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「散歩だよ。りゅうくんは、何か探しているの?」
りゅうくんは、ぷい、とそっぽをむきました。
「なんだっていいだろ。お前には関係ないよ」
「ぼくも一緒に探そうか? 二人で探したら早いよ」
りゅうくんは、ちょっとだけ考えます。
「でも、もう暗くなる。こうくんだって、遅くなったらママに怒られるだろ?」
「今日はママ、遅いんだ。まだ、大丈夫」
「それなら、一緒に探してもいいぞ」
りゅうくんはえらそうにいいましたが、その顔は少し嬉しそうです。
「何を探しているの?」
「メダル。金のやつ」
それならこうくんも見たことがあります。
最近はやりのアニメのキャラクターが書いているメダルで、特に金のものはレアなのです。めずらしいそれを、自慢げにりゅうくんが見せてくれたことがあります。ママにとてもねだって買ってもらったものだと、りゅうくんは言っていました。
「ここでなくしたの?」
こうくんが聞くと、りゅうくんは困ったように首をかしげました。
「わからない。さっきポケットに入れて家を出て、やまとやでお菓子を買ってここで遊んで、帰ったらなかったんだ」
「わかった。ぼくはこっちを探すから、りゅうくんはそっちを探して。手分けして探そう」
「おう」
二人は這いつくばるようにして、短い草の生えた山の斜面を探し始めました。しばらく探しましたが、みつかりません。
「ないなあ」
もう辺りは暗くなっています。こうくんは、少し心細くなってきました。
「どうしよう。みつからなかったら、ぼく、家に入れてもらえないんだ」
りゅうくんは泣きそうな声で言いました。その顔を見ていたら、こうくんの胸も、きゅ、と痛くなりました。
どうしよう、とこうくんも心の中でつぶやきます。そうして、こうくんはいいことを考えつきました。
「そしたら、ぼくの家においでよ」
「え?」
「家に入れなかったら、ぼくんちにくればいいよ」
けんかもするけれど、りゅうくんと遊ぶのがこうくんは好きでした。一緒にテレビを見たりお風呂に入ったり、嫌な宿題も一緒にやればきっと楽しいと思います。
うきうきしながらこうくんはりゅうくんに言いましたが、りゅうくんは、うつむいて、ぎゅ、と自分の手をにぎりました。
「でも……ぼく、ママのいる家がいい」