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行くぞ!僕らの悪代官!

 思い付いた事を文章にするのに、相変わらず苦労します。心機一転新しいペンネームで始めてみました。

異世界です設定資料なんかは纏めていません、剣と魔法のファンタジーなんですがバトルシーンはありません。



 夏の暑さも遠ざかり秋も深まったある日、悪人面の男が2人

上座に座る恰幅の良い男に、胡散臭い見かけの商人風の男が話しかける


「お代官様、ご注文通り御子息の部屋に…… それはもう見目麗しい者を……」


すると、お代官様と呼ばれた男がニヤケながらに口を開く


「ほほぅ…… アレも困った者よ…… しかしこちらの方にも何かあるのではないか?」


左手に持った盃から酒をあおりつつ下衆な笑みを浮かべながら男が問うと、商人風の男は後ろに置いてあった風呂敷包を解き桐箱を取り出し悪い笑みを浮かべて


「それはもう、お代官様にはこちらの…… 山吹色の菓子を。」


「分かっておるではないか!女や酒も良いが、ワシは山吹色の菓子に目が無くてのぅ。」


「それではお代官様、あの件は……」


「皆まで言うな、分かっておる分かっておる、件の者には降りて貰うとしようかのぅ、しかし毎度ながらこのような事を企てるとは、オヌシも悪よのぅ……」


「いやいやお代官様ほどでわ……」


その時だった、何処からか聞こえる笛の音と共に、男2人のものではない声が響く


「おうおう!てめえらの悪事お天道様が黙っていても、俺にゃあ見過ごす事ぁ出来ねえなぁ!」


お代官様と呼ばれた男が立ち上がり障子を勢い良く開け放つとそこには、狐の面を付け派手な着流しの男が月の光でハッキリと見える


「何奴じゃ!そこで何をしておる!」


「悪い悪いと泣く星に、行けよ行けよと喚く月、悪事を暴き悪人共を成敗する為、星と月に導かれ、栗太郎侍参上!」


「何を馬鹿な事を言うておる!悪事じゃと?とんと覚えのない事を!成敗するじゃと?片腹痛いわ!独りで何が出来る!者共!曲者じゃ!出会え出会えぃ!」


そして何時もの如く退治される悪代官一味……

この話は、そんな悪代官一味目線の話。




〜三年前のとある日〜



 「到着早々だが領内の収支報告書や陳情書等、改竄された物、握り潰された物を調べ、治安に関わる事から優先的に順次報告を上げるように。」


着任早々に執務室へ入り、側近数名に最初の仕事を口頭で伝えるのは、我が父であるジロー・フォン・タカハーシ子爵その人である。


目つきが悪く目の下に濃いクマがあり、背も高く肥満気味な体型のせいで、何処からどう見ても悪人に見えてしまう。


だが見た目とは裏腹に本人の人となりは、誠実、実直、清貧、常に他人を思いやり弱い者には背中を押して盛り立てて、罪ある者には凛として立ち向かうような人で、家族の贔屓目無しに見ても尊敬出来る素晴らしい人物である。


そして、そんな素晴らしい人物である父の仕事は『悪代官』である!


ん?と思う人も多いかもしれないからもう一度、父の仕事は『悪代官』である。


「何を考え込んでいる、何時ものように骨伝導通信具を付け、領地内の三下共を纏めあげよ。」


父からの言葉に目礼だけ返し、父の執務室を後にする。

私に与えられた仕事は、代官の嫡男と言う立場を利用して領内に居るチンピラ達を一手にまとめ上げる事である。


何故そのような事をするのか?と聞かれたら、まずこの領地の現状と悪代官と言う職業について説明しなければならない。



 『王家直轄領海洋貿易都市』


国の最東端に位置する海上貿易が主な産業の王家が直接管理する町なのだが……

禁制の品々の密輸、禁止されている人身売買及び他国への奴隷の輸出、商人工人海運ギルド等の大手ギルドを含む大小様々なギルドと町役場ぐるみの多額の脱税、弱者を助ける筈の協会すらも賄賂がはびこり、力の弱い者は虐げられ、金と暴力で何でも出来ると勘違いしている者達によって運営されている。


そして前任代官の任期が切れ、新しい代官として着任したのが職業『悪代官』の父なのだが、こんな街に悪代官が来たら更に酷くなるのでは?と思う人も居るだろう、だが誠実で真面目な代官だった場合、悪人達がどういう行動に出るか分かるだろうか?


真面目な代官が着任すれば、表に出ようとせず、今より狡猾に狡賢く水面下に潜み、任期切れで居なくなるのを待つだけなのだ。

しかし代官が悪人だった場合は?

