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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  作者: まお
1章 炎の英雄
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エピローグ

 ▽ ▽ ユーナ ▽ ▽


 あれから、私たちは街にいった。


 まずはギルドに行って討伐した黒骨騎馬と眷属多数の処理。

 黒骨騎馬は、鎧しか残って無かったけど、狼やら山猫やら鷲やら蛇やらの焦げたり割れたりした骨等は、聖堂に頼んでしっかり浄化。それにしても、いつの間にこんなに倒したのか。サナはやっぱり強いんだねぇ。

 後、報酬すげぇ。

 鎧はまぁ高いんだろうな、と思っていたけど、骨も触媒やらなんやらでわざわざ商都アバルトから人が来てトリスの街はちょっとした景気に沸いた。


 次に、トーマの身体の浄化と埋葬。

 これは、聖堂の牛女、ってこんな言い方だめだよね。セーラさんにしてもらった。

 身体はボロボロにだったけど、でも顔は比較的無傷な、そんなトーマだった身体をセーラさんは真っ赤になった目で見つめていた。清め、浄めた身体は最後に“炎の英雄”なんて名前を贈られて燃やされて行った。流れてきた師匠が街のみんなに好かれていたんだって、改めて思えて誇らしかった。


 立ち登る煙が高くまで届くほど、死者は安らかに眠れるのですよ。


 そんな風に慰めてくれるセーラさんに、トーマを精霊にして連れてるという秘密を抱いた私はどんな顔をして良いかわからず途方に暮れた顔をした。

 そんな私をセーラさんは優しく抱きしめてくれた。柔らかくて、ちょっといい匂いがした。

 だけど、やっぱり言えなかった。人間を精霊化するなんて方法がばれたら、クリトは間違いなく捕まる。

 良くて王都で監禁されて死ぬまで呪法の研究。悪くて、異端者として聖堂から即処刑。もちろん、トーマは実験動物みたいな扱いだろう。

 だからそこまで悲しくない私は、事情を話す訳にもいかず頑張って悲しそうな顔で葬儀を済ませたのだった。




 実はあの話し合いの席で街に降りるまでにいくつかの決断をした。

 その、一つ目の決断。


 溶けたマギと割れた緑玉を使って、私の右手を作って貰った。


 鍛冶が出来ないクリトは、溶けたマギを剣に戻せ無いし、なんか、焼け落ちて変質した金属だったし、打ち直しただけじゃ、マギじゃない気がして、けどなんか、、、。

 そんなふうに悩んでいたら、クリトならなんとか出来るっていうから、うん、これからもよろしくって思いで、クリトに錬成をお願いした。クリトは珍しいほどやさしい笑顔で受け取ってくれた。

 緑玉については、魔石としての純度はすごく高いが、魔力は既に空っぽ。一度完全に魔力を吐き出したせいで、ボロボロに崩れていて、構築式もイカれてるって、言ってた。このままでは管理が大変って事でどの道錬成が必要だった。

 ならばいっそ、マギと合わせてしまえって事でマギと合わせて右手に錬成してもらった。けど、錬成するにはそれだと強度や魔導制御が足りないとかで、黒骨騎馬の鎧のカケラも追加で使ったらしい。

 高価な材料過ぎて私の右手だけで街の半年分の税収を超えそうだな。

 正直、年頃の乙女の腕なんだから、もう少し可愛く、せめてエレガントに仕上げて欲しかったけど、トーマのお部屋でもあるから、ちょっと無骨なデザインでも我慢よね。




 二つ目の決断。


 ギラと別れた。


 いや、正確にはそうじゃないらしいんだけど、私の主観としてはサヨナラだった。

 精霊ってのは、基本的に眷属全てひっくるめて一つって存在なんだそうだ。その中でも極一部、たまたま、特別な意味を持った部分が名前を名乗れるらしい。

 ギラにとっての意味はトーマだった。だから、不安定ながら精霊化したトーマに自分の存在を譲って、トーマを火の眷属に迎える代わりにギラは名前を失った。

 つまり、消えた訳でも、まして死んだ訳でも、むしろ離れてすらいないけど、もうギラとしては存在できないのだ。なのでギラの首飾りを持ってる私はちょっぴり炎の変換効率がよくなっている。

 ま、ある意味私専用の魔導具って感じかしら。

 そして、トーマって意味を保たせるために、私とトーマは契約をした。


 待って。


 精霊との契約って事はずっと一緒って事よね。しかも、トーマは大体私の右手(元緑玉)にいる。精霊と人間の契約だから、文字通り一心同体、一蓮托生、一汁三彩、結婚生活、新婚初夜、えっと違う、なんかあの、とりあえず、そのこっち置いといて、そう、ギラと別れた。

