表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たので次こそ努力します  作者: かたな
異世界に召喚されました
1/42

異世界に来ちゃったみたいです

「勇者様方、どうか私たちの国を救ってくださいませ!!!」


 俺たちのバイクの排気音を遮るほどの大きな声で目の前の少女は叫んで頭を下げた。



☆☆☆☆☆



時間は少し遡り......


 俺はいつも通り大学にバイクで中学からの友達の紫苑(しおん)ツーリング気分でと通学している途中だ。大学までは俺と紫苑の家からは大体20kmほどある。しかし、交通機関があまりない場所であり一人暮らしも反対されていたため、俺たちの親父たちの趣味もありバイクでの通学になった。今日も事故はなく大学周辺まで来たが、付近には近辺に小中高校が集まっていることもあり道は込み合ってきた。


「あの娘なかなか可愛くない?竜胆(りんどう)


 渋滞している道で横並びに停車しているとヘルメットについているインカムから紫苑の声が聞こえてきた。フルフェイスでミラーシールドのため分かりづらいが恐らく、隣の歩道を歩いている女子高生のことを言っているのだろう。俺もまじまじと見てみたいところだが...残念ながらクリアシールドのため目線がばれるのを恐れて凝視できない。


「あんまり見続けるとばれるぞ」

「大丈夫だって、ミラーシールドやし。......うへへへへへへ」


 紫苑が女子高生を見て気持ち悪い笑い声を出していると渋滞の列が少しずつ動き出し、俺らも発進しようとした瞬間...突然として目の前が激しい白光に包まれた。そして思わず目を瞑ってしまう。


 ......まぶたの裏から強烈な光が終わったのを確認すると、恐る恐るまぶたを開けた。すると眼前には西洋の宮殿の玉座が広がった。そして正面にはお姫様風の美少女と神官風の男女合計10人が立っており、貴族と思われる人たちや騎士と思われる人たちが中央を開け左右に並んでいる。正面のお姫様は小柄で可愛らしいといった印象を受ける。髪は金色に輝き、幼く感じるが端正な顔をしている。玉座には王様らしき立派なひげを蓄えたおっさんと王妃らしき女性が座っている。おっさんは茶髪長身でひげはあるもののイケメンではあるだろう。王妃と思われる女性も美人である。そして隣にはバイクに乗った紫苑と先ほどまで歩道を歩いていた女子高生2人に男子高生1人、そして女子中学生?2人に女子小学生2人がいた。この子達も全員端正な顔をしている。一方俺たちはというと、紫苑はぼちぼちイケメンではあるが俺は普通の程度の顔だ。


そして冒頭に戻る......


「だ、大丈夫だったか?竜胆」


 インカムから紫苑の声が聞こえてくる。紫苑の声を聞いて内心焦っていたが冷静になり、紫苑に応える。


「大丈夫だけど...これ、エンジン止めたほうがよくない?」

「確かに止めたほうがいいな......」


 いきなりのことで動揺していたが社外マフラーと室内ということもあり排気音はなかなか五月蠅いことになっていたため、エンジンを止めるように紫苑に促し俺たちはエンジンを止める。

 しかし、依然として冷静になることができない女の子たちは「ここどこなの!?......」や「私たちどうなるの!?......」と騒いでいる。


「おほん...静かに」


 すると、騒がしいことにみかねたのか、玉座に座っていた王様が一つ咳払いをした。それに伴い騒いでいた女子高生たちやその場にいた全員が王様のほうを注目する。


「このたびはわれらの勇者召喚に応じていただき誠にうれしく思う。余はアルスフェル王国国王グラジオス・ロータス・アルスフェルだ。さて、早速だが勇者方諸君には我々王国同盟に仇なす魔王と帝国を討伐してもらいたい。当然ながら我々はできる限りの支援を行うことを約束し、討伐が成功した場合にはできる限りのことを...「待ってくれ」...なんだ?」


 アルスフェル国王が静かになったのを皮切りにこの国の現状と同盟国を助けてほしいと欲しいと説明を始めた。しかし、国王の説明を遮り隣にいた男子高校生が制止した。......人の話はちゃんと聞いてから質問とかを投げかけるのがいいと思うのは俺だけだろうか?そう思いつつこの場にいる全員が男子高校生に注目する。


「勇者召喚って何なんだ?そもそもここはどこなんだ?俺たちは元の所に帰ることはできるのか?」

「???......ふーむ、おぬしたちは召喚に応じてくれたからここにおるのではないのか?」

「俺は登校中にいきなり目の前が真っ白の包まれて目を開けたらこの場所にいたから勇者召喚とか、応じるとかは意味が分からないんだが」

「なんと!!!少し待たれよ」


 おおよそあまり空気が読めてないと思われる男子高校生と国王の問答により、国王が何か重大なことに気付いたのかお姫様と神官を手招きし玉座に集めた。そしてこちらに声が聞こえないように協議を始めた。そのことに動揺したのか貴族たちは騒ぎ始めた。さらには女の子たちも異変に気付き再びざわざわし始める。



