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クラスメイトの彼女 16

 

 一昨日、きのう、そして今日も、杜乃さんは学校を休んだ。


 これで三日連続で休んだことになる。もともと休みがちだったとはいえ、彼女が二日以上休むことはこれまでに無かった。


「海斗よぉ、杜乃さん、どうしたんだろう?」

「さあ、どうだろ」

 中村がそれとなく話題を振ってきたが、僕は何と答えていいか分からなかった。

 彼女の家庭も色々と大変である。今となっては多少の家庭事情は知っているとは言え、これまでにない長さだと、心配になる。


「海斗ならなんか聞いてるのかなってぇ──、っていうか、風邪かな? でも杜乃さんって身体弱そうな感じとか、あんましねーんだよなぁ。休んだ次の日の体育とかもチョー活躍するよな、いつも。ていうか、普段も調子いいとか悪いとか、わかんねーけどな、ポーカーフェイスってやつ?」

「うん、まあ、でも、杜乃さんって、普段いつも元気だよ」

「え? 元気? マジか。俺からすると、常にひっそりとしてる印象だけどよ、海斗には元気かどうか分かんだ。さすが彼氏!」

「って、なんで彼氏なんだよ」

「いやいやいや、てゆーかよぉ! 言われて嬉しい癖にぃ、海斗よぉ、ほら、無意識にニヤけてっから」

「うそっ!?」

 中村は大きな声で笑った。なんでも和やかな雰囲気にする中村には敵わない。

 

 花壇の手入れのお手伝いの件もあり、中村も杜乃さんの話をよく振ってくるようになったけど、それ以上に、僕は彼女に関しての、ある種のプレッシャーを感じていた。南埜茉莉だ。彼女も杜乃さんが休んで三日目となり、かなり気にしているようだった。教室ではいつも取り巻きに囲まれていて、恐らく僕に話しかけるタイミングを掴めないでいるのだろうけど、時折、彼女から何かを訴えかけるような視線をもらっていた。

 さも何か言いたげに、

「今日も休み? どうしたのかしら?」

「杜乃さん、大丈夫そう?」

「花壇の話はしてくれた?」

「陽野君は何も訊いてないの?」

「うーん。話したいけど、タイミングが──」

 というような感じの圧を、キラキラとした瞳から感じている。


 恐らく彼女は、萩原と僕が微妙な空気感になったことを察して、教室では話しかけづらいのかもしれない。


 しかし、そういった中村や南埜さんの心配以上に、僕自身、心配している。恐らく、体調不良ではないと思う。しかし、そうなると家庭の事情ということになるし、家庭の事情で休みが長引くということは、ひょっとして、このままズルズルと休み続けて? 或いは転校することにでもなったら!?


 そう思った瞬間、とんでもなく胸がドキッとした。それは文字通りドキッと、単なる言葉の言い回し、言葉の綾とかではなく、本当に金槌で胸の奥を打ち付けられたような、生々しい痛みだった。

 

 弟さんの病院の転院、或いは父親の転勤、家庭の事情なら、何かあってもおかしくはない。


 こんなことを考え始めると、妙に気分が重苦しくなってきた。というよりも本当に息苦しい。ネガティブな思考は良くないな。こんな思考は、いわゆるフラグだ。良くない。


 本当にそうなってしまうかもしれないし、忘れよう──、


 と考えれば考えるほど裏腹に、良くない方向に思考が向かってしまっているのか、胸の奥の重しのような不快感が一層強まるのだった。


 ひょっとして、夢と関係あるのか? 僕が近頃毎晩見るあの不気味な暗い学校の夢、それと関係あるのか? 夢は正夢? ひょっとして、本当に彼女の身に何かあったのかも知れない?


 まさか──、


「そう言えば、結構課題とかプリントとか、三日目ともなると溜まっちゃってるんじゃねーの?」

「! ──そうかも」

 この中村の言葉が、僕の胸の奥の不快な重さに、何か変化を与えた、──ような気がした。


 それは何か、炭のような硬く黒い物にぱっとマッチを放り込むような、もしかしたら一気に燃え上がる? 燃えるのか? 燃やせるのか? といった妙なイメージだった。








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