 さみしい。

 悲しい。

 うん、以上。




 三つ目の決断。


 私は剣士を辞めて、魔術師になる予定だ。


 マギ以外の剣はなんか嫌かなってポロって言ったら、クリトが珍しく強気で相槌を打ってきた。だから、って訳じゃないけどなんとなく、剣士は卒業。元々才能があった訳じゃ無かったし。剣はトーマについて行くための手段でしかなかったしね。

 だけど、力が必要だから、私は魔術師になる。だって足手まといは嫌だもの。




 それが四つ目の決断に繋がる。


 私は、三人の旅についていく。その為に力が必要だ。

 昨日やっと聞き出せたけど、サナはなんと、人造人間(ホムンクルス)だそうだ。

 なるほど。だから、たまにチセさんが入ったりしているのか。ただ、不完全だからクリト自身の魂の一部をサナに付与している上に、なんか呪いの様なモノをクリトは受けているらしい。

 そこはまだ詳しく聞けてない。ま、一緒に旅する訳だし。時間もあるから、クリトの話は後回しでもいいかなって。


 ちなみに、チセさんは、本物の人間のチエおばあさんが遠い国から持って来た薄い本(スマートホン)?とかいうモノから生まれた神様らしい。

 まぁ、チセさんの言うことだから、なんか盛ってるんだろうなと思っている。

 チセさん断固としてお姉さんで通すんだよね。まぁ、こっちもまだまだ詳しくは聞けて無いけど、サナとチセとついでにクリトがマトモな人間になる為に、三人は旅をしているのだそうだ。

 つまり、上手く行けばトーマも人間に戻れる!

 乗るしかない、このビッグウェーブに!

 何故か同行の説得が終わった頃にはクリトはズタボロだった気もするけど、細かい事は気にしない。なんかいつも通りな気もするし。なんとなく、サナも笑っているって感じだったし。チセは、妹が増えたってはしゃいでくれていたな。


 トーマ、もう少し待っててね。




 それで、最後に後始末。


 旅に出る為に、街の皆にお別れを言った。


 ここは、私の第二の故郷。

 色々料理を教えてくれた宿屋のミレイさん、お洒落を教えてくれた酒場のケイさん、悪いことをした時は本気で叱ってくれたマルロさん、マギと引き合わせてくれた鍛冶屋のガントさん、それと、ケイ、ミーナ、アル、、それから、それから、他にも沢山のヒトに支えてもらった。


 もちろん、ライバルであり、姉代わりでもあったセーラさんにも。

 街に帰ってきた時にすぐに駆け寄ってきてくれて。なくなった右腕と、ざっくり切れてる髪の毛と、隣にトーマがいないのを見て、誰よりも、泣いて、怒って、悲しんでくれた、、、私のお姉ちゃん。

 けど、一通り泣いたら、お帰りって微笑んでくれた、私のお姉ちゃん。

 血はつながっていないけど、ボロボロになってた髪の毛を丁寧に揃えてくれた、私のお姉ちゃん。

 もう、髪を切ってもらうのもこれで最後なのかもしれないんだな。

 旅に出るって言ったら、一人で大丈夫?って心配されて。

 だから、勇気をだして、実はこの右手が恋人なんですって言ったら、いきなり表情が抜け落ちて物凄い真顔になって、それはやめなさいって、怒られた。やっぱり、トーマが精霊になったの気づいていて、精霊と人間の異種恋愛に怒ってるのかな。


 腕が出来上がるまでのこの3週間で私は、みんなにありがとうを少しでも届けられたかな。


 あとなんか、ヒゲの似合わないヤツも泣いてたけど、どうでもいいか。

 私は、今日から旅に出ます。



 それと、蛇足になるけど、決断をもう一つ。


 魔術師になる為に、トーマに弟子入りしました!

 天才を超えてやる!私の伝説はこれからだ!

 今度こそ、トーマに追いついて、惚れさせてやるんだから!

 待ってなさい、トーマ!!


 ▽ ▽ ▽



 炎の英雄のお話はこれにて終幕。

 身体3人、魂5人はこの後も色々と巻き込まれていきますが、それはまた別のお話。


読んでいただき、ありがとうございます。

これにて、第一章を閉幕いたします。


次回嘘予告。

にこりと微笑む、白馬にまたがる紺碧の瞳。

第二章 第一話 「王子こそメインルート」

君は乙女ゲームに巻き込まれたユーナとトーマの幸せを守ることができるか。

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