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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
3章 英雄の条件
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エピローグ

 翌日、クリト達には依頼達成の報酬として、エインセルの技術の粋を集めた義体なり装具なりを整えた。


 まずは、トーマに対して義体を準備した。万能の魔女のホムンクルスのように魂に馴染み最終的にはヒトと変わらなくしてあげたい。しかしすでにかなり魂と馴染んででしまっているサナのホムンクルスではレシピの解析まではできなかった。ただ幸運にもトーマはもともと人間だ。さらに、インウディア(精霊スライム)の核だった金属も持っていた。そのため、なるべく魂の形に寄り添うように柔軟な義体を完成させた。

 ただ、トーマにはケガをする前の自分を強くイメージさせたのもあり、本来の年齢よりも少々若返ってしまったが。結果として見た目的にはユーナと同年代になったので、ユーナは非常に喜んでいた。


 そして、ユーナには精霊を送ろうと考えていた。トーマがユーナの腕から離れたこともあり、少しガンレッドを動かしにくくなっていた。相性を図るためにユーナに波長を合わせているとふわりと精霊が寄ってきた。それは、人間界ではまず観測されない雷の精霊だった。

 なんでも、アケディアを止めてくれたことに感謝したエルピス(アケディアの主神)が眷属を遣わせてくれたらしい。

 ユーナは自分には火の才能が少しだけしかないかと思っていたが、実は雷の才能があったのだ。

 もっともそれに気が付かないは無理はない。雷の魔術は構成が難しく初級魔術に類するような構築式がほぼないので田舎町ではまず見ない属性魔法に加え、エルピスを祭る神殿は予知も司るため王家に囲われている。そのためエルピスの名は知られていても、庶民には縁遠い存在だったのだ。

 ユーナと雷の精霊との関係はまだ真名までは交わしていないが、相性は悪くないようだ。なにせ、すでに言語レベルの意思の疎通ができているらしい。精霊は契約にあたり色々と注文をつけているらしく、なかなか高飛車なようだ。それもユーナが対応できるギリギリのラインを攻めてくるらしく、歯ぎしりしながらユーナは契約を交わした。ただ、その契約対価の内容はどうしても教えてくれなかったが。なので、エインセルはガントレットに玉を組み込み雷の精霊の居心地の良いようにすることにした。


 クリトには太刀を送った。

 天羽々斬の剣はもともとは怠惰の精霊(アケディア)をも飲み込んだ強力な魔剣だったが、真なる力を解放した草薙の剣により折れてしまっている。しかしクリトは二つ名の由来でもある魔刃の構築が出来る。なので、エインセルは魔剣の核に世界樹の精気と種々の薬草、そして精霊たちの魔素を強く溶け込ませた朝露を組み込んだ。これにより、非常に効率よく討伐による魔素を集めることができるようになるのだった。サナに差を着けられていたクリトは破顔し、なんどもエインセルに礼を言っていた。


 そしてチセ。チセにも義体を、、、とおもったが、ユーナを筆頭に全力で止められた。曰く、世間様に解き放っては申し訳がたたないとか。

 、、、万能の魔女はいったい何の精霊をどう定義したのか。非常に気になったが、エインセルはチセとも交流をするうちに納得をした。うん、あれは、そのあれだ。

 なので、チセには共有感覚を設定した。もともと、チセはサナの義体を操れていた。エルフとしての素質だけなら問題はない。今回も魔王としてのクリト封印をしたり、結界の解析をしたりと陰ながら支えていたのはチセであり、皆の仲間であった彼女に女王としてはなにか報いる必要があった。幸いにもチセは義体への拘りはほぼなかった。なので、共有感覚の提案は、“おいしいものを色々と味わってみたい!”“むしろ、専用義体の場合は口が一つだが、共有の場合はみんなの食べてるものが味わえる!お得!!”と俄然乗り気だったため、皆は顔を見合わせほっとした。布教は免れたと。そして、ちょいちょいチセが解き放たれた結果が出てしまっているグランタイズ王国に思いを馳せた。まぁ、楽しそうだったし、済んだことだし。無かったことにしよう。いや、元々あぁだったんだ。そしてこの話は誰も触れない。封印されたのだ。


 最後にサナには世界樹の枝から作った腕輪を作った。世界樹は“(ことわり)”の一部である。サナはある意味“草薙の剣”という理に縛られている為に、包丁で大根を切るのですらうまくいかない。全く切れず大根を粉砕するか、最近ではその下の俎板(まないた)どころか調理台や向こうの壁までまとめて切断するか。その“理”を中和するために、世界樹の腕輪を送った。

 始めて切った胡瓜の漬物に涙を流しながら感動をしていたサナを見たときは、エインセルが正直軽くひいたのは内緒だ。

 サナは、明らかに変わった。龍玉を取り込み、アケディアを倒し、天羽々斬をもつクリト(魔王)も退けた。またこの街にきてからだけでも孤児院をはじめ、様々なヒトとも交流した。

 その結果、大量の魔素と感情を集めていたサナは表情やしぐさが|明らかに豊かになり、また、痛みや味覚、嗅覚などもヒトの感じるそれに近づいているようだった。もっとも、内面をもともと知っているユーナ達からすれば、それらは微々たる変化にしか感じられなかったが。


