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スライム ギノ 洞窟編

作者: イヴ

夏休みよさようなら

(あらすじ)

ギノ達は強くなった。そのせいで強い人に目を付けられ仲間は殺されてしまった。仕方なく近くの町で少し凄し、洞窟に行った。

しかしながらその洞窟ではマーメイドが人間の騎士に襲われていた。そこでその場のマーメイドと協力して人間を追い払い、事なきを得た。

そして棲み家に目処を立てて移動を開始した。



ギノ達は西の洞窟に向かって進んでいた.

(ところでミノタウロスが倒されたってことは相当強い人がいるってことだよね?そんなところに暮らして大丈夫なのかな?)

(ハクの言うことももっともじゃ,そのあたりはどう考えておるのじゃ?)

(そうか,みんなにはいってなかったっけ?リーフ,この前の話をしてあげて.)


(実はな,棲み家については元々考えていたんだ.ルーパで暮らしてる間に市場での商人たちの会話を聞いていたら今向かってる洞窟の話をしていたんだ.)


商人A「そーいえばミノタウロスの洞窟でなんかあったらしいな.」

商人B「そうなんだよ,海を渡ってきたすごく強い人が倒してくれたんだよ.俺はその話を聞いてすぐ洞窟に向かったが,既にお宝はほとんどなかったなあ.」

商人A「強い人ってまさか1人で倒したのか?なにものだ?」

商人B「話を聞くと東から来たらしいんだ.だがこの大陸が東の端だろ?聞いてみると海の果てを越えてきたらしい.」

商人A「信じられないな.証拠はあるのかい?」

商人B「証拠はないが,魔法を色で呼ぶ不思議な人だったよ.火を赤,水を青ってな感じで呼んでいたんだ.知識がないにも程があるだろ?なんでも名前で才能が決まってるらしいが,宗教かなんかだろ.鎌を担いでいて格好もここらでも見ない奴だったから俺らは信じたさ.」

商人A「その人は今どこにいるんだ?」

商人B「名前はシドさんと言うんだが,水晶にみたいなのにぶつぶつ話してまた元の大陸に戻ることになったとか言って帰っていた.最後にジェクトの馬鹿やろーって海に向かって叫んで帰ったよ.いったいなにものだったのか.」


商人A「そっか,一目見たかったが仕方ないな.」


・・・・・・・

(ってなことがあった.)

(つまり強い人は遠くから来て遠くに帰って行ったってことね!!)

(ああ,まあそういうことだな.俺もミノタウロスの洞窟の名前が出るまで忘れてたぜ.)



そして夜,洞窟に到着した.

(まだ人が来ないうちに用意しちゃおう,明日は様子を見て明後日から狩りの開始だ.)

巣を掘る.頑丈に部屋を作る.荷物を運びこむ.使いやすく武器を確認する.洞窟を奥まで探検する.

(よし,一通り終わったから交代で睡眠をとるよー.)

(長老はもう寝てるし疲れてるだろうから2人ずつだな.ギノとリーフィアが先に見張ってくれ.ハク,寝るぞ.)

(あっうん.おやすみ二人とも.)





洞窟の入り口にて.

(月がキレイだね.)

(ええ,そうね.)


ギノは告白しようと必死に考えていた.元が人間だっただけにスライムの自分に確かな自信が持てないのだ.しかし思い切って定番でせめる.

(なあリーフィア.俺,毎日お前の味噌汁が飲みたいんだ.)

(味噌汁ってなに?)

(あっいや,手作りのスープ的な.)

(だったら私はリーフのが飲みたいわ.一番美味しいもの.次はギノのが美味しいわ.なにかあったの?もうスープは作りたくないの?)


駄目だ!もっとストレートに伝えないと.

(そーゆー訳ではないんだ.つまりだな.俺の子を産んでくれないか.)

(??私たちは細胞分裂で増えるのよ?子供を産むなんて人間的な表現ね.私と合体したいってこと?)



スライムの分裂方法は1つではない.多くは(つがい)が合体することによって大きくなり,それが分裂して子供を産む.大人は少し若返り2人分の知識を手に入れる.人格は元になった方が強いが任意でどちらの人格にもなれる.

