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「おばあちゃん、おっかけっこしよう!」
「あらまあ、おばあちゃんはもう疲れましたよ」
おばあちゃんは、杉の木のてっぺんに座って休んでいました。
「いてっ」
一緒に飛んでいた小鳥が、目の前の枝にぶつかって声をあげました。
「あっ、大丈夫?」
「ああ。暗くなってきたから、目の前が見えづらいんだ」
「ほら、もう日が暮れるよ。そろそろ帰ろうか、こうくん」
こうくんが空を見ると、真っ青だった空が、端の方から茜色に染まってきています。
「でも、もうちょっと」
「じゃあ、あと一度だけ……おや」
おばあちゃんは、下の方に何かを見つけたようです。
「あれは、りゅうくんじゃないかい?」
「え?」
こうくんも下をのぞくと、そこにはりゅうくんがいました。
足元を見ながら、うろうろと歩き回っています。
「何かを探しているみたいだねえ。なんだろう」
山の中は木が多くて、もう薄暗くなり始めています。りゅうくんは時々ぐい、と顔をぬぐっています。どうやら、泣いているみたいです。こうくんは、ちょっとびっくりしました。
こうくんとりゅうくんはいつもけんかばかりしていますが、こうくんはりゅうくんが泣いているのを見たことがありません。
こうくんは、じ、と上からりゅうくんの姿を見ています。さっき見た光景が、またこうくんの頭の中に浮かんできました。
りゅうくんのママは、こうくんには怒ったりしない優しいママです。でも、りゅうくんの前ではあんなにこわくなるんだ、とこうくんは初めて知りました。
おばあちゃんは、心配そうに言いました。
「もう暗くなるのにねえ。あ、あぶない。転ぶところだったよ」
「ぼく、ちょっと行ってくる」
こうくんは、少し離れたところに降りてランドセルをおろすと、りゅうくんのところに走っていきました。
「りゅうくん!」
こうくんが声をかけると、は、としたように後ろをむいてりゅうくんはごしごしと顔をぬぐいました。もう一度こっちを向いたりゅうくんは、口をへの字に曲げて不機嫌そうな顔をしています。
「なんだ、こうくんか。なんでこんなとこにいるんだよ」