☆☆☆☆☆



「すまぬ、待たせたな。......お前たちはいつまで騒いでいる」


 時間にすると大したことはないだろうが、周りの動揺や国王達の協議のこともあり体感時間は長く感じられた。すると協議が終わった国王が騒いでいる貴族たちを制することにより再びこの場は沈黙に包まれた。


「勇者方、此度はこちらの不手際により合意がないままこちらに来たようだ。申し訳ない。本来ならば、召喚の際に女神カトレアより説明が行われるはずであったためこちらの説明は行わないが、今回は状況が違うため少しだけ説明を行おう。ただし、少しばかり今日は時間がないため簡易的なもので済ませる」


 国王はこの国、世界に関して説明を始めた。話を要約すると......

・この世界は当然のことながら異世界である。

・この世界には大小全ての種族の国家を合わせると100以上あり王国を中心とした人族の同盟と帝国、そして魔界というこの世界の別の世界から出現した魔王率いる魔族の国と三つ巴の戦争を行っている。

・やや劣勢な同盟国を救い人間の敵である魔族を討伐するために一騎当千の勇者を召喚したが、何かしらのエラーが発生し通常5人のところ9人も合意なく召喚してしまった。

・衣食住は申し訳ないので必ず保証する。


「......そして、最後に一つだけ伝えておかなければならないことがある。すまぬが一度この世界に来ると元の世界に戻ることはできない」


 最後の最後に国王は衝撃の発言をした。どうやらもう日本には帰ることができないようだ。そしてこの発言により元から不安そうにしていた女の子たちは一層のこと絶望的な顔になり、唯一初めから冷静であった男子高校生も動揺しているようだ。


「う、嘘だろ......」


 そしてインカムから聞こえてくる紫苑の声も動揺し、信じられないといった様子が見受けられる。俺もそのことに関して動揺したが、ここはひとつ動揺してはいけないと思い平常を保った。


「か、帰れないってどういうこと?......」

「そ、そんな......」

「申し訳ない......としか言いようがない。おぬしたちには申し訳ないことをしたと思っているがどうか心機一転して我が国を救ってほしい。とりあえず、本日はおぬしたちのために屋敷を用意しているためどうにかそこで考えてほしい」

「どうか、私からもお願いします!助けてください」


 国王は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。それにより貴族たちが騒ぎ始め、さらには先ほどまで空気と化していたお姫様も頭を下げてきた。すると、男子高校生に刺さったのか顔が緩み始めている。紫苑も顔はあまり見えないが気持ち悪くデレデレしている感じが伝わってくる。


「......だめですか?」

「うっ、......もちろんお手伝いさせていただきます!!!」

「お、俺も俺も手伝います!!!」

「やったー!ありがとうございます」


 お姫様がダメ押しとばかりに上目遣いで目を潤ませて言うと、男二人は簡単に堕ちた。そして自分から手伝うなどと言い始めた。さすがに単純すぎる...折角のこの場所の雰囲気が台無しである。隣にいる女の子たちも呆れた目で二人を見ている。一方で国王や王妃、当の本人のお姫様は嬉しそうにしている。さらには、二人のところに歩み寄りその手を取り握手する。

 単純すぎる二人の男子とは違い俺は今後のことを考えていた。おおよそ次に起こりそうなことは恐らく先ほどの屋敷に詰められることになるだろう。ただ、このバイクがどうなるかということが一つ気がかりだ。そんなことを考えていると俺と紫苑を除く彼らはすでに移動を開始し、俺たちのところには執事のような格好のおじいさんが来たため俺が対応する。


「あなた様方は鉄の馬?に乗っていらっしゃいますが、こちらのほうを移動させたいと思いますが......運んでよろしいでしょうか?」

「どちらに運ぶのですか?」

「屋敷のそばに厩舎がありますのでそちらのほうに運ぼうと思っております。そちらにてお世話させていただこうと思っているのですが......どういたしますか?」


 異世界の人にはバイクは馬のように見えるのか、確かにバイクのことを鉄馬と表現することはあるが......。


「ご厚意ありがたいのですが、残念ながら食料を必要とせずなるべく雨風に当たるといけないので...例えば倉庫などがあればそこが一番良いでしょう」

「わかりました、それでは屋敷の倉庫に案内しましょう。早速ですが行きましょう」


 こうして話し合いをした結果屋敷横の倉庫に向かうことになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