冬休み
1月の末日より改装工事に入った里の湯では特段やることがなく、ゆいちゃんに一ヵ月のお休みが与えられた。
「大学もお休みだしどうしよ~」
期末試験も終わり大学も休みに入っていた。
他にアルバイトはしていないので丸々空いている日が一ヵ月も出来た形だった。
「この間納車したばかりの自転車でサイクリング行ってきたけど正直この時期寒すぎてとんでもなかったしなぁ……」
「とは言えお店の工事のお手伝いなんて出来ないし…… そうだ、車の免許でも取りに行こうかしら!!」
―教習所―
「今ちょうど学生さんが皆お休みなので混雑していて、卒業まで最短でも2ヵ月は掛かります」
―大学生協―
「どこの合宿所ももう定員で締め切っていますねー」
……
「何でや! うぅ、よくよく考えたら絶好の機会だったのにぃ、どこか、どこかに救いの手は」
「あれ、ゆいちゃん何しているんだい?」
「あっ、あなたは里の湯金融周り担当兼里の湯ラノベ部幽霊部員、ゾニー生命長田さんじゃないですか!」
「肩書長いね…… 今ちょうど改装工事しているからお休みなんでしょ?」
「それがせっかくのお休みなので(車の)免許でも取ろうと思ったんですけど、(混雑していて)お休み中の期間で取れそうになくて…… 長田さん何か(教習所入れる)良い方法知っていませんか?」
~長田脳内~
『それがせっかくのお休みなので(ライフプランナーの)免許でも取ろうと思ったんですけど、(勉強が苦手なので)お休み中の期間で取れそうになくて…… 長田さん何か良い(合格)方法知っていませんか?』
「ちょっと? ライフプランナーは免許とは違いますよね? 無理やり過ぎませんか?? あとさり気なくdisっているのはどういうことですか!?」
「脳波を読み取られた!? いやぁごめんごめん。 まぁとりあえず混雑中の教習所に割り込ませて優先的に免許取る方法はちょっと知らないなぁ…… あっでも」
「えっ!? 何かあるんですか!?」
「そうだね、まぁ立ち話もなんだしそこの華草屋与兵衛でコーヒーでも飲みながら」
「わーい奢りですねー」
……
「って何で私生命保険を勧められているんですか!?」
「まぁほら、もし免許取ったとしても交通事故に遭って亡くなったりする可能性だってあるわけだし」
「なに人を殺す気満々なんですか!? 大丈夫です私は安全第一です! 対向車線にはみ出して大型車に特攻するなんてことありませんから!」
「でもそういうこと言う人に限ってねぇ……」
「ぐぬぬ、そもそも保険って病気に関することがメインですよね? 私はまだ『若くて』『健康』ですから大丈夫です! 元気なので病気の心配もありませんし、日頃の行いも良いはずなので罰が当たるなんてそうそうありませんからっ、恐らく」
「そうだね、確かに若くて健康なら大丈夫かもしれないね。 でもこれだけは覚えておいて。 保険は確かに面倒くさいしお金にまつわることだからあまり考えたくないのはわかるけど、自分自身のためのものだからね」
「今日半ば強引に捻じ込んだのは申し訳なかったけど、これだけは言わせて。 今後誰にどんなことが起こるなんて全くわからないし、自分自身のこと、将来についてよく考えるきっかけにして欲しいんだ」
「別に無理やり加入させようとしているわけではないから。 本当に不要だったら余計な出費でしかないし気にしなくて良い。 逆に必要だと感じてもっと詳しく知りたいってなった時にはまたお話しするからさ。 色々とごめんね」
「長田さん…… そこまで私のことを心配してくれて、うぅ」
「もし自分できちんと考えて本当に必要だなぁと感じた時は、ちゃんとゆいちゃんを全力でサポートするのでぜひよろしくね!」
「わかりました、ありがとうございます! あとコーヒーとパフェもありがとうございます」
「いつの間にパフェまで」
こうして自分で自分自身のことについてきちんと考えるきっかけを得たゆいちゃんであった。
―3日後-
「あっ、ごめんゆいちゃん、俺部署移動になって全国転勤がある所に配属になったからもし今後何かあったらこの後任の人に……」
「えぇー全力でサポートするって話はなんだったんですかー!? 3日坊主じゃないですかー!」
ゆいちゃんが保険に加入する日はまだまだ遠そうだ。
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