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異世界に来たので次こそ努力します  作者: かたな
異世界に召喚されました
8/42

城下町に行くことになりました

 窓から差し込む朝日と小鳥のさえずりにより目を覚ます。異世界に来て二日目、地球とは違い車などはないため朝はとても静かだ。

 机の上に置いておいた腕時計を見る。昨日のうちに合わせて置いた時計は六時と表示してある。窓の外を見ると使用人さんたちがせっせと仕事をしている姿が見られるが、後は特には誰も見当たらない。この屋敷からも物音はしないため誰もまだ起きてないのだろう。

 何をしようにも着替えないとどうにもならないため、机の上に用意してあった服に着替える。昨日からきている下着もそうだが、この服もなかなか良い質感をしている。つくりも緻密で地球のものに勝るとも劣らない。

 服を着替え寝間着をたたみ屋敷の外に出た。異世界の朝の空気はとても美味しい。そんな中で城壁に沿って散歩を始める。散歩は日本に居た時から暇なときにしていた。散歩は歩くルートやちょっと細道に入ると全く違う景色が見られたり、思わぬところに出てきたりして楽しい。そして散歩をしていると使用人さんや訓練中の騎士さんたちを見かける。挨拶をすると使用人さんたちは返してくれたが騎士さんたちは返してくれない。


 そんなこんなして数十分すると一周し終わった。そして屋敷の中に戻ると美味しそうなにおいが漂ってくる。においにつられて昨日自己紹介をしたリビングに行くと俺以外の全員がそろって座っていた。そして8人の後ろにはそれぞれメイドさんか執事さんが後ろに立っている。しかし俺の執事であるホフマンさんは見当たらない。


「リンドウも座れよ、もうすぐしたら朝食が来るらしいぞ」


 入り口で突っ立っているとシオンに座るように言われてしまった。朝食ももうすぐ来るらしいから空いてる席に座る。右が女子高生のアカネさんで左に小学生のトオカちゃんが座っているところの間に座るのは気まずいがとりあえず座る。


「おはよう、リンちゃん」

「り、リンちゃん...?」


 椅子に座るとムスッとしているアカネさんとは違いトオカちゃんは挨拶をしてくれた。しかし、リンちゃんと呼ばれて頭に疑問符が浮かぶ。もしかしてリンドウだからリンちゃんかな?でも女の子っぽいあだ名なような気がする...。


「リンドウって名前だからリンちゃん!ねぇー、カズミちゃん」

「ねぇー、トオカちゃん」


 二人はそう言いながらハイタッチをする。一番幼いということで精神的にも肉体的にも疲弊しているかなと思っていたが思いのほか元気なようで安心する。ホームシックになっていると思ったが友達二人でこれたのが良かったのかな。

 はしゃいでいる二人を横目に朝食を待っていると、メイドさんたちが奥の部屋に入っていき朝食を持ってきてくれた。今日の朝食はちょっとしたパンとサラダにスクランブルエッグだ。量は朝食にしては十分であり、各々仲がいい者同士で会話しながら食べる。そして驚いたのが意外に俺以外はちゃんと会話を行っているということだ。いつの間にか仲良くなっていたのだろうが、俺一人だけハブられているような気がして悲しい。そんな雰囲気に居ずらくなり、一人で黙々と朝食を食べ終わり早めに自分の部屋に戻った。



☆☆☆☆☆



 部屋に戻って昨日覚えた文字を覚えているか確認しているとステラちゃんが部屋にやってきた。結局昨日習った文字は覚えていたので次の文字を覚えようかと思っているとホフマンさんも部屋にやってきた。そして話があるということでリビングに集合するように言われたので三人でリビングに向かった。俺以外の全員はそろっていた。

 俺とステラちゃんが座るとなんでステラちゃんがいるんだという目線が突き刺さっているが、そんなことは気にせずホフマンさんが話し始める。


「魔王を倒していただくために皆様にはやがて訓練をしてもらうのは、昨日通達した通りでありますが準備が整っておらずしばらく開始することはできません。また、昨日はいきなりこちらの世界に連れてきてしまい申し訳ないので、本日は城下町の観光を行いたいと思います。本日の観光終了後は城下への出入りも許可することといたします。観光の案内はわたくしが皆様の引率を行います。それでは、十分後に出発しますので準備をお願いします。準備後はここに集合をお願いします」


 今日は観光をするらしい。雰囲気のあるこのお城にしての城下町、どんなもんか気になるので楽しみだ。そしてステラちゃんもついてくるらしい。


 解散後準備を部屋で行い再びリビングに戻ると、早速ホフマンさんの引率のもと城下町に出発した。

 城門を出ると一本の大きな道が城下町を囲う城壁、そしてさらにおくの町を囲う城壁まで伸びている。幅は大型の馬車が片側二台通れるほどの広さがある。城下町は王城を丘の頂上として緩やかに丘に広がっている。街の建物は高い建築物は少ないものの石材やレンガを中心に美しい街並みが広がっている。地震が起きたらひとたまりもないような気がするが、しかし恐らくそういうものはあまりないのだろう。

 王城の城門を出て中央の大通りを歩くと、ここら辺は貴族や騎士が住んでいる住宅街が広がっている。大きい家と比較的小さめの家があるが、大きめの家は王城勤めの貴族や騎士が常駐するための家であり、小さめの家は領土を持っている貴族が王城に出向してきた際に短い期間生活するための家であるそうだ。そして、昨日のパーティーのせいか時々貴族の人たちから話しかけられることがある。そのたびにこいつ誰だという目で見られるのがつらい。一方でシオンとタイスケ君は貴族たちやその娘?と思われる美女や美少女に囲まれてにやにやし、対照的にステラちゃんを含む女子陣は貴族のおっさんたちに囲まれて気持ち悪そうにしている。お、俺?俺はというとホフマンさんたち使用人さん陣と一緒に彼らを眺めていた。


