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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
2章 鏡の魔女
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王子と近衛

「あばばばばばばばば」

 男が急いで駆け寄り、魔法陣を解除する。ラウドも聞き覚えのある声に急いで駆け寄ると、そこには軽く焦げたケイトが、、多分ケイトがひくひくしていた。


「ケイト?」


 ラウドが呼びかけると、やっぱりケイトだったそれはガバっと跳ね起き、ラウドに駆け寄った。そして、一気に術式を展開する。


「『嵐渦』!『遍き、満たし、導け、」


 竜巻がラウドとケイトを守るように包みさらに次の魔術を発動させようとするも、急に竜巻が霧散する。

 そこには、剣を振りぬいたサナの姿があった。


「っく!『集い、暴れろ 嵐壊』!」


「ケイト、待つのだ!」


 略式詠唱にもかかわらず、精度高く描かれた立体魔法陣により高速で発動された魔術がサナに真空の圧縮空間となって襲い掛かる。だが、再び振りぬかれた剣により魔術が掻き消される。


「!まさか、術式の構成を切っている?ありえない!」


「ケイト、聞くのだ!料理が!」


「こうなれば、ラウド坊ちゃまだけでも、」


 バッチーンと音が響き、今度はラウドがその手を振りぬいた。


「もう!ケイト!話を聞くのだ!」


「え、ラウド坊ちゃま。こいつらに攫われたのではないのですか?」


 涙目でお尻を抑えるケイトは珍しくアタフタしている。


「いま、ユーナ達と料理を食べようとしていたのだ!

 食事中に魔術を撃つのは、マナー違反!なのだ!

 ケイトも言っていたのだ!

 それと、坊ちゃまと呼ぶのはダメだと言ったのだ!ラウドはもう赤ちゃんじゃないのだ!」


「いや、あのラウド様、それどころじゃなくて、あの攫われて?」


「あー。ごめんなさい、その、説明をさせてちょうだい。とりあえず、危害を加えるつもりは一切ないから。」


 ラウド以上に戦闘に乗り遅れていたユーナが何とか仲を取り持とうとする。サナは既に剣を収め、男の方も向こうの方で魔法陣を張り直している。術を真正面から潰されたケイトは少しの油断も見せぬように、それでもユーナからの提案を受け入れざるを得なかった。


「わかりました。ですが、術式はステイさせてもらいます。」


 あえて強気にそう宣言し、ケイトは見事な立体魔法陣を複数展開した。


 ケイトも加わり改めて食事が始まった。錬金術で野菜や香辛料の瞬間促成ができるため、野営とは思えない新鮮で豪華な材料。そして、マヨとか呼ばれるなぞの調味料や不思議な窯による調理などで、宮廷魔術師として長らく王級で暮らすケイトとラウドでもなかなか食べたことがないような料理が並んでいる。


「あー、まず説明させてちょうだい。私たちの旅の目的だけど、、」


「ケイト、これ美味しいのだ!こっちはなんなのだ?それも美味しいのだ?」


「ラウド様。すみまんせん、私も初めて食べるものばかりなのです。今度アミーに話を聞いてみましょう。」


 ユーナは、聞いてねぇかもと思いながらも旅の目的を語った。とある魔術を目指していること、その魔術には多くの感情と魔物の魔力が必要なこと。そしてそのために、人々に絶望を与えている魔物を狩っていること。


「それで、この近辺で一番絶望をしていたのがラウドだった。だから、とりあえず、その場から逃がすために、ここへ呼び寄せたんだよ。んで、ラウド何があったの?鏡に姉が食べられたとか、なんとか。」


