表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/29

20話 曲がり角でドキドキ!?

 新しいクラス、新しい友達。

 椿の所属する桜組には、そんな新しい環境に心踊らせるピカピカの一年生達が、男女それぞれ10名ずつ所属していた。

 少ないと思われるだろうが、もともと上流階級の子供は少ない。むしろ、同じクラスに20名もいるのは例年に比べ多い方らしい。


 入学式が終わり、担任の教師が職員会議で少し教室を離れた今、教室内はフリーの自己紹介タイムになりつつあった。


 各々顔馴染みと早速グループを作ったり、隣の席の子に話しかけたりと良好なスタートダッシュを決めているように見えた。


 ふと視線を移すと、恵那千鶴子のグループを直ぐに見つけることが出来た。恐らく、直に彼女がこのクラスの女子をまとめあげるのだろう。

 確か彼女の祖父は京都の老舗呉服店の創業グループの代表だったはず。

 彼女自身も、ゲーム内での私服は着物が多かった。


 そんな彼女に取り入ろうとしているのか、はたまた普通の友人か。

 実際の恵那千鶴子の性格をまだ知らない椿にはまだわからないが、なんにせよ女子の大半がまとまっているようだ。

 パッと見、一軍と言っていいだろう。

 前世では椿が忌避していた人種である。

 

 ふむ、恵那千鶴子のグループに、あとの大人しい子数名、あとは……。

 ざっと分けてこのクラスの女子は三つのグループに分かれていく気がする。


 うん、いいね、これぞ新生活。


 そんな離れた場所から縁側のおばあちゃんのような面持ちで彼らを見守る椿の周りには、人がいなかった。


 三つのグループの、最後の一つ。

 大人しい子達すら近寄らない鉄壁の一角。

 椿に対して、まるで磁石の反発のように、皆一定の距離を保って近づいてこようとはしないのだ。


 もう、泣きそうである。


 なぜだ。私が何をしたって言うんだ……。

 この悪役フェイス、悪人面が悪いのか!?


 こういう時は隣の席の子に話しかけるのが手っ取り早いのだろうが、今日は病欠らしい。

 入学式の日に、ご生憎様……と、冷たい隣の席に手を置いてしみじみとしたのも束の間。

 椿はクラスでの友達第一号(強制)すらゲットし損ねてしまった。



「あのっ……」


「ひっ!?」



 先程から少人数で居る子を餌食……もといターゲットにし、つとめて優しく楓のスマイルを真似して声をかけているのだが、どういうことか熊にでも遭遇したかのような反応で逃げられてしまう。


 もうアカン……アカンわ、これ……


 友達作りに希望を見いだせなくなった椿は、この空気に耐えられなくなり、一人教室を出ることにした。

 その際、人が綺麗に避けていくのを見て、まるでモーセのようだなと自嘲しながら歩いていった。




──────────


「はあ……きっとゲームの椿も友達が出来なかったんだなあ……」



 椿は悪人フェイスを両手でむにむにと解しながら、学園の中庭を歩いていた。

 こうした所でこのつり上がった目が愛されプリティーアイに変わるわけはないのだが、憎くて仕方がない。


 思えば記憶を思い出してからというもの、まともな友達は鷹臣くらいのものではないだろうか。

 三葉とルイスは特例だから除外するとして、あとは……前に一度だけ会ったれーちゃん、はカウントするべきか否か。

 

 あれ、私ってもしかして友達少ない……?



「いやいや、友達は量より質、量より質だから。それにしても……」



 椿は周りをふと見回してみた。

 何気なく歩いていた学園の中庭だが、それはそれは綺麗に整備されている。

 花壇にはパンジーやサルビアといった一般的な植物から、少し遠くを見れば白いバラのアーチ。その反対を見れば藤の絡む離れのような建造物。下はうまい具合に日陰になっていて、木造りのテーブルセットが設置されている。


 これ、本当に小学校? と思わざるを得ない、現実離れした風景だった。


 バラのアーチをくぐると、そこは剪定された赤い薔薇の生け垣が迷路のように入り組んでいた。気分はまさに鏡の国のアリスだ。

 気づけば、椿は年甲斐もなく(といっても、身体はまだ6歳だが)夢中になって楽しんでいた。


 と、その時。



「ああもう本当にきれ……」


「きれい……わぁっ!?」



 ちょうど曲がり角。ふらっと突然、小さな影が姿を現した。

 まさかこんな所で人に会うなどとは思ってもいなかった椿は、突然のことに止まることが出来ずそのまま追突してしまった。

 反動か、勢いよく尻もちをついてしまう。



「いったぁ……、あっ! 大丈夫……じゃなくて、お怪我は!?」



 幸い地面は柔らかい草で覆われていたためそれほどの衝撃はなかったが、どうやら相手はそうでもなかったらしい。

 椿とは反対方向に飛ばされたその人物は、仰向けに倒れて声をかけてもピクリともしなかった。

 お怪我どころの話じゃない気がする。


 どうしよう、殺しちゃった!?


 そう思い慌てて確かめると、控えめに胸を上下させていた。どうやら気絶しているだけらしい。

 しかし、気絶しているだけとはいってもこのままにしておく訳にはいかない。



 椿はなんとかその”少年”を引きずりながら、保健室へ向かった。


この話をもって、20話達成しました!

総合ポイントは900、そしてユニークPV数もあと1000人ほどで10000人になります(感涙)

ここまで読んで下さった方々に感謝しかありません。

これからもどうぞ、「憧れの乙女ゲーム転生だけど、テンプレ悪役令嬢だなんて聞いてない!」をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