ちなみにリーフは純粋に1人で分裂したため,人格も1つしかなく,長老は合体しているが,そもそも普通のスライムは強い自我を持っていないのでどっちの人格などと気にすることはない.

(私たちの場合人格はどうなるのかしら?)

(合体は,いずれはいいかもしれないけどそうじゃないんだ.俺はリーフィアが好きでずっと一緒に居たいんだ.)


ギノとリーフィアの皮が真っ赤になった.

(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)

(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)


(よく聞こえなかったからもう一回言って?)

(ずっと一緒に居たいんだ.)



結局朝まで続き,見張りが変わることもなくみんなが起きてから2人は爆睡した.



そして翌日,洞窟に早速商人がやってきた.冒険者の護衛を4人付けた商人で人相が悪く,冒険者も悪そうで弱そうな人間だった.

商人「大分出遅れましたねぇ.まだ余ってるといんですが.みなさんお願いします.」

冒険者A~D「へーい.」


(来たぞ,商人はワシでも簡単だから残りを1人ずつ頼むのじゃ.)

((((了解!!))))


商人「掘り出し物でも出てくればいんですが.まあ最悪ここら辺の魔物を持って帰れば赤字にはならないでしょう.邪魔なミノタウロスも死んだし私の時代ですかねえww」

(こいつは簡単じゃの.)

長老が後ろから荷車に飛び乗り,さっと首を掻いた.

(さあ荷物を運ぶかの.こっちの方が疲れるわい.)


洞窟内では冒険者4人が別れ道に来ていた.

「二人ずつでいいだろ?」

冒険者が別れた.


(じゃあ始めるけど,こいつらで罠はもったいないからその前に仕留めること.)

(じゃあ今日は俺とハクでやるからお前らは休んでろ.)


(わかった,逃げられるのだけは厄介だから入口で待ってるとするよ.ハク,1つお願いがあるんだが・・.)

現在,ギノは主に魔法で戦っているため洞窟内では2次災害の可能性があり,リーフィアの機動力も洞窟が狭いため生かしにくい.ひとまず2人は様子を見ることになった.

「なああそこに宝があるぞ?」

「あからさまじゃないか?」

「いいじゃないか,とりあえず近づいてみよう.」


「おい返事しろよ,どうしたんだy・・・.」


音もなく冒険者は倒された.

(ホントにレンジャーになってから気づかれないんだよな.)


「こっちの道失敗だったんじゃないか?」

「そうだな.何にもない.それどころが魔物も狩り尽くされているのか出てこないじゃないか.」

「なんだ.スライムかってうわー.靴ごと足が斬られた.」

「なんなんだ.とりあえず殺して..」


振り下ろした剣がスライムに受け止められ,更に押し返されてしまう.どちらも両足を切断され,逃げることもできなくなった.

(ギノさん,生け捕りに成功しましたよ.)


ギノがハクに頼んでいたこと,それは伝心を試すために冒険者の生け捕りだった.念のためハクにそばにいてもらい,残りのみんなは荷物運びを.そして冒険者との交渉が始まる.





(聞こえるか?いくつか質問がある.質問の答え以外は話すな.質問を終えた時点で多く答えた方を生かす.)

「何を言っているんだ!?」

「お前は何者だ!?」

(まずは名前を言え.)

「交渉するなら顔を見せろ!!」

(わかった.)

冒険者達の前にギノが現れる.

「スライムだと??馬鹿にしやがって.いいから出て来い!!」

(やっぱスライムって舐められてるよね.ハク,うるさい方殺していいよ.)

(わかった.頑張ったから先に生きたまま内臓食べていいよね?)

(ああ,いいぞ.)


「待っまってくれ,俺はシュウだ.」

(わかった.もう1人を片づけるからちょっと待ってろ.)


「ふざけるなよ!,お前らなんかに俺は・・.うわー.」


うるさい方の冒険者が泡を吹いて気絶した.

(やっぱ生きてる時は内臓美味しいよね.死んだらすぐに腐っちゃうからあまり食べれないし.)


(ハク,終わったら分解しといてくれ.)

(了解!!)




(ではシュウさん,交渉を始めましょう.)

「頼む.家族がいるんだ.帰してくれ.」

(先ほど言ったように生かしてはおきますが日頃の行い次第ですね.ここにきた経緯を話してください.)