 ガツガツと一気に食べ終えたらしいケイトは今更ながら取り繕うように口元を優雅に拭うとユーナに顔を向けた。


「それは、王家の問題です。これ以上の干渉は無用です。さ、ラウド様帰りましょう。」


「姉上を助けたいのだ!サナは、サナならあのカガミを切れぬか?」


 口に入っていた唐揚げを急いで飲み込むとラウドはサナをすがるように見上げる。サナは無表情で見返し、口をひらく。


「斬れる」


「なら、姉上をサナが助けてくれるのだな?」


「無理」


「女、軽々しく口を叩くな。

 さ、ラウド様帰りましょう?」


「姉上はどうしたら、助けることができるのだ?」


「あー。チセさんに表に出てきてもらいませんか?このままじゃ話がすすまないよ。私はよくわからないし。」


 ユーナが困った顔でサナを見ている。


「すまないが、これ以上時間はかけるつもりはない。馳走になった。

 さ、ラウド様帰りますよ?」


 男がサナに黒い鋼鈑のようなものを渡す。すると、無表情だったサナの表情が急に和やかなものに変わっていく。その様子をケイトは鋭い目で確認する。


「あらあら。ケイトさん初めまして。えっと、とりあえず、サナと呼んでくださいね」


「残念ながら、呼ぶ機会はなさそうだな。さ、ラウド様帰りましょうね」


「右側のクローゼットの三段目の引き出しの下。それから、やっぱりベッドの下も定番よね。あとは持つべきはやっぱり同志よね。給仕のアミーちゃんかしら?それと紅の貴腐人の新刊はやっぱり来月中頃に発売されるみたいよ。」


「ほんとか?!は?えっと、なんのことだ?私はしらないぞ?」


 明らかに動揺するケイトにサナは畳みかける。


「やっぱり、薔薇も百合もどの世界にもあるものなのね。やっぱり王宮は華やかですものね。カルベネ侯爵とやっぱりリッツィ衛生副長とかは人気よね。あのね、実はあなたたち姉妹も百合界ではやっぱり人気なのよ。先週も守護隊のエルサからスールのお誘いあったじゃない?」


「カルベネの叔父上とリッツィがどうしたのだ?」


 いつも忙しそうな顔をしている叔父(イケボランキング不動の1位)と、医務室に詰めているラウドから見ても可愛い、、その界隈ではショタと呼ばれる人種の名前が急に出てきて、ラウドはきょとんとしている。


「逃げますよ!ラウド様!!」


 なにやら問いたださなくてはならないような情報も聞こえた気がしたが、もはや一刻の猶予もないと判断したケイトは戦略的撤退を選んだ。


「鏡による魔女との契約。王としての資質。そして魔女の名はインウィディア。ケイトはラウドを助けたくないのかしら?」


 サナは違う角度から見逃せない情報を更に放ってきた。


「、、、貴様何者だ?なぜ、どこまで何を知っている?」


 ケイトは目の前の女がただの情報通ではないことを認め、危険人物として再認識した。


「なんでもは知らないわ。知っていることだけ。ふふ、やっぱり言ってみたかったのよ。憧れのセリフっていっぱいあるじゃない?せっかく喋れるんだもの。」


 ニコニコと、サナは読めない笑顔を張り付けている。


「父上は、魔女と言っていた。サナは、姉上を助ける方法を知っているのだ?」


「ラウド、それはやっぱりとても難しいの。でも、難しいってことはやっぱり出来ないってことじゃないの。ラウドはティアお姉さんのために頑張れる?」


「、、、確かに何かを知っているようではある。だが、信用はできない。あれは王家の契約により成り立つ宝具なのだから。それを知っていて、かつこちらが把握していない人物である時点で貴殿は要注意人物だ。」


「あれはやっぱり呪具なのよ。定期的に生贄を要求して、その絶望を喰らい力を貯めるものなの。対の宝玉の創崑によって、なんとか抑え込めてるようだけど。やっぱり危ないわよ?」


 ユーナは、珍しくほとんど脱線しないチセの会話にびっくり、、していなかった。


「貴様の言っていることは代々聖女を務めてきた王家を貶めることにもなる。戯言だと今なら聞き逃してやる。」


「ラウド君は、どう思う?

 王女って、聖女って何だと思う?」


 ユーナは何故か二人の会話がどんどん遠くに感じていた。


「それ以上口を開くな。貴様が何なのか、まだわからないが、ここから先は城で聞かせてもらおう。

 おそいぞ、ライム。」


「仕方ないではないですか。

 私はお姉さま見たく、滑空跳躍はできませんし。ここはトラップが異常に敷かれていましたし。」



 誰か来たようだ。

 だけれど、ユーナは、それに気づく事もなく意識を落としていった。


読んでいただき、ありがとうございます。


次回噓予告

姉妹の勇気が扉を開く!

第二章 第5話 「ふたりはキュープリ!」

君は、日曜朝を追体験する。

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