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二十四話  オルディング商会での日々 3  小次郎、DQN解放



「つまらんな、実につまらん」


ジョルジュはふと口にした。


「隊長殿、そう言った事は誰も居ない所でお願いします、隊の士気に影響します」


「だがなぁ……私と貴様2人にこれでは幾らなんでも手応えが無さ過ぎる」


文句を言う副官に辺りを見回しながら木剣をブンブンと振り回しながらジョルジュは返した。


警備隊の練兵場では待機状態にある部隊の半数を残し訓練に参加させていた。

相手はジョルジュと副官のみで。

現在、訓練に臨んだ男達は練兵場の端でヘタリ込んでいる。


「まあ、いつもと同じ答えしか出来ませんが近衛騎士とは違いますからね…これでも他の警備隊からすれば相当マシな筈なんですが」


「幾ら王領で敵の急な侵攻が無いとは言え、もし事が起こったならばこいつらが街の防衛を指揮する事になるんだぞ?街の構造を知らん他所の指揮官なぞ急に来たって使い物にならんだろ」


「そういう事が起きないようにあの方々はそれなりに頑張ってるんじゃないですか?」


「奴等ときたら程よく育って来たと思えば他所に引き抜きおって、また新兵を送ってくる。これではまともな部隊として機能させられんぞ。ともかく、一個分隊5名で我等に易々とやられる様では話にならん、何か考えろ」


疲れ果て座り込む兵達を見ながらジョルジュは左遷から続く嫌がらせに頭を痛めていた。


「そういえば、隊長が先日コテンパンにされたって言う例の行商人でしたっけ?ああ言った武技に優れた者を特任教官として招いては如何です?」


にやりと笑みを浮かべジョルジュに先日の件を思い出させるように言った副官は言った後で後悔した。

ジョルジュの顔が酷く楽しげな顔に変わったのだ、これは碌でも無い事を考え付いた時の顔だと気付いたのだ。


「いい事を言った! そうだな、オオヒラ殿程の男ならば随分と面白いことになりそうだ」


余計なことを言ってしまったと後悔し掛けた時、練兵場に駆け込んでくる2名が目に入った。


「隊長、何か有ったようです」


「ん? あの娘は…オオヒラ殿と一緒に居た娘だな」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



アイリスは走っていた、小次郎の元を離れ街の警備隊員若しくは詰め所を探して。

広いコレオスの街は 二度か三度来たことがあるきりだった、父と母と共に二度、その後父と母が襲われた時の被害報告に。

記憶を頼りに街の中央にある大きな庁舎に向かい走る。


ちょうどその時、庁舎へ向かい戻っていく警備隊員の姿が見えた。


「まって、待ってください!警備隊さん」


必死に声を上げるアイリスに警備隊の一人が気付き振り返った。


「どうしたね、お嬢ちゃん」


「わ、私のご主人様っが、悪い人達に絡まれて、けっ剣を抜いて」

「なんだって?」

「助けてください、ご主人様、は先日オルディング、商会の会頭様を助けて…ここの警備隊長さん、

も顔を知っている人です」

「オルディング商会って、それにうちの隊長…って事はジョルジュ様と野盗を捕まえてた商人か」

「そうです、そのオオヒラ様が」


息を切らせて一気にまくし立てるアイリスにクラウスと隊長…ジョルジュの名前を出された隊員は目の色を変えた。


「嬢ちゃん、こっちだ」


隊員達は警備隊詰め所へ向かって駆け出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



《随分な啖呵を切ってくれるじゃねえか、覚悟は出来てるんだろうな?》


小次郎は喉元に突き付けた刀を外すと啖呵を切った男へ向き直った。


「ちょっかいを掛けて来たのも剣を抜いたのもそっちだろうがっ」


剣先を外された男は小次郎の後ろに回りこみ斬り飛ばされた短剣を捨て、もう一振り短剣より長めの剣を抜くと小次郎に向かって切っ先を向けた。


《俺らの縄張りで楯突いたんだ、只では済まさねえぞ》


そう言い放つと共に腰の長剣を抜いた。


《思い知れっ》


言うや否や小次郎に向け打ち込んできたが、ひょいと身を後ろ傾斜に取り避わし様にその腕の進行方向に刀を差し出す。

大振りに振られた剣の重みで行き足を止める事が出来ない腕はそのまま刀に自ら向かって行った。


《ギャアアア》


《あ、アニキ!てめえ、よくもやってくれたな》


腕を半ば切り落とされ、痛みにのた打ち回る仲間に激高するが小次郎は逆にあまりの呆気なさに逆ギレした。


「はぁ?何もしてねえっ!避けただけだろが、俺の刀にそっちが勝手に向かって行っただけだろっこのクソが、剣もまともに使えもしねえのに調子に乗って抜いてんじゃねえよ」


言うや小次郎に向かって構えられた剣に向け重なるように真っ向から刀を振り下ろした。

切り下ろされた刀は剣と交差すると、その鎬地を滑る様に相手の手元に向かいそのまま手首を切り落とした。

これは、新陰流で言う所の合し打ち、一刀流系では切り落としに当たる。

基礎にして奥義に当たる技法である。

小次郎は徹底してこの技術を叩き込まれている為、素人に向けられた剣など斬ってくれと手を差し出されている様にしか見えないのだ。


《え?あ、あっあっあぁぁぁ、痛てえ、痛てぇよぉぉ》


「知るかっクソが、手前ぇらから粉掛けて啖呵切ってこの様なんだろうがよ」


斬られた腕を押さえ、蹲る男の顎を蹴り上げた。

顎が外れたか折れたかして無様な悲鳴を上げ転がる男に小次郎はさらに追撃を加える。


「あ?筋者んのくせになんだ?オラ、何とか言ってみろオラ、根性見せろオラ」


のた打ち回り血塗れになった男を容赦なく蹴り上げる、もはや古武術も何も無い。


「おう、アレだけ調子に乗って啖呵切ったんだ、それなりの落とし前付けてくれるんだろうな?」


散々蹴り上げ、動かなくなった男を放置して小次郎に啖呵を切った男へ向き直ると、この世界に有るのかも判らないが落とし前を要求した。

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