「さっきまで高圧的だったのに本当に人間みたいな話し方をするんだな.伝心を使えるスライムなんて初めて見たよ.はぁはぁ,すまないが先に止血だけしていいか?」

(確かに死んだら困るな.今治療できるものを呼ぶ.)


(長老,急いできてくれ.リーフィアに運んでもらってなるべく早く頼む.)




「ありがとう.全部スライムなのか?ああ,質問に答えるんだったな.俺は近くの村に住んでいたんだが・・・.」



まとめよう.この男はこの近くの村に住んでいて妻が元Aランクの冒険者らしい.娘と遊んでいるところを奴隷商人に襲われ,娘が連れ去られそうになってしまう.そこで娘の無事を自分と引き換えにしようと商人の奴隷になった.契約によってその場にいた奴隷商人達は娘に手を出せなくなったが,代わりに自分に娘を捕まえるよう命令を出し,娘も捕まりかけたが妻が駆けつけて娘は無事に逃げられた.


(元Aランクなのにその女は逃げたのか?)

「敵は大勢したしAランクを名乗っている護衛も一人いた.とても娘を守りながら戦える状況ではないため逃げてもらったんだ.俺がなんとか逃げ出さないと妻が無謀な戦いを挑むことになってしまう.」

(正直人間はどうでもいいがおまえがいい人間なのはわかった.長老,ハクがキレイに斬った足を繋げられるか?汚れないように魔法で浮かせてはいたが.)

(やってみるぞい.)


(お前はホーリーナイトにあったことがあるか?)

「いや,ない.噂なら少し前に聞いた.」

(どんな噂だ?)

「少し離れた洞窟で知恵のあるスライムが大量発生したらしい.元凶のギノという人間を探しているらしい.」

(人間にそんなことが可能なのか?)

「わからない,ただ話を聞いたって男は妖魔かもしれないから見つけても連絡するだけにするように言われたらしい.」

(なるほどな.この洞窟の周辺には何がある?)

「小さな村がいくつかとトパーズという町,そして奴隷商人の館だ.表向きは合法な奴隷しか扱っておらず,護衛も多いため誰も周囲には近寄らないようにしている.」

(奴隷狩りは結構あるのか?)

「奴らの話が本当ならば,ちょうどこの洞窟のミノタウロスが倒された頃かららしい.その前は大きくなってからはやってないと言っていた.今頃妻が騎士達に報告している頃だと思う.」

(俺はこの前騎士に仲間の住み家を襲われて撃退したが,逃がしたら奴らに報告するか?)

「してはいけないというならしない.言葉がわかるなら争う必要はないだろう?」

(だが食事の為に人を襲うこともある.人間も強くなるためだけに魔物を襲う.それなのに俺を売らないのか?)


「俺は家族が一番だ.どうやらお前は後悔しているような言い方だが,もし罪悪感があるなら悪い人間を食料にすればいい.少なくても俺は一緒に来た奴らを殺してくれて嬉しかった.ただ今日中に誰も帰らないと本隊がやってくるかもしれない.一緒に居た商人は奴隷商人の頭の息子だったから心配している頃だろう.」


(ここに入ってきたら殺すか逃げるから問題はない.お前の処遇は一日待ってもらっていいか?)

「わかった.できれば妻子に連絡を取りたい.手紙を届けてもらうことはできないだろうか?見返りは用意できないが誠意で答える.多少の役には立てるはずだ.」

(わかった.食料も荷車にあったものを運ばせる,今日はここで寝ろ.今は俺の仲間しかこの洞窟にいないから安全なはずだ.)



(ハク,さっきの話を二人にしといてくれ.俺はリーフィアと言われた場所に手紙を届けに行く.)




近くの村にて

アンナ「どうして騎士は動いてくれないんだ.私だけで助けに行ったらカンナはどうなる?シュウを助けるにはどうしたらいい?」

カンナ「ママごめんね?カンナが外に出たいなんてパパにお願いしたから.1人でお留守番できるよ?」

元Aランクの冒険者アンナと泣いているアンナの娘,カンナが話をしていた.周囲の家は話を聞いて一緒に閑散としていて,村人に中には一緒に戦いに来てくれるという者もいるがまず勝てない.どうしようか頭を悩ませていると唐突に伝心を使われた.

