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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
2章 鏡の魔女
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王子と誘拐犯

 王子が誘拐される少し前。三人の旅人がなにやら揉めていた。


「だから、ダメだって!」


 もっとも声を荒げているのはその中の一人だけだったが。


 〈そうは言っても、これは確実じゃぞ?〉


 無表情で白いシャツに黒いパンツの女は口を動かさない。精霊言語で語っているからだ。


「だけど、万が一空間の先に異物があったら、それに挟まれて大けがなんでしょ?!」


 〈そうじゃな。肉体が持たない可能性が高いからの。

 挟まった部位は吹き飛ぶであろうな。胸だろうと、腹だろうと、頭だろうと。〉


「なら、だめでしょ!」


 〈大丈夫じゃ。我らが目指すのは危機に陥っている者の救出。

 ヒトが居れる空間のすぐ近くなら、おそらく周りにもなにもないじゃろ。〉


「いやいやいや!洞窟とか、魔の森の奥とか!

 割と色々ある場所でのピンチって多いよ?!」


 黄色の髪の華奢な旅人が吠える。まぁ、自分の命がかかっているのだから、当然といえば当然である。


「だから、転移による移動は絶対禁止!恋が成就したのに死にたくない!」


 〈だが、歩いているだけでは、なかなか救える危機に出会うことはほぼないのではないか?

 この国も含め、最近は割と安定しているしの。〉


 彼女の言い分はもっともであった。ダンジョンや竜の聖域など、特殊なところを除けば、少なくともこの国も、周りの諸国も平和なのだ。魔物も町の近辺では、騎士団や冒険者ギルドにより、B級な魔物は見つけ次第殲滅している。一般人が普通に生活できているエリアにそう頻繁に命の危険になるような場面には出くわさない。もっとも、出くわしたら、基本的に即終了である。


 つまり、無計画に歩き回っても遭遇する確率は、落下してきた流れ星が歩いている幼女ポケットにふんわりとINするくらいの確率なのである。


 〈まぁ、仕方ないの。なら、時間はかかるが、別の手段で集めるしかないかの。〉


「別の手段?どんなのよ?」


 〈うむ。魔物を狩る分には気配を追えばよいし、ダンジョンに潜ってもよいし、方法は多々あろうよ。

 問題は、感情を集めるほうよの。

 まぁ、危機から脱せさせれば、感謝をしてもらえるじゃろ。〉


 そう言うと、白黒女は剣を抜き、虚空を切りつけ、黒き空間断裂を生じさせた。残りの二人が身構える間もなく、女が片手を突っ込み、、、何かを引き釣りだした。


 その手には、やけに身なりのいい、軽く涙目の男の子がぶら下がっていた。


 〈ほれ。助けたぞ。これで感謝の感情は稼いでいくかの。〉



「違う、そうじゃないよ。あー、サナ、どうすんのよ、

 この子。帰す、にしてもどうしよう。

 元の場所から逃した結果がこれなんだよね?」


 そうして、先ほどの物語へと合流していく。




 ▽ ▽ ▽


 ラウドは、白黒女の幸せ、という言葉に反応し、少しだけ、落ち着きを取り戻す。


「ま、待て。あの、、」


「ん?どうしたの?」


「こ、ここは、何処なのだ?」


「ここは、ダグラス湖畔。私達は次は、やっぱり商都アバルトがいいと思うの。やっぱり流行のチェックはしないとね。流行といえば、最近話題のあの本もやっぱり手にしたいわ。内容はわかるけど、やっぱり本物がいいのよ。本物と言えば」


「、、、王都には行かないのだ?」


「んー、その内に行くつもりだけど、やっぱりラウドくんは王都に行きたいの?」


「あの、早く王都に帰りたいのだ。それで、あのおばさ「お姉さん」え?」


「サナお姉さんはね、やっぱり素直な子が好きだな。ラウドくんはトマト好きかな?今日はトマト祭りかな?」


 凄みのある笑顔を向けられて、ラウドはタジタジになる。


「と、トマトはまだいいのだ。サナねえさま。」


「、、、まぁ、見た目は若いからいいと思うけどね。」


 黄髪の男が苦笑いをしながら野営の準備を進めている。

 どうやら石をくみ上げ簡易竈を作っているようだ。さっき雉がどうのと言っていたし、丸焼きでもつくるのであろうか。サナと二人で手際よく料理を進めている。

 ラウドは幼年とはいえ、父の影響もあり既にケイトに連れられ何度も狩りには出ている。野営も経験済みではあったが、それでも普段は豪奢な天幕でのこと。大勢の護衛に囲まれていたのが常だった。それが、ここにはラウドは入れても4人しかいない。


「ところで、そろそろ太陽が沈むのだ。寝床はどうするのだ?」


「ここで寝るんだよ。男の子とはいえ、お貴族様にはきついかな?

