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言われてこうくんは、は、と気づきました。
こうくんだって、どんなに怒られてもママが好きです。きっとりゅうくんも同じなのでしょう。
「そっかあ」
その時です。
こうくんの目の端に、きらりとしたものがうつりました。こうくんがそちらをむくと、小鳥が金色のメダルをくわえて、ちょんちょんと歩いています。
「あ! りゅうくん、あれ!」
「あ!」
二人でかけよると、小鳥はメダルを残して飛びあがりました。そしてこうくんにだけ、ばいばいをするように小さく羽根を振ると、そのまま飛んで行ってしまいました。
「あったあ」
りゅうくんは、小さいメダルを手にしています。たしかにそれは、りゅうくんのなくした金のメダルでした。
「よかったね、これで家に帰れるよ」
「うん。あのさ、こうくん」
「なに?」
「あの……いっしょに探してくれて、ありがと」
りゅうくんは真っ赤な顔をしてそう言いました。こうくんはそれが嬉しくなって、今日りゅうくんにいじめられたことなんてどうでもいいや、と思いました。
それから二人は、一緒に山をおりました。山をおりて少し行ったところに、りゅうくんの家があります。
「ただいま! ママ、あったよ!」
りゅうくんが喜んで玄関を入っていくのを、こうくんは後ろから見ていました。きっとママも、メダルをみつけたことをほめてくれるでしょう。
ところが。
「何時だと思っているの! どうせまだ宿題もやってないんでしょ? ご飯食べてさっさとやっちゃいなさい!」
りゅうくんのママの怒鳴り声が、家の中から聞こえました。りゅうくんはしょぼんとして、玄関のドアを閉めました。閉める直前に、こうくんに向かって手を振りました。こうくんも手を振り返しました。ドアは、静かに閉められました。
一緒にそれを見ていたおばあちゃんは、悲しそうに言いました。
「帰ってきたら、まずおかえりだよねえ」
こうくんは、おばあちゃんの渡してくれたランドセルを、ぎゅ、と抱きしめました。白い翼も、しょぼんとたれています。
「おばあちゃん」
「なんだい」
「いつも、おかえりって言ってくれてありがとう」
おばあちゃんは微笑んでくれましたが、眉毛がへの字になっていました。こうくんは、もう一度、閉まった扉に目を向けます。
「りゅうくんのママ、まだ怒っていたね」
「そうだね。きっとご飯作るので忙しかったんだよ」
こうくんは、ぽつりとつぶやきました。
「りゅうくんより、ご飯の方が大事なのかなあ」
おばあちゃんは、黙ってこうくんの頭をなでていました。