(アンナだな.窓にシュウからの手紙を置いた.確かに渡したぞ.)

「なんなんだ一体?」

窓を見ると確かに手紙が置かれていた.


アンナ,カンナへ

心配かけてすまない.俺は今奴隷商人から助けられて洞窟で匿われている.助けてくれた人の都合で少し遅くなってしまうかもしれないがきっと帰るから待っていてくれ.

シュウより



アンナ「ねぇママ,なんて書いてあるの?」

カンナ「パパは無事でもう少ししたら帰ってくるから待っていてくれって書かれてるのよ.」

2人で涙を流して喜んだ.きっと帰ってくると信じて.




翌日

(お前を帰してやるが,ついでに奴隷契約の契約書を破棄させてくる.長老とハクが一緒に残るからなにかあれば地面に書いてくれ.文字なら長老が読めるから.)

「わかった.ありがとう.大人しくしておくよ.」


ギノ,リーフィア,リーフは奴隷商人の館の前に来ていた.

途中に罠があったがリーフが見つけ回避した.というかほぼ人間か大型の魔物用なのでスライムが引っかかる心配はほぼない.

(計画通りにリーフが潜入.人数や配置に変化がなければリーフィアと俺が左右から攻撃.変化があればリーフが一回戻ってきて作戦を立て直すってことで.)

(OK,行ってくる.)

(私は空から反対側に回るわね.)




(大丈夫だ.1階に10人,2階に8人,3階の大部屋の前に3人,恐らくその中に護衛と頭がいる.)

(じゃあリーフは騒がしくなったら2階の端からお願い.作戦開始.)

(フレイムボール!!)



突然屋敷が揺れた.

東側に魔法で攻撃をしかけられたらしい.まぁたまにあることだ.大人数ならもっと早く気づくだろうし1階の傭兵だけで十分だろう.


4回大きな揺れを感じたが収まったようだ.指示を出して2階の傭兵と1階の傭兵に消火させよう.


2階で3名殺されていて1階とは連絡が取れないようだ.この襲撃と昨日息子が帰って来ないのは関係があるのか?どっちにしてもこのままでは燃えてしまう.仕方がないので部屋の外の見張りも全員で固まって警戒しながら消火するよう指示を出す.

なに,この部屋にはAランク冒険者にBランクが2名もいるんだ.敵が何人いても問題あるまい.


外からドアが壊されて内側に飛んできた.見てみるとスライムが一匹いた.

(貴様がワルネコだな?隣にいるのがAランク冒険者のワルヒト,前にいるのがハイエナブラザーズか?)

ハイ「俺達はそんな名じゃない!」

エナ「そうだそう・・.」

リーフィアが1人の首を斬ってワルヒトを狙う.

「この程度造作もないわ!」

(止められた,一回離脱するわ.)



リーフィアのスピードは時速200k近く出ており,並みの人間なら反応出来ない速さのはずだ.Aランクは確かに強い.


(そこまでだ.ワルネコを見て見ろ.)

エナ「なんだと?」

「・・・.」


ワルネコにはリーフが剣を当てていた.

(仲間が首を斬る前に投降しろ.命だけは助けてやる.)


ワルネコ「お前ら言うことを」

ザシュ.ワルネコの血が飛び散った.

「今いいところなんだ.邪魔をするなよ.」


ワルヒトがワルネコ毎リーフを斬りに行き,リーフは核すれすれでなんとか避けることに成功したが,斬られた酸が飛び散ってしまった.


(リーフ逃げてろ.)

(リーフィア,隙を見てエナを殺せ.ワルヒトは俺がやる.)



「杖みたいなのを持っているのが一番強いのかな?楽しみだ.」

エナ「なあ,雇い主斬ったらまずいんじゃ.ってなにしやがる.」

ワルヒトはエナを斬りつけ,ギリギリで躱されたことに舌打ちをした.

「邪魔だ.お前では殺しても楽しくない.」

エナ「なんだとー!!」

エナがワルヒトに斬りかかるとき,後ろからリーフィアが首を斬って殺した.

(私ももう出来ることがないから先に出てるわね.逃げがす人達と合流してるわ.)




燃える屋敷.豪華な広間.向かい合う1人と1匹.

「名を聞こうか,スライム君.」

(俺はギノ,お前たちが余りに悪人だから殺しに来た.)