 こうして報酬を(たま)うとエインセルはユーナ達に今後の予定について確認をした。


「えーっと、とりあえず、私はトーマをヒト化させるって目標は達成したから、あとはクリト達に付いていくよ。トーマもそれでいいよね?」


「そうですね。この大恩に報いるためにも、クリトさん達のフォローをしませんとね。」


 目線を交わしながら、まだ慣れていないのか少々頬を赤く染めている。甘酸っぱい空気満載である。


「なら、しばらくはまた魔物狩りしつつ、ギルドを回るかなぁ。感謝の感情も集めないといけないし。」


 むむむと眉間にしわを寄せるクリト。いかつい体躯だが、妙に庇護欲をそそる。


「そうじゃな。この辺りのめぼしい魔物は狩ったしの。次は、あー

「ゲーラメス帝国ですかね。炎と戦を司るクラトス様を祭る国で、武に重きを置く(脳まで筋肉な)国ですね。」


 サナの言葉をトーマが繋げるが聞こえないはずの副音声にどこか少し黒さを感じる。しかし、爽やかイケメンスマイルなトーマに対してエインセルはそれを飲み込んで微笑んでおいた。


「ならば、ドワーフの武器職人、ランデルを訪ねてみてください。きっと力になってくれますよ?」


 そうして、彼らは次の冒険へと旅立っていった。まだまだ冒険はあるかもしれないけれどなにせ、やっとトーマの肉体を取り戻せたのだから。ここからは、のんびりと、討伐や依頼をこなしていくのだろう。


 こうして万能の魔女から始まり、ユーナ達と紡いだサナとクリトの冒険の話はこれで終幕を迎えた


 





 季節は(めぐ)り熱い夏を迎えていた。




 エインセルは久々に街におりてきた。

 そして、八百屋に並ぶ少し前までは苦手だった赤いトマトを見て、あの日のクリト達との出会いを思い出す。

 それなりに長い時間を過ごしたアケディアからの願い。

 “英雄を探してくれ”

 英雄とは、、、一般的に考えると、人知を超えた結果を出した(ほまれ)高きもの。

 今思えばグランタイズ王国を救ったクリト達はまさに英雄と呼ぶにふさわしい実績を持っていた。

 ガランが見つけてくれた、“英雄の弟子”は本当の英雄だったのだ。


 エルフ達で育てた薬草や香草をギルドに納品し、数枚の服とちょっとした嗜好品、、ちょっと強めのお酒とか菓子類を買って町を出た。

 蒼く抜ける空と真っ白な雲をみて、クリト達もどこかで元気にしているだろうか、と少しだけ付いていかなかったことを悔やみつつ、あの騒がしい連中を思い出す。


「そりゃね、私は魔術も得意だし、それなりに強いから旅についていってもお荷物どころかむしろ率先して活躍しちゃうんだろうけど、エルフの女王としてというか、義体を作れるのはこの世界だと私だけだし?わざわざ大陸を超えて、下手すれば召還されてきた精霊とかがわざわざ訪ねてきたときに不在とかだと、申し訳ないし?世界樹ってここにしかなさそうだから、まぁ、離れるのもアレなのよね。」


 激しめの独り言を呟きながらエルフの里に戻ると、ずーんとした影を背負ったユーナと世界樹の脇で草を食むりっぱな馬が居た。


「おう!久しぶりじゃな!」


 その向こうから快活にサナが挨拶をすると、となりのクリトもぺこりと頭を下げる。

 、、、どうやらクリトはまた難儀なキャラになっていそうである。


「ううう、、エ゛イ゛ン゛セ゛ル゛さ゛ん゛~~」


 泣きつくユーナの話を聞くに、たまたま見かけた黒骨騎馬を狩ることになった際に、以前はまったく適わなかったトーマがリベンジをしたいと。自らが精霊と化したことで、強化された魔術をつかい、今度は逆に圧倒した。それがいかに格好よかったかをユーナは熱く、熱く語った。そして、次の瞬間また一気にテンションが下がり、、、そこからはサナが語った。


 どうやら、トーマの魂魄には一時期取り込まれていた黒骨騎馬の影響が残っていたようで。黒骨騎馬の魔素を吸収すると、身体が馬へとなってしまった。どうやら魂の形に柔軟に対応させた義体の特性が裏面に出たようだ。アンデット状態ではなく、ちゃんと生きた状態の馬であったことはせめてもの幸運だった。


「な゛ん゛と゛か゛し゛て゛く゛だ゛さ゛い゛~」


 泣きつかれてはいるももの、すでにトーマの魂はそれなりに義体に馴染んでしまっている。今更義体の交換は難しかった。


「チセもこのようなことは知らん、わからんとのことでの。急遽エルフの女王(義体職人)であるお主を頼らせてもらったというわけじゃよ」


 やれやれ、とエインセルは肩をすくめる。

 アケディアが居たころは、ずっと同じ時間が流れて、平和だった。

 それなのに半魔物化した義体を纏う半精霊を人間にしろって?そんなの考えたこともなかったよ!!

 エインセルの平和はまだ来ないらしい。


 そしてこれから始まるドタバタの日常はまた別の物語。

 

もしかしたら、この後もう少しだけ、蛇足があるかも?


次の物語りは

“転生特典で大賢者!、、、え?そっち?”

を連載化する予定です。この物語が面白かった方はそちらもご覧ください。



物語りとしては、まだまだ続けられるかもしれませんが、大精霊達とクリトが交わした盟約とか回収していない伏線などまで書こうとするとたぶんグダグダにしかならないので。ここで一度筆をおかせていただきました。

次作も完結と、そしてもう少し評価を集められるように精進したく思います。

こんごとも、温かく見守ってやってください。


最後に、ここまで人気がなくひっそりとしている作品を見つけていただき、読んでいただきありがとうございました!

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