偽物の乳
なろうラジオ大賞2 への書き下ろしになります。
「採点するから、ちょっと待っててね」
「じゃあ、何か持ってくる」
叔母さんの家で、従弟の悠君に勉強を教えている私。夏休みにあった法事の際に、叔母さんから頼まれたのだ。三歳差。小さい頃は一緒に遊んだが、小学校も高学年になると、親と行動する事も少なくなり、異性という事もあって、自然と会う機会も減っていった。
「麻衣ちゃん、家庭教師のバイトしてるんだって?ウチの子、教えてくれない?」
ある日、そこそこ偏差値の高い大学に通っている私に、叔母さんはそう言ってきた。
「いいですよ?」
素性が分かっていて、距離も車で20分。中間搾取されない給料は相場以上。加えて、私は明るく楽しそうに話す叔母さんの事が好きだった。更に料理上手で、食事にありつけるとなれば、断る理由が無い。
「紅茶、持ってきた」
悠君が、お盆を持って戻ってきて、机の上、私の手元に置いた。
「こっちも終わったよ」
前屈みの姿勢を伸ばす為、私は腰を後ろに引き、背後のソファの足に背中を預けると、両腕を頭上に投げ出した。
「そっち、行っていい?」
すると、悠君はそう言って、私の了解を取る前に、私と机の間に座ってきた。
「ちょ、ちょっと」
上半身を起こし、拒否しようとしたが、間に合わない。
「もう…」
悠君に告白されたのは、模擬試験の前。
「A判定もらったら、付き合って」
叔母さん譲りの、屈託のない笑顔。難しいと思った私は、励みになるならと、軽い気持ちで了承をした。
だが、結果はまさかのA判定。慌てた私は、叔母さんの手前、高校卒業までは公然と付き合う事はできないと悠君を説得し、今に至っている。当然、キスも無し。
「順調だね」
採点を眺めながら、悠君が笑顔を見せる。追加条件は、A判定の維持と、志望校の合格。即ち、私の後輩になる事。
「あ、柔らかい」
ふいに、悠君の頭が倒れてきた。
「あ、こら」
「いいじゃん」
ニットの膨らんだ部分に、悠君の頭が当たる。付き合っている以上、このくらいのスキンシップは仕方ないか…
「…あのねえ、男は勘違いしてるけど、この膨らみと柔らかさは、パッドなんだからね?」
「えー」
私が得意気に話すと、少し残念そうな声が返って来る。
「でもさあ」
「何?」
尋ねる私に、悠君は、少し横顔を覗かせて言った。
「男だって、誰でも良い訳じゃ無いんだよ」
…駄目だなあ。
コイツに傾いていく、私がいる…
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