表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
3章 英雄の条件
37/42

サナと魔人

「え、エルフって、あの、、?」


「ククク。然り。精霊と共にあると言われる伝説の一族。一部の愚かな者が友誼(ゆうぎ)を結んだと(うそぶ)くせいで、胡乱な存在となっては居るが、各地にて様々な影響を与えて来た、極少数の民族よ。なぜ、そうなのかは、恐らく、人型のエルフがほぼ居ないからだと、、先程確信したわい。」


「、、、本当に、良くわかるわね。鳥の子達もエルフだとわかっていた様だし。見分けのコツを聞いても?」


「ククク。()()()()()()()なぞ、貴殿ら以外では、ほぼ居らんのでな。森の民の話と合わせれば、推測がつくわ。

 してな、ユーナよ。森の女王の加護とは、要するに精霊との契約よ。エルフは基本的に精霊と非常に相性が良いいらしくての、周りに常に複数付いているらしい。その中で適合出来そうな精霊を紹介してくれる、と言う訳だ。余には精霊なぞ見えぬが、結べるなら、非常に貴重ではあるな。」


 そうしているうちに、洞窟の奥の扉へと辿り着く。金属製の重厚で無骨で、巨大な両開きの開戸だ。


「さて。ここを開けたら、引き返す事は認められないわ。ただ、私の存在がエルフだと言いふらさないで欲しいけど、そこはお願いしか出来ないわよね。」


 改めて振り返り、クリト、サナ、ユーナを順に見つめる。


「で、どうしますか?ここを潜り、ターゲットの詳しい情報を聞い、、!」


 サナが無言のまま、ドアを強引に開く。


「、、、魔力では無く、膂力(りょりょく)で強引になんて、、」


 エインセルが、呆然とサナの後姿を見ている。


「奥のアレは、我の獲物だ。」


 扉を開けたサナが毅然とエインセルに言い放った。





 扉の先は、開けた平原で、大きな木が立っている。


「ククク。この山はカルデラであったか。そして、エルフの里としての中央のあの木は、?」


「そう、世界樹(ユグドラシル)よ。

 あの木を害さずに、巣食った魔人を排除して欲しいの。」


「え?まじん、って、あの?」


 ユーナが戸惑いながら指差す先には世界樹の根本で座禅を組む、白髪の美男子がいた。


「えぇ。そうよ。エルフとしての規律を犯し、堕ちた存在。それが魔人。そして、彼の特殊結界で魔法の類は無効化される。つまり、精霊やエルフの天敵ってわけ。そして、その彼からの唯一の交渉が、“英雄を連れてこい”。」


「ククク。それで英雄を探していた訳だな。」


「えぇ。そうよ。彼の目的はよくわからないのだけど、、、。ただ、この平和な時代での英雄では、彼に近づく事さえ出来なかった。もう、この里は限界に近いの。恐らく、貴方達が無理なら、この里はあの魔人ごと廃棄されると思います。」


「ククク。なるほどな。まずは結界の中和か。暫し待たれよ。」


 クリトが結界に触れると、そこから波紋が広がる。


「ふむ。ちと、厄介な。トーマ殿御助力願えぬか?」


 すると、ユーナの腕から焔が吹き上がり、纏まり小さな球になったかと思うと、ふわりと広がり馬の形にまとまった。


 〈結界は、そこまで詳しくは無いのですが、この構築式は見覚えが、、そう、鏡の聖女(インウィディア )の結界と似ていますね。〉


「ククク、やはり異界の構築とな。と、なると、、、」


 クリトとトーマは結界への干渉構築式を議論し始めた。そしてユーナは、足元に釘付けである。

 正確には、ユーナの足元に来て見上げているリスをジーッと見ている。

 ユーナは怖がらせない様に、ゆっくりとしゃがみながら、ポケットから、クッキーを出す。

 リスは首を傾げながら、近づいて来たクッキーを凝視している。ユーナはそれをリスの目の前にゆっくりと置き、手を離してリスを見つめる。

 警戒しながら、クッキーにリスが触った瞬間、ガインと言う鈍い金属音が轟いた。

 それにビクっとしてしまったユーナにビックリしたリスはクッキーを放って逃げてしまった。そして、草むら中から、再びユーナを伺っている。


 軽くため息を付いたユーナが音の発信源、もとい、刀を納刀しつつあるサナをみる。

 サナは、かつて無いほど顔を顰め、再び居合の構えに入る。

 凪の様に深く集中したサナは、一拍後、強く踏み込み、強烈な斬撃を放つ。だが、再び鈍い金属音と共に、その刀の軌道は半ばで留められた。そして、その直後よりまるで舞うかの様な連撃が始まる。刀が弾かれる衝撃の紫電も段々と激しく、また、間隔も狭まる。舞うかの様な連撃は、やがて激しい乱撃となり、そして、唐突に止まる。