 あー、、お名前はなんていうの?」


 そういった黄髪男の目線の先には焚火を中心に平らな地面が見えている。


「む!バカにするな!ラウドは立派な男子だぞ!一人で寝るのもぜんぜん寂しくないのだ!」


「ラウドくんって言うのね。

 、、、思ったより箱入りなんだね。はぁ、どうするのよ、マジで。」


「あらあら。やっぱり、元気なのが一番ね。やっぱり料理頑張らないとね。ユーナ、これの味見をしてくれないかしら?」


 サナが黄髪男にユーナと呼び掛け、汁の味見をお願いしている。


「お前はユーナというのか。なんか女みたいた名前だな。足もほそいし。弱そうだな。」


「、、、は?今、なんていった?誰に向かっていったの?」


 胡乱げな目でラウドは睨まれた。


「お前はユーナという名前じゃないのか?今サナおば、、サナねえさまが呼んだとおも」

「よーし、わかった。いや、わからせる。いい?私は女の子。花も恥じらう17歳の乙女よ?」


「なんだ、女だったのか。ドレスを着ていないからわからなかったのだ。そういえばケイトも狩りの時はそんな恰好だったかもな。」


「うん、まぁ、わかればいいの。私は思いっきり平民だし、髪の毛もこんなになっちゃっているしね。

 言葉使いとか服装とか、お貴族様とは色々違うと思うけど、とりあえず仲良くしてくれるとうれしいな。」


 再び優し気な表情のユーナにラウドはホッとする。


「もちろんなのだ。ユーナは女子なのに強そうだな。その右腕もかっこいいぞ!」


「あぁ、これはね、実はトーマっていう精霊が住んでいるのよ。」


 そういってユーナはガントレットを撫でる。すると、ほのかに赤く光りだし、柔らかな温かさが周囲に広がった。


「凄いのだ!精霊使いは、ケイト以外で初めて見たのだ!ユーナは凄いのだな!よく見れば、顔もきれいなのだ!」


 ユーナが上機嫌になったことも手伝いラウドは少し余裕が出てきたので改めて周りを観察する。


 ここは湖のほとりでそれなりに開けてはいる。少し離れたところに小さな滝があるようで、水音がしている。街道沿いではあるようで簡単な馬車なら通れそうな道が見える。

 だが、やはり周りには町の気配はない。魔物の気配なんかはラウドにはわからないが、とりあえず安全なように思われた。そしてまわりに居るのはラウド以外にユーナとサナの二人、、ではなく、三人。


 どうしても、一人、忘れてしまう。


 ラウドはそう感じて、改めて三人を観察した。


 まずサナねえさま。

 いまは手際よくパンを温めて、スープに色々なスパイスを入れており、あたりにはいい匂いが漂っている。

 服装は黒いパンツに白いシャツ。

 おっぱい大きい。

 背はケイトよりもさらに低いが顔も可愛らしく、黒いきれいな髪が後ろで一つに縛られて揺れている。最初に見たときは無表情に見えたが、今はとても和やかな表情をして、ユーナに話しかけている。料理中にもかかわらずなぜか黒い剣を腰に付けはいるが、それ以外の防具は籠手すらつけておらず、非常に軽装に思える。


 軽装といえば、奥で地面に落書きをしている男もほとんど防具をつけていない。服装は緑のパンツに地味なカーキ色のシャツ。赤い髪を後ろで一つに結んでいる。腰にポーチをつけ、手に持った杖でゴリゴリと地面に何かを書いている。指輪と腕輪もつけているが、それが何らかの魔道具なのか時々何かをとりだしている。

 ラウドには遊んでいるように見える。

 暇なのだろうか。

 なんか存在感の薄いそいつは、顔はよく見えないが、近衛騎士団でも見劣りしない程度に締まったいい体躯をしている。だが、その動きは力だけが頼りの、鈍くさい感じなのだがラウドにはそこまでは推し量ることはできない。


 そしてさっきから上機嫌で鍋をかき回したり、竈の火加減を見たりしているユーナ。

 旅用の軽装とはいえ、しっかりとしたつくりの赤いブーツ。すらりと細い足にフィットしている青いパンツ。かなり短めに揃えられた黄色い髪の毛に、小さな頭。少女と知ってみると、確かに女の子にしか見えない風貌。シャツも青系の空色もので、緑の腰巻と合わせて、ラウドからみても好感の持てる服装だ。

 ただ、そのユーナの右腕はいささかゴツイ造りのガントレットをつけている。黒と緑と銀で出来たそれは飾り気がなく、だが、複雑な文様が描かれていた。

 そして、靴に合わせた赤い皮製の胸当て。


 ラウドはそこでやっとさっきから引っかかっていた違和感に気が付いた。


「ユーナはお胸がぺたんこなのだな!」


「あ゛ぁ?」


 ラウドは特大の地雷を踏みぬいてしまったことに、まだ気づいていない。



読んでいただきありがとうございます。


次回嘘予告

大豆、体操、矯正下着。

第二章 第3話 「バストアップ」

君は美しくなるための執念を目の当たりにする。

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