強い人間
本当に強い人間とはなんなのかをどんな人間であれ知らない。それに例外など存在しない。もちろん相模原誠一郎もそうだ。
しかし、誠一郎は弱さは知っている。それも最低の弱さをだ。それは、誠一郎自身が弱いのではない。
いじめている者が弱いのだ。自らの保身に走った者ではない。いじめている人間の方がいじめを受けている人間よりも弱いのだ。その事実をまだ誠一郎が知ることはなかった。
「理沙、俺は何でこんな理不尽な仕打ちを受けないといけないんだろうな」
放課後、誠一郎は幼馴染で親友でもあり最も気を許すことのできる友人、二条理沙にポツリと呟いた。その声は今にもかき消されてしまいそうなほどに弱かった。そしてその声を出す本人ももう限界寸前であることをその声は示していた。そんな微妙な変化をずっと見てきた理沙は口をつぐんでしまった。理沙自身も辛いのだ。親友でもあり最も大切な人でもある相模原誠一郎が陰湿で悪質ないじめを受けているというのに何もできない自分がいるのが辛く、そして許せないのだ。
「それはあいつらに聞かないと私もわからないよ。でも私は誠ちゃんは何も悪いことはしていないしと思うし。誤解が解けていない。…違う誤解だとわかっている。けれどもそれを認めるのが怖いんだわ。なまじ彼らは、クラスの中心に位置しているわ。そんな彼らが揃いも揃って間違いを認めたらクラスの信用は落ちる。おそらく彼らはそれだけは避けたいはずよ。だからそれを認めさせれば…」
「それができればとっくにやってるよ!!」
誠一郎の絶叫がしんとした教室に響き渡った。二人しかいない教室のため、音の反響がすごい。その反響は、いつまでも響いているようだった。
その絶叫は誠一郎の心の内側を表していた。恐怖、絶望、嫉妬、恨み、憎しみ。
数え切れないほどの負の感情。それが具現化した叫びだった。
「何でなんです俺が俺がこんな仕打ち受けなくちゃいけないんだ!!警察だって俺は何もしていないって言ってくれた!なのに!!」
誠一郎は泣いていた。理沙はこのまま誠一郎が壊れてしまいそうな程の気を感じていた。




