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気持ちよく飛んでいると、いきなり下から怒鳴り声が聞こえてきました。
「なにやってるの、あんたは! 探してらっしゃい!」
びっくりしてこうくんが下を向くと、そこではこうくんと同じ歳くらいの男の子がお母さんに叱られているようです。
「あ、りゅうくんだ」
こうくんたちは、ちょうどりゅうくんの家の上を飛んでいたようです。
「おや、本当だ。どうしたんだろうね、怒られているみたいだよ。ちょっとのぞいてみようか」
二人は気づかれないように、そおっと上から降りて行って、りゅうくんの家の屋根から下をのぞきました。
「だからちゃんとしまっておきなさいと、いつもママが言ってるでしょ! 毎日言われてるのに、なんでできないの。いうことを聞かないから、こういうことになるの!」
どうやらりゅうくんは何かをなくして怒られているようです。
「ママは、りゅうやのことだけめんどうみているわけじゃないのよ。お前はお兄ちゃんなんだから、自分のことは自分でしなきゃだめでしょ」
「でも……」
「でも、じゃない! あれ、いくらしたと思っているの。お前が欲しいっていうから、買ったんだからね。見つけてくるまで、家には入れないよ!」
ママが怒鳴っている前で、りゅうくんは、じ、と足元を見つめて唇をかみしめています。
こうくんは、さっきいじめられたことを思い出してちょっとだけ、ざまあみろ、と思ってしまいました。
「僕のこといじめるからだよ。いいきみ!」
べーと舌を出すこうくんを、おばあちゃんは困ったように見ています。
「でも、あんなに怒らなくても。かわいそうだねえ」
「かまうもんか。行こ、おばあちゃん」
こうくんはちらりともう一度りゅうくんの方を見てから、また翼をぱたぱたさせて高い空へと舞いあがりました。
☆
裏山につくと、こうくんはいつものように川をのぞいたりきれいな葉っぱを拾ったり、おばあちゃんと遊び始めました。今日は、小鳥も一緒です。
「こうくん、みーっけ!」
「あ、ずるいよ。君は空を飛べるんだもん」
かくれんぼをしていて小鳥に見つかったこうくんは、文句を言いました。
「君だって今日は飛べるじゃないか」
「あ、そっか」
こうくんは、放りだしてあったランドセルを背負うと、えいや、と空へと飛びました。