同族と認識されてしまえば、頭を下げ、ごまをスリ、賄賂を送り、あの手この手で籠絡しようとしてくる、街の中に潜む膿を出し切るには、真面目な代官では無く悪代官で無ければならないのだ。



 父の部屋を出てあてがわれた部屋に向かう、机の上に用意してある小箱から鼻ピアス型の骨伝導通信具を取り出して付ける『骨伝導通信具』とは、簡単に言うと内緒話出来る通信具である。

我が家の直参である騎士爵を含む爵位のある貴族全員に配られるもので、もちろん父も付けている。


「総合通信室、こちらスリー、聞こえますか?聞こえますか?」


骨伝導通信が繋がっているか確認すると、数秒も待たずに返事が返ってくる。


「こちら通信総合室、通信感度良好、問題ありません。」


きちんと繋がっている事を確認したら、早速仕事に向かう、まずはチンピラを数人捕獲して、そこからはなし崩し的に捕獲していくとしよう。



~半年後〜



 この半年間の経緯をざっと説明しよう。

まず最初にした事は、売ればいい金になりそうな服を着て歓楽街を歩く事から始めた。

すると集まる集まる、ゴブリンの巣に女性を投げ込んだように、見た目蛮族もかくやと言わんばかりの服装で、卑猥た顔で暴言を吐きつつ集まってきた。


幼い頃より一流と言われる武人達から手ほどきを受け、1日たりとも休まず鍛え続けていれば蟻を潰す程度の労力で従える事が出来た、新しい代官の嫡男だと教えれば、そこからはあっという間に町中のチンピラ共を傘下に収める事が出来た。


 その時期の父は、街中の顔役達とよしみを深めていた。


〜更に半年後〜


 町中の暴力を生業とする者達を傘下に収める事が出来た、詳細は省くが……

これからは組織を二つの派閥に分けて喰い合わせるために色々と水面下で動く事になる。


 父の方は、既に王家直轄の隠密部隊を町中の組織に間者として忍ばせ。こと細かくこれまでの不正を調べ上げている最中であり。更に、かなりの金額の賄賂を受け取り。受け取った賄賂は全て領主館の秘密の部屋に保存しつつ、王都の審議官に細かく報告書を提出している。

受け取った賄賂は、成敗された後に町の復興に全額充てられる予定だ。



〜更に半年後〜


 こんな腐った街ではあるが、真正直に生きて居る者達も居る、悪人達が目立ち過ぎているだけだ。

見た目貧乏そうな子供がパン屋の前で腹を鳴らせていたので、上等な白いパンを買って与えてやった。


「物欲しそうに眺めているのはなんと滑稽な事か!ほれ、拾え。」


出来るだけ汚れないよう、綺麗な石畳の上に投げ捨て拾わせる。心の中で、すまないすまない、と謝りながら。

取り巻きのチンピラ共は、娼婦の乳房を揉みしだきながら、その子供を笑っていた。

後で聞いた話だが、拾って砂を払った後にひと口も口を付けづ、幼い妹弟に与えていたそうだ。


 その時期の父は、人身売買からの奴隷となって他国に売られる者達を、内密に王国海軍を指揮して保護していた。保護された者達は、父の任期終了まで王家が保護する事になっている。財源はこの街で受け取った賄賂である。


〜任期3年目〜


 暴力を生業としている者達の派閥争いは、順調に進んでいる。王家直轄の隠密部隊に抗争に見せかけ1人また1人と処理してもらっている。

死罪、もしくはそれに準ずる者達だけをターゲットにしているが、その者達は、残りの人生を逃げる事すら不可能な鉱山送りからの強制労働に、自由になるのは命が尽きた時だけである。


 口減らしの為に娼館に売られ、不当に安い賃金で働かされている女達をチンピラ達と共に娼館を襲撃して保護した、傍から見れば悪代官の馬鹿息子が無理矢理に女をはべらかしているようにしか見えない。しかし愛する婚約者の居る身だ、指先1つ触れてはいない。


チンピラ達に、双方同意があれば恋仲になっても構わないと言えば狂喜乱舞していた。

数人のチンピラ達が、子供が出来たから足を洗いたいと言ってきた。そいつらの口に銀貨を数枚押し込み、殴りながら二度と面を見せるなと言って追い出した。

真面目に働いてくれる事を祈る。


 その時の父は、成敗される為の計画書の作成と粛清する相手の選別をしていた。受け取った賄賂は、既に同規模の町なら数年は潤滑に運営出来る程の蓄えになっている。



〜成敗される2週間前〜



 骨伝導通信で今回の正義の味方となる予定の者が町に入ったと連絡を受けた。報告通りの派手な服装をした剣士だった、チンピラをけしかけて『覚えてやがれ!』と雑魚の見本のようなチンピラ達に少しニヤケてしまったが、ファーストコンタクトは成功である。