「さっきは投降したら助けるとか言ってなかったか?」

(死んでないとはいえ俺の仲間を斬ったお前は許さない.)

「さあかかってきなよ.」


(ウォール!!×4)

「なんだい?俺との間に魔法で壁なんて立てて.防御のつもりかい?」

ワルヒトがウォールを斬りつけて傷が入るが,壊すほどの時間は与えない.

(ファイアーボール!!,フレイムボール!!)

右から狙い剣で受けさせ,左から更に強い魔法で躱させる.

「凄いな.この前殺した魔法使いよりも出来るみたいだ.」

(ウォール!!×2)

「また強化したのかい?見た所もうほとんど魔力が残ってないみたいだね.それでは俺を倒せないじゃないか.」

再びワルヒトはウォールを斬りつける.

(プチファイアーボール!!×20)


(はぁはぁ,これでなんとかなったな.魔力がギリギリだ.)


「そんな小さな火を当ててもダメージにはならないよ.それにしても熱くて息苦しいな.」

小さな火の玉がずっと周りを漂っている.

「なんなんだ.こんな火くらい.はっ.」

玉を斬りに行くが半分位避けられて体力ばかり削られていく.

「燃えているからって息が苦しすぎるぞ?このままではやばい.」


ワルヒトが周りを見ると自分の周りを囲われていて,密閉されていることに気づいた.

「なるほどな.窒息させようとしていたのか.だが甘い.「ウィンドエッジ!!」」

天井に風の刃が飛んで行くが,天井の裏にもウォールが張られていた.

「やばい,ホントに死ぬ.後は下か.」

しゃべるほど酸素がもうなく徐々に意識が薄れていく.

「せめて戦って殺してくれ.こんな死に方嫌だ.」

(それがお前への報いだ.)

「・・・.」


ワルヒトの意識は徐々に遠ざかって行き,二度と目覚めることはなくなった.



(みんなお待たせ.)

屋敷の外で待っていたのはシュウと同じような境遇の3名と屋敷の財宝そしてリーフィアとリーフだ.

3人の話は聞いていなかったが1階の外側の見張りであり,服装が傭兵と違っていた.そこで殺す前に聞いてみると奴隷にされて助けて欲しいと言ってきたのだ.屋敷を燃やすことを伝えて宝を持ち出してもらったのが3階に行く前の出来事だ.

1階の5人をリーフィアが,2人をギノが,2階の3人をリーフが殺し,後続はギノがまとめて燃やした.

そして戦う下の階に粉塵爆発を起こせるように粉を撒き,戦いへと望んでいた.粉は昨日石炭を粉状にしたものと,濃度の関係で屋敷にあった小麦粉などを撒いた.

結果として後処理でしか爆発は使わないことになったが,ワルヒトが地面を貫通するような攻撃をしていたら下から爆発で吹き飛ばされたはずだ.


(とりあえず,元ミノタウロスの洞窟に戻ってからいろいろ話すよー.)



洞窟に帰ると,襲撃があったらしいので止めを刺して隠すように伝える.流石に傭兵をダルマにして内臓をすすっているハクを人間には見せられない.


(人間のみなさん,まずは質問に答えて下さい.)

シュウにしたのと同じ質問をしたが,ホーリーナイトとは誰も直接は会っておらず,似たようなものだった.


(最後の質問です.俺達は存在を公にしたくないので,アナタ達は絶対にこのことを他言しないと契約を結ぶかここで死ぬかしか選べません.どっちを選びますか?多少なら質問に答えますよ.)


「なぜホーリーナイトを探している?」

(ジークハルトというホーリーナイトに他の仲間を皆殺しにされたからだ.)

「あっ.さっき話したギノってのを探しているホーリーナイトの名前が確かジークハルトだったぞ.3ヶ月後位に戻ってくるそうだ.」

(そうか,ありがとう.いいことを聞いた.他に質問は?)

「俺は妖魔には魂は売らないし取引もしない.お前らの正体はなんだ?」

(ただのスライムさ.俺だけ転生者だけどな.生前は別の世界でスギノと呼ばれていた.)

「それなら充分だ.賢いスライムの謎が解けた.俺はお前らを誰にも売らない.契約する.」

「「「俺達も契約する.」」」


(わかった.)

