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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
2章 鏡の魔女
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ラウドと王妃

「ラウド。最近は特に頑張っているようですね。」


「母上、、、具合はよくなったのだ?」


「ラウドが頑張っているのに、(わらわ)だけが立ち止まる訳にはいかないでしょう?」


 ティアが居なくなり、王妃は悲しみに泣き暮らし床に伏していた。だが、ラウドが目覚ましく成長して、王太子として信用足る姿を見せている。ラウドとティアの母としても、グランタイズ王妃としてももう立ち止まる訳にはいかないと思ったのだ。


「ここは、ラウドの私室。ならば、妾も母として、この場にいましょう。

 ラウドがここまでに成れたこと、サナもユーナも此度の尽力感謝いたします。」


「いえ、あの、我は特に何もできていないでございます。

 ここに来てからも、料理くらいしかしてないでおじゃります。

 というか、私に出来ることなんて、そんなことか簡単な狩りくらいだし。

 あとは、こうしてたまにラウドとちょっと庶民の話とかをしたりしているだけ、ざます。」


 いきなりの王族登場にユーナはどぎまぎしてしまいよくわからない敬語もどきの言葉使いになっている。

 サナは変わらず窓際で無口なまま泰然と佇んでいる。もしかして、目を開けたまま寝ているのか?ってくらい、微動だにしない。


「十分ですよ。“できる者ができることに尽力する。”

 それが、国としての最も基礎になっているのですから。

 そなた等はこの国の民ですらないのに、ラウドに寄り添い、友となってくれました。

 それがこの結果であり、ティアと離れたラウドに必要なことだったのです。」


 優雅に微笑む王女にユーナが見惚れていると、ラウドがぽつりとつぶやく。


「けど、ラウドは何も出来ていないのだ。

 王として誰よりも前に立たねば、独りで立てねばならないのに。」


 その割れそうなほどに張り詰めたラウドの表情に眉を顰める王妃。


「ラウド。。。

 何を焦っているのですか?

 あなたは立派にやっていますよ。

 母としてはもう少し頼ってほしいと思ってしまっているほどに。」


「母上、、、。

 ラウドは、みんなに頼ってばかりなのだ。

 治水のことも、討伐の事も、支えてくれた文官のアーノルドや冒険者パーティ“暁の蒼”のおかげなのだ。」


「それでよいのです。

 何もかも一人でできるなら、それは独りでいるのと変わりません。

 足りない事を補い合う。支えあうことこそが、大切だと母は思いますよ。」


 優しい、慈しむその微笑みにラウドも母へと戸惑いながらも笑みを向ける。


「あなたのお父様も、宰相のパウルや4人の騎士団長らに支えられてこそなのです。

 東西南北と中央の商業ギルド長とは月に数度は会合を持ちますし、外相やテムロス辺境伯や各国からの外交官が居るからこそ、安寧を保てているのですよ。」


「母上、、、教えてほしいのだ。

 あの魔導具“聖女の鏡”はどのようなモノなのだ?」


「私も詳しくはしりません。

 その詳細な内容は、対となる魔導具“創昆”と共に代々グランタイズの王となる者のみに伝えられているのです。

 王妃となる時に聖女の鏡について少しだけ教えていただきましたが、詳しくは知らされていないのです。」


柘榴石(ガーネット)宮 思政の間」


 ぽつりとサナの声がした。

 振り向くと、ラウドと目が合った。


「サナ?何か言ったのだ?」


「柘榴石宮 思政の間」


 こんどははっきりと聞き取れた。

 サナは組んでいた手をほどき、ラウドと向き合う。


「“改竄(クラッキング)”」


 ラウドは意味を理解し、駆け出した。

 サナは非常に冷徹な時と、なんかおばちゃんみたいな時がある。冷徹な時は魔術や発動前の構築式すら剪断する剣をふるい、朗らかな時は色々と深い情報を与えてくれる。どちらの時も癖が強いが、少なくともラウドはどちらのサナも信頼している。


 ラウドが最初にサナの秘密に触れたのは確か、治水におけるため池をどうするかってことに悩んでいた時だった。その時にサナはラウドにその能力の一部を教えてくれていた。


 ▽  ▽  ▽


「ここは池にしない方がいいわよ?あのね、あまり知られていないけどこの一帯には赤鼬が住んでいるの。ガローセム地方の風土病にガゼム咳があるじゃない?あとガローセム地方といえば、やっぱり亀料理よね。あのコラーゲンたっぷりのお肉はやっぱり美容にいいのよ。特にここのメスレム料理長はスープがお上手でしょう?あの黄金色に澄んだスープはやっぱり芸術だと思うの。そういえば、あそこにかけられているの、あれってギャムセイムの中期の傑作と言われている“馬上の乙女”よね。すごいらしいけど、芸術ってやっぱり難しいわね。きれいに描けていると思うけ」