ここからは一気に計画が進む予定である、細心の注意を払いながら総合通信室と連絡を密に取りつつ手順通りに進めて行く。

以前から目を付けていたように見せかけていた、真っ当な商売をやっている商会の会頭の娘を手に入れるようにと汚職商人達と暴力を生業とする者達の派閥争いのトップ共に、いかにも馬鹿息子と言われそうな口ぶりで命令しておいた、正義の味方役の男は、その会頭の家に厄介になっているようだ。


 その時の父は、騒動が終わった後の処理を王都の審議官に頼みつつ、結界の指輪や直属の配下達にやられ役の指導していた。もちろん爵位無しの者達には極秘理に。



〜成敗二日前〜



商会の会頭を無理矢理拉致って来た、出来るだけ危害を加えずに……

しかし馬鹿チンピラ共が数発蹴りを入れていた。

牢屋に押し込んだ後に、元気になったら拷問してやると言いながら牢番についている騎士にきちんと手当をする事と生活の面倒を見るように伝えておいた。

後は娘を連れて来ればほぼクライマックスに近づく。


 その時の父は、成敗される時に必要の無い人間達に3日休みを与えて。領主館には必要な人間のみをのこし、リハーサルをやっていた。後は本番にミスをしないように気合いを入れるだけだった。



〜成敗当日、正義の味方登場直前〜



 父を助ける代わりにと連れてこられた娘は、それは見目麗しい美しい人だった、真っ白な肌、艶やかな髪質、桜色の唇と大きな瞳。

しかし、あてがわれた部屋で椅子に縛り付けられ自由を奪われ。その表情は、これから起こる事に対して恐怖の色が浮かんでいる。

総合通信室から正義の味方登場と父達が制圧され、正義の味方がこちらに向かっていると報告を受ける。

その直後に娘に向かって行く卑猥た笑みを浮かべながら。


 総合通信室から娘の服に手を伸ばせと指示が来る、伸ばした瞬間ドアが吹き飛び、正義の味方に後ろから吹き飛ばされた。

結界リングは既に発動済だから痛くは無いが、気絶したフリをする。続けて強制的にスタンする魔道具を起動してフリから本当に気絶する。後は隠密部隊に任せる事になっている。


 その時の父は、部下と共に魔道具を起動して気絶していた。



〜3日後〜



 王都から王家直属の騎士団が、タカハーシ一味を受け取りに来た。爵位を持つ貴族は、王都の査問会で直接裁かれるからだ。

正義の味方は牢屋入れた会頭と私の部屋で縛り付けられていた娘を救い出した後、騒ぎが大きくなる前に町から出て行ったようだ。


成敗当日に館に居た人間は、全員捕らわれた。

町の大通りを檻のある馬車に入れられて大門に向かいつつ町人達に晒されている。

以前、足を洗いたいと言って抜けていったチンピラ達が、以前とは比べ物にならないような、真っ当な服装で、護送される馬車を見ていた。


何故か悲しそうな顔をしていた。



〜大門を抜けて二時間後〜



 街道を進み山脈に差し掛かって町が完全に見えなくなった。


「タカハーシ卿、その他の皆様もお疲れ様です。」


近衛隊長から声を掛けられ護送馬車から降りる。

既に迎の馬車が待機していた場所まで辿り着いたようだ。


「今回の町は酷いものだった、これから良い方に向かって行ってくれる事を願うばかりだ。」


父と近衛隊長の会話を遠目に見つつ、三年と少し過ごした町の事を思い出す……


父から送られた報告書で町の主要な悪人達は罪を償う事になるだろう。


虐げられていた人々は解放されるのだろう。


あの時パンを与えた子供が大人になる頃には、良い町になっていてくれる事を願うばかりである。


用意された貴族用の馬車に乗り込む時に空を見上げる、雲一つない秋晴れの空だった。



もしかしたら連載するかもです。でも連載するとなると書き溜めてからになると思います。

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[良い点]  ストーリーはよく考えられていると思いました。 [気になる点] 「。」を使うべきところで、「、」を使っている。  主語や目的語の省略が多すぎる。特に、主語をもっとちゃんと書いた方が読みやす…
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