ギノは人間たちと契約を結んだ.

ここと自分たちの事を他言しないこと.

狩りに来た人間を狩り返しても恨まないこと.

そしてジークハルトがやってきたらここに知らせること.

の3点しかないが,正式な契約を結んだため,絶対に他言できなくなった.

なお,人間たちが結ばれていた契約はワルネコが殺された瞬間に履行されたものとして消えたそうだ.


ギノとしてはジークハルトの情報を得られるだけで充分だったが,屋敷の財宝をほとんど持ち帰らせたこともありとても感謝された.

今後この周囲で「スギノ」に助けられたとの話が多く出て神聖視されることがあったとかなかったとか.実際は人間を食べているしそんなに褒められることをしているつもりは本人にはない.



ギノ LV31(スライムマジシャン)

リーフ LV27(スライムレンジャー)

リーフィア LV22(バタフライスライム)

長老 LV23(進化可能だが、昔に戦線を離脱)

ハク LV15(スライムウォリアー)


(というかレベル上がったよな.)

(まあ強そうなの一杯倒したもんな.)

(また何かに進化するんですか?)

(本に載っている中では最強の進化系じゃぞ?マジシャンはそもそも載ってもいないがの.)

(私はエンジェルに早くなりたいわ.)

(みんなしばらくはこのまま様子を見よう.トパーズで本を探したら何かわかるかもしれない.リーフィアはレベル30で進化できるからそれまでは頑張ってレベルを上げてね.)




ずっと西のある町

ジークハルト「そうですか.ありがとうございます.」

おかしい,ギノという人物を探しているが一向に見つからない.あのスライムは嘘を付いてはいなかったがそもそもが偽名だった可能性もある.もう一度調べた方がいいかもな.


「へーあのミノタウロスがやられたのか.」


商人達の話し声が聞こえる.

ジークハルト「すまない,話が聴こえてきたんだが,ミノタウロスがやられたのは本当か?」

「ああ,なんでもずっと東に大陸があるらしくてそこから来たと言ってたらしいぞ.名前は確かシドだったと思う.」

ジークハルト「そうか,ありがとう.」

ずいぶんと強い人がいたものだ.妖魔ではないから戦わなかったが,並みの人間では倒せない強さだったはずだ.生態系が変わったりしてないといいが...

早めに戻った方が良さそうだ.





物語りは進んでいく.ジークハルトが戻ってくるまで残り3ヶ月.その時に決着が着くのか.すれ違うのか.すべては神のみぞ知る.

そうとも知らず,翌日から図書館へ.学ぶのは新たな知識か魔法かそれとも他のなにかか.



補足

ギノとリーフィアは全てが片付いてから正式に付き合うことが2人の中で決まったようだ.

寝たふりをしながら聞いていたリーフは翌日寝不足で大変だったらしいがなんとか頑張り,幸せそうな顔をしながらぐっすりと寝た.



ハクメモ

ハク,弱虫.一人称は(ぼく).しかし旅を続けるうちに戦うことになれ,ウォリアーに進化を果たす.性格は変わらないため大人しくて優しいが,食事の好みがワイルドになった.生ものが好物になり人間の内臓が一番美味しいらしい.食事が好きなリーフィアは肉が好みであるため喧嘩などにはならないが,こちらの方が食事中の見た目がグロい.戦闘能力は正面から肉弾戦を挑めばスライム1,人間の一般的なBランク冒険者位の強さがあるらしい.まだまだ成長途中でありこれからが楽しみな子.

スライムで性別はないが♂のつもりで書いている.ただ弱弱しい♂.擬人化したら狐の獣人とかになる予定.

ちなみにリーフも性格は♂.長老も♂.リーフィアが♀.ギノが♂.ただ性別は正確にはないから,あくまでもイメージで.



次回は

図書館でこの世界の秘密を知ることになる

ドラゴンとの邂逅.生き残る術はあるのか

みんなの修行,リーフィアの必殺技が完成する

ジークハルトとの戦い,物語はクライマックスへ

のどれかが起きたり起きなかったりするかも.(次回があれば)



タイトルはスライム ギノ 定住編

洞窟に住みながら悪者を狩って,本を読んで人生を満喫する予感.


次回更新は時間があれば年末.

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