第2話 鉄道研究部
「部活何にしようかな~」
昼休みになり、陽子と二人で雑談中に出た話題である。みさきは特に希望する部活がなく帰宅部寸前である。
「みさちゃんさー、体力あるしウチの陸上部入ろうよ」
陽子は小学生時代に転校したあと陸上競技(短距離走)に目覚め、中学時代は県大会で上位に入っていたようである。
みさきはというと昔からよく兄に歩いてあちこち連れ回されたり、陽子と夜暗くなるまで野山を駆けまわっていたので無駄に体力がある。勉強より体育の成績は若干良い。しかしこの体力を生かしてスポーツ系を極めようという考えは毛頭ない。
「うぅ、ちょっとトイレ行ってくる」
みさきは突然もよおしてきたのでトイレに駆け込む。昔と変わらないマイペースぶりに陽子は苦笑い。
無事トイレも終わり教室への帰り道、廊下の壁に貼ってあるポスターに目がとまる。
“鉄道研究部 部員募集中 鉄道好きならジャンルは問いません。詳しくは2年岸乃まで”
何かびびっときたようだ。そして昔の記憶が蘇ってきた。
家の近所に国鉄線の車庫があり、幼少期によく列車を見に行っていた。車庫近くの公園に兄や友達と遊びに行ってもみんなが遊具で遊ぶ中、一人車庫のフェンスにしがみついて見ていた。国鉄形と呼ばれる古くて個性的な列車が多く、マニア的には見ていて飽きさせない場所となっている。
そう言えばあの時は黄色くて四角い電車やクリーム色に茶色ラインのケーキみたいな電車
とか貨物列車があったなぁ。
この電車はマニア的に言うとおそらく、カナリアイエローの103系、ケーキみたいなのは117系と思われる。このことから車庫は“宮原電車区(実在)”と思われる。
思い出にふけっていると昼休みも終わりに近づいていた。ハッと我に返ったみさきは急いで教室へと戻り、
「陽子ちゃん!あたしにピッタリの部活見つけたよー」
元気よく言ったもののすでに授業が始まっていて、周りの視線がいっぺんに注がれ痛く感じられた。みさきはばつが悪そうにそっと席に着いた。陽子の席を見ると教科書で顔を隠して肩を揺らしながら静かに笑っていた。
「あたしのこと笑ってたよね」
放課後、陽子に苦笑いしながら問い詰める。
「ばれてた?」
元気よく言ってからみさきの一連の動きが面白かったようである。またそれを思い出して笑い出す。
陽子とは部活があるので別れて、鉄道研究部の話を聞くために2年生の教室へ向かうことにした。途中、誰かの視線を感じたが分からないのでそのままスルー。
そっと扉を開けて2年生の教室をのぞき込む。教室は放課後だがかなりの人数が残っていて賑やかである。
「何かご用で?」
声のする方へ向くと、
わー、イケメンさんだ。
思わず心の中で叫んでしまった。男に無頓着なみさきでさえあたふたするぐらいのイケメン男子である。
「あ、あのー、岸乃先輩は、い、いますか?」
すると、そのイケメンさんが、
「おーい、いずみー、カワイ娘ちゃんがお呼びですよ」
あたしがカワイ娘ちゃんだなんていややわー。
嬉しがっていると岸乃先輩が出てきた。それと同時にみさきが驚いた表情になる。
「え?岸乃先輩って、いずみくんだったの?」
いずみとは家が隣同士で1つ年上の幼馴染みである。もちろん陽子とも旧知の仲である。ではなぜ今までいずみだと気づかなかったのか?それはみさきは幼少期からずっと下の名前で呼んでおり、苗字をあまり気にしていなかったからである。それにしても今まで気付かなかったのにはマイペースにもほどがある。
「それでね、鉄道研究部のことで話を聞きたいんだけど」
言い終わらないうちに、いずみは目を輝かせながら、
「ひょっとして入部希望?いやー、良かったよ。部員が不足してて廃部の危機があるんでね」
入部するとはまだ言っていないのに早合点するいずみ。それだけ部員不足が深刻なのである。
この鉄道研究部は、“撮り鉄”や“乗り鉄”などの王道をはじめ、鉄道模型のジオラマ作成や鉄道DVD鑑賞、鉄道のゲームなど鉄道関連なら何でもオーケーな部である。昨年までは熱心な先輩が多数在籍し、すごく賑わっていたがほとんどが3年生だったので卒業してしまい3人にまで減ったのである。
「それじゃあ、明日みんな集まる日だから放課後に部室に来てくれるかな」
みさきにピッタリの部活が見つかりそうである。期待に胸を膨らませつつ家路につくのであった。