 貴族の住宅街を抜けさらに城下町を下っていくとやがて活気づいた商店街や他の商業施設などが増えてきた。それに従いいろいろな人が見られるようになった。獣耳としっぽが生えている人間や長い耳の美人、子供ほどの身長しかないが立派なひげを蓄えている人、他にも体にうろこが見られ角が生えている人なども見受けられた。人種以外の外見の違いで言えば武器を持っている人たちも多くみられた。冒険者といわれる人なのだろうか。


 城下町をホフマンさんの引率のもと観光をし、商店街でちょっとした買い物や食べ物を買わせてもらいしばらくすると自由行動の時間になった。当然ながら使用人さんと一緒に行動しなければいけないが、ホフマンさんは行くところがあるためステラちゃんと一緒に行動することになった。やっと時の人となった勇者様たちと離れて行動できるとほっとしていると...。


「ステラちゃん、そんな雑魚いおっさんはほっといてあたしたちと街を回らないかしら?」


 ステラちゃんがアカネさんにナンパされてしまった。どうやら自由時間は女子で行動するらしくそれにステラちゃんを誘ったようだ。ステラちゃんをナンパするのは良いけど、雑魚もその通りだが、誰がおっさんだよ!確かにどちらかというと老けた顔をしているかもしれないがおっさんといわれるほどではないと自分では思っているぞ。しかし、これを口にすると後でなんかされそうな気がするため口にしない。

 さて、俺のつまらない心の声はほっといてナンパされた本人のステラちゃんはというと...。


「誘ってくれてうれしいけど、遠慮しとくわー。また今度誘ってね。じゃあ、お兄さん行こ?」

「う、うん」


 アカネさんの断って、俺の手を取り人ごみの中に紛れていった。ぐいぐいと手を引っ張られ城下町の中を進んでいきしばらくすると噴水のある広場に着いた。


「ここまで来たら大丈夫だねお兄さん、さっデートに行こ」

「えっ?デート?」


 俺が混乱する姿を見てにひひと笑うステラちゃん。デートの意味を知っていてわざと言っているのだろう。そして、またステラちゃんに手を引かれ城下町に出て行った。



☆☆☆☆☆



「おじちゃん、その串焼き十本頂戴」

「はいよ、お嬢ちゃん。でもそんなに食えんのか?」

「うん、お兄さんと一緒に食うから大丈夫だよ。はい、お金」

「まいど!ありがとな、また来てくれよ!」


 ステラちゃんとデート?を開始して商店街のほうに入っていった。商店街のほうに入ると色々買い物するが俺はお金を持っていなかったので、何も買わなかった。ステラちゃんはちょっとしたアクセサリーを買ったり、本屋さんに入り本を買ったりして魔法かスキルか分からないが虚空に謎の穴をあけてその中に買ったものを入れていく。

 ステラちゃんの買い物の途中で俺の腹が鳴ってしまったため近くの屋台に向かった。そして、一本でも結構なボリュームがある焼き鳥をステラちゃんは十本も買う。俺の分も含めて買ってくれたようだがいくつ食わせるのだろうか?

 焼き鳥を買った後近くのベンチに二人で座った。


「お兄さん、はいどうぞ」

「ありがとう」


 ステラちゃんに一本焼き鳥をもらう。なんの鳥かはわからないがとりあえず一口かじる。すると、口の中に熱々の肉汁があふれんばかりに放出される。お肉自体も赤身が強く弾力があるが、噛み千切りやすい。

 一本食い終わったが、思ったよりお腹にたまった。しかし、ステラちゃんはそんな焼き鳥をすでに五本も食べ終わっている。精霊なのか異世界だからかこんな小さい子もこんなに食べることができるのだろう。


「お兄さん、もう一本食べる?はいどうぞ」

「おう、ありがとう」


 ステラちゃんが俺が一本食べ終わったのに気付くともう一本焼き鳥をくれた。さすがに一本のボリュームが大きいとはいえさすがに一本ではお腹いっぱいにはならないのでありがたい。二本目も一本目同様美味しい。そして食べ終わるころにはステラちゃんは残りのすべてを食べ終わっていた。どこにそんなに入るのだろうか。

 焼き鳥を食べ終わるとステラちゃんは立ち上がりこちらのほうに向き直った。そして、手をたたくと...。


「そうだ!お兄さんを連れて行こうと思ってたところがあるの、今から行こう!」

「え、どこに行くの?...ちょっと、そんなに引っ張らなくても行くから、引っ張らないで~」


 俺を連れて行くところがあるということで再び手を引っ張りどこかに向かって歩き始めた。

 街のことを聞きながら城下町を進んでいくとやがて、城下町を囲っている城壁の門に着いた。これより先にも街が広がっているが今までがちょっと高級な感じでこれからが庶民的な感じになる街並みだ。しかし、決して貧乏な様子でもなくきれいな街並みであるのは間違いない。


「ステラちゃん、ここから出るの?」

「うん、この先に目的の場所があるからね」

「城下町から出て行っていいの?てか、どこに行くの?」

「まあまあ、ついてからのお楽しみだから早く行こう!あと、ここを通ってもまだ王都の中だから安心だよ」


 こうして俺たちは城下町を出て、庶民街といわれるさらに丘を下ったところにある街に向かって歩き始めた。

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