔)
……え? 商人プレイだから、店で買うより高いだろうに、客がいるのか?
いるんだよ。 特に平日の昼休憩とか。
とっさに目当ての品を扱ってる店へ行けないタイミングが主でね? そんな時が商売時。
あとは休日。 街中をふらついたり、街の外をふらついていると、同じ理由で声をかけられる。
他には買い物ついでに、プレイヤーやNPCの情報や動向を訊かれたり。
それでかき回され、荒れ狂う人間模様。
これの観察がまた、面白いんだよなぁ。 うひひひ……!
「まいどー」
そんな日々が過ぎ、そろそろゲーム終了が近付いてきた、ある日。
相も変わらず滅茶苦茶な人間模様にすべく誘導して、楽しんでいた。
過去一番で上手いプレイが出来ていると会心のプレイで満足していたら、思わぬキャラがやって来た。
「ちょっと良いかしら?」
女キャラに声をかけられ、その人物を見るが全く見覚えがない。
一目見た印象は、ただただ鋭い。
黒髪パッツンでストレートのスーパーロング、切れ長な目付きと細いアゴ。
隙のないビシッとした着こなしをした制服。
身長は高く、実にモデル体型の鋭い美人。
そしてこの瞬間に表示され、頭上に輝く判別アイコンは、NPCの攻略対象。
プレイヤーが創ったキャラなら何度も見るが、NPCの攻略対象とするなら、こんなキャラは本当に知らねぇ。
「あなた、ずいぶん良い性格してるわね?」
俺が言葉を失っている間に、またセリフが飛んできた。
もちろんその語調は、鋭い。
「それに人を口先で転がす知能。 あなたが欲しくなってしまったわ」
「…………は?」
この不足の事態に俺が言えたのは、そんな間抜けた言葉のみ。
「ふふふ。 そのお馬鹿な顔も面白くて良いわ。 やはり私のモノになりなさい」
「…………………………は?」
口許に指を当てて妖しく笑う彼女の姿を見て、俺の頭はよりサボる方向へ。
「正式な婚約の書状を、あとで送るわ」
これを言い残し、颯爽とした足取りで去る美人。
と同時に、頭へひびくアナウンス。
《あなたは 【影の王女(隠し攻略対象)】 と婚約しました !》
「は? は?」
なんだこれ、どんな超展開だよ!?
蛇足
プレイヤーのオリジナルキャラ
事前にキャラメイクして、登録されたキャラの事。
プレイ前に肩書きの設定をする。
平民・貴族子女・貴族庶子が基本で、貴族子女には養子かどうかや隣国の~を付けるかが選べる。
更にオプションとして、どんな貴族か(貧乏とか一大農地持ちとか領地無しの城勤めとか)を選べる。
肩書きにより、攻略対象との関係や難易度が変わる。
名前
NPC及びプレイヤーが使用キャラとして選んだ攻略対象はプレイごとにランダムで名前が変わるので、その内アナウンスと同じ特徴で呼ぶようになる。
NPC攻略対象
名前はランダムでも、基本的な性格やキャラ背景は変わらない。
それなのに変わる場合の原因は、プレイヤー達と交流しはじめて受ける影響から。
キャラの種類は様々。 先輩・後輩・同級生。 生徒会役員・不良・教員。 王都の看板娘・未亡人・冒険者。 近くの村から来る物売り・花売り・旅芸人。
色々いるけど、1回のゲームで出てくるNPC攻略対象は、男女それぞれで6人まで。
商人プレイ
最初はプレイヤー間で金品のやり取りを始めるが、気が付くとその便利さに気付いた(攻略対象・モブ問わず)NPCも利用しだす。
NPCは最初に隠れて食べられるおやつを買っていく事が多いが、そうでない物を買う事も稀によくある。
他人のステータス値を下げる妨害アイテムをこっそり買っていく、明るいヒロイン然としたNPCの攻略対象がいたりして、意外な顔を見せたりする。
NPCの攻略対象が買っていく物の傾向で、好みの把握ができる。
NPCの好みはプレイヤーとの交流でよく変わる。 なのでプレイヤーはその変化を知るためにも、商人プレイヤーを利用する。
なおこの学院は、学食の食堂はあっても、購買はない。
…………購買が無い理由? 公的な需要が無いから。
平民から王族まで。 立場が違えば使う物の値段が変わる。
客層の幅が広すぎて、商品を揃えて儲けられる筋が見えない。
貴族なんかは身の安全を考えれば、御用商人が用意した物とか、信用できる物じゃないと怖くて使えない。 つまり購買で買わない。
平民では使える金額や学生としての絶対数が少ないから、仕入れても買ってくれるか分からない。
でも、裏取引みたくプレイヤー間でこっそり商売を繰り返し、その様子から信用性が生まれて需要が生まれる。
隠し攻略対象
6人ずつしか出ないと言ったが、これは例外。
特殊なプレイスタイルをしていると、現れる可能性がある。
今回みたいに人の心をもてあそぶプレイスタイルだったり、あえて孤高の番長プレイだったり。
ゲームの開発は、ゲーム終了間際までさびしい学院生活を送っている人への救済目的で用意したと言っていたが、真実は不明。
プレイヤーからは「面白い遊び方をしてくれてありがとう!」的なものではないかと、掲示板で囁かれている。