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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
3章 英雄の条件
32/42

ギルド登録のお約束

 階段を降りギルド併設の食堂についたら、とりあえずクリトを座らせる。今のクリトは身体がうまく動かせないのだ。まぁ、そのせいで繊細な作業もできず、つまり魔札や薬の調合なども複雑なのは出来ない。もちろん戦闘などはまったく期待でききない。まぁ、今のキャラがアレなのでそもそもどうしようもないのだが。ユーナもそこは受け入れている。仕方がない。なので、まぁ、体はうまく動かせないが、体躯は問題なく力がだせるので、荷物持ちをしてもらっている。収納魔道具があっても、その取り扱いには魔力が必要となる。魔力量も多い今のクリトにはある意味適任である。

 それにしても、今回はどうしようとユーナは頭を抱える。クリトがアレだけど魔力を集めないといけないし、いままでの傾向からして、多少雑魚を刈ったくらいじゃクリトのキャラチェンジは発生しない。もちろん、クリトとチサがいないと、トーマをホムンクルスにすることも出来ないから、置いていくわけにもいかない。もっとも、すでに仲間としてそれなりに絆を感じているから、ユーナがトーマを見捨てるとかはありえないが。まぁ、そんな難しいことはとりあえず横において、ユーナたちは今は久々の肉料理を楽しんだ。



「じゃ、とりあえずギルドの依頼と周りの魔獣とかの情報仕入れてくるね。」


 ユーナは満足するまで食べると先にギルドの掲示板を確認しに行った。

 ふむふむ。この辺はレムオス草が比較的取れると。あとは、品薄なのがラルムンの実ね。ゼーアプル大森林では動物系はボア系がよく取れて、熊、鹿系は要注意。霊峰ピラトゥスは、ゴーレム系と劣地竜系が人気の獲物。採取だと、ハチミツって、これベアビーじゃん!採取じゃなくて討伐じゃん!そりゃ小瓶で銀貨20枚になるよ。