「ガゼム咳がどうしたのだ?」


「ガゼム咳の特効薬を作るのに赤鼬の魔石があると便利なのよ。やっぱり魔石って便利よね。魔力も込められているし、魔術の構築式も込められているモノがやっぱり多いじゃない?まぁ、それを応用したのが魔札だけど、魔札と違って再充填できるし。充填といったらやっぱりシュークリームとエクレアよね。私ね、やっぱり味はよくわからないけど、あれを食べるときの、みんなの顔、やっぱり好きなのよ。幸せがクリームと一緒にあふれ」

「ガゼム咳と魔石がどういう関係なのだ?」


「あらあらごめんなさいね。あのね、赤鼬の魔石を発動させると割と高温で乾燥した風が出るのよ。その乾燥した熱風が薬草を煎じる際の温度湿度にやっぱり丁度良くて。あれさえあれば特効薬がやっぱり簡単につくれるのよ?たしか、そのレシピは、、、“万能の魔女”が公開していたと思うわよ?

 そうそう、それでね、赤鼬ってやっぱりあまり狩られないから知られていないけど、あそこまでしっかりコロニーになっているのはあの辺りではあそこくらいなの。だから、やっぱり溜池にして全滅させない方がいいわよ?」


「、、、サナは本当になんでも知っているのだ。」


「ラウドはサナの扱いがよくわかってきているわよね」

「あの朗らかな坊ちゃまが、食い気味に会話されている。。。」


 ユーナがうんうんとうなずいている。

 隣のケイトが、マナーがどうとかブツブツ言っている。


「色々と情報を得られるのよ。でも、秘密にしていることは、やっぱりなかなか知れないのよね。」


「秘密にしていること?」


「そう。情報ってね。やっぱり広がってほしいって思いもあるの。だからやっぱり基本的に情報ってみんなのモノなのよ。少なくとも私はそう思って作られているの。でもね、やっぱり秘密もあるの。秘密になるから、やっぱり情報って価値がある場合もあるの。逆にみんなが知っているから大切な情報もあるの。例えばやっぱり“言葉”なんかその一つよね。”皆が知っている記号“という情報だから、非常に便利だし、伝達として役に立つモノなの。だから私はやっぱり文字が大好きなのよ?同じように数字や魔法陣も情報の塊だからやっぱりすごく好きね。もっとも数字も魔法陣も秘密が多くて理解するのが大変だけど、私は外部演算もできるように組まれているから、“解析(ハッキング)”も“分析(アナライズ)”も“改竄(クラッキング)”だってできるのよ?

 でも、秘密って、その秘密の存在をちゃんと知らないとやっぱりできないの。

 たとえば、実際に秘密にしている現場に入るとか、その人やモノや構築式に触れるとかね。」


 ▽  ▽  ▽




 あれからおよそ20日たった。

 唐突に告げられた場所だが、ラウドは納得している。やはり、鏡への手掛かりはそこにあった。柘榴石は始まりの象徴、一番目の象徴でもある。その柘榴石を冠する宮殿はこの城の真中であり、そこにある執務室。


 つまり、


「ラウドか。唐突に何用だ?」


 この国の王の執務室である。

 この執務室は北側に入口、東西両側には大きく壮麗な装飾窓と入り口側に隣室へのドアがあり、南側を背にするように執務机が置かれている。華やかな設えの多いグランタイズ王宮において珍しくシンプルながら重厚なオーク材を基調としたこの部屋はいかにも過去の王達が組み上げた歴史を語るかのように盤石な雰囲気となっている。照明もほかの部屋とちがい、この部屋の照明はシャンデリア系ではなく、シンプルな魔灯となっている。

 最も、日中は窓から太陽が適度に差し込むため、照明が付いた状態をラウドはほぼ初めて見ている。

 南壁にはグランタイズ王国を中心とした地図と、唯一王の好みで入れ替わる数点の絵画。東側の扉は宰相の執務室へとつながり、西側の扉は控室へとつながっている。警備として複数の結界と魔道具が張り渡されている。

 最近はラウドも一部の業務をここで行っているため、王のもと比べれば二回りは小さいが、それなりにしっかりした机と資料棚がラウド用に運び込まれている。


 ラウドは一通り見渡すが、もちろん見慣れたが、なぜか今は違和感を感じている。



読んでいただき、ありがとうございます。


次回嘘予告

僅かな違和感をヒントに答えを導け!

第二章 第7話 「クイズ王に挑戦」

君は運も実力の内であることを痛感する。

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