表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

- 1 -

「おばあちゃーん!!」

 こうくんが、泣きながら家に飛び込んできました。おばあちゃんは、いつものように日当たりのいい廊下でうとうとしていましたが、大きな声にびっくりして飛び起きました。


「あらあら、おかえりなさい、こうくん。どうしたの」

「おばあちゃああああああんん!」

 ランドセルを背負ったまま、こうくんはおばあちゃんに抱きつきました。


「あのね、りゅうくんが、僕のことね」

「はいはい」

 ぐしぐしと泣いているこうくんの体を、おばあちゃんはぽんぽんとあやすように叩きます。

 りゅうくんは登下校の班が一緒の、こうくんと同じ小学二年生のお友達です。


「帰りにね、いつもの班でね、帰ってたらね」

「うん、うん」

 興奮してつたないこうくんの話を、おばあちゃんはにこにこしながら聞いています。


「りゅうくんが運動着の袋をぶつけてきてね、るかちゃんにあたりそうになって、だめだよ、って、あぶないって、僕、かばったのね」

「うん、うん」

「それで僕がよろけて転んだらね、りゅうくん、僕のこと笑ったの。ひどいよね!」

 おばあちゃんは穏やかに笑いました。りゅうくんとこうくんはいつもけんかばかりしているけれど、実はとても仲良しなことを知っているからです。


「それは大変だったわね。こうくん、けがはしなかった?」

 全部話してようやく落ち着いたのか、こうくんはおばあちゃんから離れると、あらためて自分の手の平を見つめます。

「うん。あ、ちょっと、膝をすっちゃった」

「じゃあ、手当をしておきましょうね」

 こうくんのかわいらしい膝にすり傷があるのを見たおばあちゃんは、救急箱を持ってくると、大きなばんそうこうを一つ、こうくんの膝にはりました。

「こうくん、おやつがあるわよ」

「食べる!」

 ふたりは庭に続くガラスのサッシを開けて廊下に座ると、並んでおやつのクッキーを食べました。


 庭では小鳥がのんきにえさをついばんでいます。

「あーあ、僕も鳥になりたいなあ」

「こうくんが?」

「うん。そしたら、毎日お空をどこまでも遠くへ飛んでいけるのに」

 大きな青い空を、翼をはためかせて飛んでいく自分を想像して、こうくんはわくわくしてきました。

「鳥なら宿題もしなくていいいし、りゅうくんにいじめられることもないし、ピーマンも食べなくていいし」

「そうねえ」

 おばあちゃんは、首をかしげました。そして、庭におりてきた小鳥に話しかけます。


「こうくんは、鳥になりたいんですって。あなたはどう思う?」

「いいんじゃない?」

 ふいに、こっちを向いてその小鳥は言いました。こうくんはびっくりして目を丸くします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