 サナは突きの形で止まっていた。腰ダメもしっかりと入り、まるで手本の様な突きの最も力が乗るであろう姿勢で止まっていた。

 サナは、ゆっくりと刀を引くとそれを上段に構えた。ユーナの位置からは、サナの顔は見えない。

「あ゛あ゛ーっ!!」

 絶叫と共に、刀を地面に叩きつけ巨大なクレーターを作ったサナは、肩で息をしている。

 ユーナがおずおずと近づくと、まるで避けるかの様に背を向けて、洞窟の出口へと独り歩き出した。

 避けられた様に感じたユーナは、サナに声をかけられなかった。




 その日、遂にサナは帰って来なかった。




 一週間ほど、トーマとクリトは思考錯誤を行い、複数の魔石と貴重な触媒も用いた構築陣を作りあげた。その準備をユーナも手伝っていると、クリトは不意に顔を上げ、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。


「ククク。いい面構えになったではないか。」


 視線の先を追ったユーナの目に飛び込んできたのは、ボロボロのサナだった。


「!サナ、大丈夫?!」


 走り寄るユーナを手で制したサナは、数日前までには見せた事もない鋭い視線を魔人から外さずにユーナへと語りかけた。


「事後報告となり、済まぬな。暫し頭を冷やしておったわ。

 今度こそ、斬る。」


 そう告げて、再び、結界のすぐ脇に立つと、居合の構えを取る。その構えを見たクリトがトーマへと話しかける。


「ククク。トーマよ、済まぬな。無駄足を踏ませたようだ。」


 その言葉を待たずにその瞬間には、既にサナは刀を振り抜いた姿勢になっていた。


 まるで、ただの素振りだったかの様に辺りは凪いだままだが、サナの目の前には空間に白く輝く筋がある。

 そこに少しヒビが入ったかと思ったら、あっと言う間に結界は崩壊していった。




 結界の崩壊を感じ取ったのか、魔人は目を開く。そしてサナは納刀し、再び居合の構えを取ったと思ったら、その場から消えた。否、消えたかの様な速度と無拍子で魔神へと切り込む。魔人は座ったままではあるものの、いつの間にか抜刀した剣、、、サナの黒刀と似た設えの白刃の太刀で受けていた。

 そして、互いにびくともしない鍔迫り合いの後、サナが一度引き、距離をとる。そして正眼に構えたサナに対して、魔人は八相に構えた。しかし、その表情は真逆である。攻防一体で最も基本的な構えのサナは激情を隠そうともせず。攻撃的な構えの魔人は、凪いだ様な、、先日までのサナの様な整った無表情をしている。

 じりじりと摺足で互いに間合いを詰め、同時に、いや、刹那だけ魔人が早く斬り込む。それをサナは脇へと受け流す。流された剣筋を強引に切り上げ、逆袈裟を仕掛けるも今度はサナが一拍早く、今度は魔人が受けに回る。

 素早く、カウンターを狙うかの様な丁寧なサナの剣と一撃必殺かの様な魔人の豪快な太刀筋。数合の打ち合いを見ていたクリトは、楽しげに嗤った。


「ククク。サナよ、思ったよりやりおるわ。」


 上段からの切り下げを受けて、一瞬の膠着となったサナは、下から魔人を睨みつけると、口からフッと何か、恐らく含み針を吹き出した。


 反射的に顔を逸らした魔人は、一度距離を取ろうとするもその瞬間に足を払われ決定的な隙を晒す。そこに逆手に構えた刀で切り上げるも魔人はギリギリだが、なんとか太刀で受ける。しかし、サナは更に自らの太刀を蹴り上げる事で威力を倍加させ、魔人を洞窟へと続く扉の近くまで吹き飛ばした。更に左手に顕在させた苦無の様な刃物を追い討ちとばかりに投げつける。


「ククク。そうよな、サナの太刀筋はそんな上品なモノではないであろう?だが、、まだ、飢えは満たされぬかものう。」


 崩れた体制から強引に苦無を交わした所に、大上段より振り下ろした豪剣を受けた魔人は、強かに顔面から地面に叩きつけられ、弾みで更に十数メートル弾け飛んだ。

 数回バウンドして、転がり付いた時には既に太刀も手放し、遠目にみても明らかな戦闘不能となっていた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