 そんな感じでぶつぶつと常設依頼や討伐依頼、採取依頼などをチェックしていると、陽気だった喧騒に少し剣呑な空気を感じた。


「きゃっ」

 というかわいい声が聞こえたと思ったら、ドンと衝撃を感じたユーナは思わず「うぉっとぉ」と少々おっさんくさい声を出してしまった。

 うむ。乙女にあるまじき反応。ちょっと反省。だれかに見られたかな?と思いながら周りを確認すると、どうやら緑髪の拳士と思われる少女が足元に倒れている。

 どうやら、その少女は突き飛ばされてユーナにぶつかりつつ倒れこんだようだ。


「生意気言ってんじゃねぇぞ?このくそアマがよぉ」

「ちょっと俺たちの酒に付き合えって言っているだけなのに、ちょーっとつめたいんじゃないですかねぇ」


 明らかに酩酊状態の大柄な男3人がニタニタとその少女を見ていた。ユーナは少しイラっとしつつその少女に手を差し伸べた。


「大丈夫ですか?」


 たったの一言。だが、それが酔っ払いの男どもの逆鱗に触れたようだった。


「おう、おう、おう、おうぅ、その娘はこれから俺らと楽しむ予定なんだわ。余計なことしないでくれるかなぁ?おぉん?」


 ユーナは男が妙な節回しで威嚇してきたのを無視する。そして少女が手を取り立ち上がるのを確認しつつ、ユーナは男達と向き合う。


「ここはギルド併設の酒場ですよ。あまり無体なことをすると、ギルドの心象が悪くなりますよ?」


「ああぁぁん?ちょっと顔がいいからって調子にのるなよ?」

「ここらじゃ見ねぇ顔だな。いや、雑魚過ぎて目に入っていなかっただけかぁ?ひゃはははは!」

「だーははは!さっきまで採取とか見てたもんなぁ?きょうは気分がいいからグーパン一発で勘弁してやるぜぇ?」


 さすがにイラっとしてきたユーナがため息をついていると、すぐ脇に不意に気配を感じる。

 すると、やっぱりそこには相変わらず気配が薄いサナがいた。

 サナと二人で男共に向き合い、少女にはもういいから帰りなさいと、この場を離れさせた。


「おおっとぉ?さっきのガキよりもいい感じの女じゃねぇかよ?」

「こういう“くーる”っていうのか、冷めた奴を泣かすのはたまんねぇよなぁ。」

「相変わらずお前は歪んでんなぁ、ま、安心しな?そのあとは俺が優しく慰めてあげるからよぉ。きゃはははは」

「という訳で、小僧はとっとと帰って糞して寝な。」


「ああん?いま、、、なんて言った?」


 ユーナが低い声で雰囲気が急に変わったことでさらにニヤニヤとする男ども。


「そこの女はお前のツレなのか?坊やはかえってママのお


 一番左、、というかたまたまユーナに一番近かった男がユーナの逆鱗に触れるどころか、ぶち抜いた。

 そしてユーナは右の拳で男の頬をぶち抜いた。男はそのまま首が千切れるのでは?という勢いでぶっ飛んだ。


「あのね?私は淑女なの。レディなの。可憐な乙女なのぉ。お分かりかしらぁ?」


 瞳孔が開ききった真っ黒な目(いや、ユーナの瞳の色は黒ではないのでもちろん比喩)で引きつった笑みで男どもを見据える。


「てめぇ、、調子乗ってんじゃねぇぞ?俺らをだれだと思ってんだよ?」


「力ずくのナンパでしか女の子に相手をしてもらえないカス。」


「、、、言ってくれるじゃねぇか!この男女がぁ!」


 ユーナは一瞬目を細めた後、芝居かかった動作でサナへと向き直った。


「、、、サナ!言われてるよ!キレイな顔してても不愛想だと、男だと思われるなんて、、、、かわいそう!でも大丈夫、サナも全然かわいいよ?」


「待て待て待て待て!お前だ、お前!そっちの嬢ちゃんはちゃんとおっぱ


 今度はさらに容赦なく、ユーナは鼻っ柱をぶち抜いた。鼻血ってあんなにどばどばでるんだーと妙な関心をして現実逃避をしてしまうほど血の海が作成されている。


「、、、脂肪の塊に栄養以上の価値を見出すモノに鉄槌を。」


 表情が抜け落ち静かな表情とは打って変わり、その拳を振りぬいた姿勢は荒ぶる闘志に満ちていた。


「おい、さすがにやりすぎだろうよ?自称乙女さんよぉ?」


 さすがに酔いも冷め、冷徹な戦士の目をした三人目は、拳に雷撃をまとわせる。

 一方、ハイライトさんに仕事を放棄されたユーナは殺意の波動に目覚めたかような赤く輝く目(もちろん比喩)で三人目を見返す。そしてユーナの口から牢名主もまっさおなドスの聞いた声が響く。


「貴様も醜美の区別がつかぬ愚物か。可憐な乙女に対して拳を掲げるとは最早救いは齎せぬ。」


 今、この瞬間“少なくとも乙女はたとえ可憐でなくともそんな世紀末覇者のオーラを出していない”と、成り行きを見守っている人たちの心は一つに重なった。だが、そんな突込みを気軽にできる雰囲気ではなく、ユーナは積層型の魔術構築式を組み立てていく。

 そんな雰囲気に飲まれていない者が一人。サナは泰然と最初から居たかのように雷撃をまとう男とユーナの中間にいつの間にか立っていた。そして“キン”と一つの鍔鳴りだけを感じさせた。その抜刀から納刀まで、そして男とユーナへと二度振るわれたその剣筋を把握できたものは、極々一部の上位者のみ。三人目の男は、切られた認識もないまま体にまとっていた雷撃が霧散し、立ったまま白目を向いて気絶をしていた。そして、怯えた目で成り行き見ていたひとり目の男の元に向かうと腰のポーチから魔札を取り出し、男に向けて発動させた。すると殴られて頬の奥で折れていた歯も含め回復した。驚いた眼でサナを見返えしていると、二人目に向かい同じように魔札を発動。三人目は少しだけ背伸びをして、額に拳をこつんと当てると数歩よろけながら意識を取り戻す。

 そして三人に謝意を表すかのうに長めの目礼をしたサナはユーナに向き合うと、鞘に納めたままの刀でべしっと脳天を痛打。


「へごぉし!」


 同じく立ったまま白目をむいていたユーナは(その時点で女子力どころの話でないが)、先ほどと比べればまだ一応は乙女らしい奇声で痛みを主張し涙目でサナを見返す。


「、、、、、」


 サナはじーっとユーナを見る。

 “だけど”、とか、“だって”とかモゴモゴユーナは言っていたが、最後にじっと右手のガントレットをみつめるとしゅんとした表情になり、三人の前に出てくると、ペコリと頭を下げた。


「あの、ごめんなさい。私、あんまりナンパとかされたことなくて。まさかこの街に来た初日にいきなりナンパされて、、怖くて、びっくりしてつい、やりすぎちゃったみたいで、、、。私、心に決めたヒトがいるんです。だから、ごめんなさい。

 それに上位冒険者の方が手加減してくれているのをいいことに、好き勝手暴れてごめんなさい。」


 “いや、お前はナンパしていない。そもそも守備範囲外だ”男たちはそう思っても口には出さない。ボロボロにされたが、一応今は向こうがこちらのメンツを立ててくれているのなら、情けなくともそれに乗るしかない。そして逃がしてくれるなら、とっとと退散するに限る。幸いにもダメージは回復しているので、あの瞬間さえ見られていなければどうとでも言い訳は立つ。


「まぁ、気をつけろ。俺たちは優しいからこれで仕舞にしてやる。

 行くぞ」


 余談だが、通常のケガでは魔札による回復は行わない。回復薬瓶(ポーション)で十分回復するのだ。その違いは回復する速さにある。回復薬瓶(ポーション)での回復は例えば上位のモノで骨折を数分程度で治す。対して回復用の魔札は発動させた瞬間に治癒する。なので、基本的には魔札は回復薬瓶(ポーション)の数倍の値段がかかる。そのため、一瞬が明暗を分けるような戦闘時にしか魔札は使わない。つまり、あんなに安易に魔札を使ったサナ達は、少なくとも資金が潤沢な冒険者だと思われている。なぜかさほど儲からない採取関連などを見ていたかが、謎を呼んでいるが。

 さらに蛇足になるが、魔札を無駄使いしたサナがユーナからこっぴどく叱られて涙目なサナという超激レアなシーンがあったとか、なかったとか。

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